第3話
その日はコースターをもう一つ編んで、おしまいにしました。マフラーは
さやかとおばあちゃんと、来週の土曜日に編み物をする約束をしました。
「あかりちゃんには、何色の毛糸がいいかなぁ。そうだ、あかりちゃん! まだ時間早いし、手芸屋さんに行ってみない?」
「手芸屋さん? 行ってみたい!」
2人は急いで片づけをしました。
「おばあちゃん、行ってくるね」
「おじゃましました。行ってきます」
「あかりちゃん、またおいでね。車には気を付けて、行ってらっしゃい」
横断歩道を渡って、2人は商店街にある手芸屋さんにやって来ました。
かわいい布や毛糸で、お店の中はいっぱいです。
その中でも、毛糸はいろんな種類がありました。太い毛糸、細い毛糸。ふわふわな毛糸、キラキラの毛糸…。こんなに種類があるなんて、あかりは目移りしてしまいます。
たくさんの毛糸の中で、あかりが一番気に入ったのは、手触りがふっかりした毛糸でした。編んでいない毛糸なのに、触っていて気持ちがいいのです。この毛糸で編んだマフラーは、どんなに気持ちが良いだろう。考えただけでワクワクします。白い色に、茶色い色が混じった毛糸です。まるで、昨日食べたチョコレートパフェみたいでした。
「その毛糸、面白いね。それでマフラー編んだら、ダルメシアンみたいになりそうだよ。」
「ダルメシアン?」
犬の種類だと、さやかは教えてくれました。店内にはフェルトで作ったダルメシアンのぬいぐるみがあり、こんな犬だよ、と見せてくれます。確かに似ていました。
でも、これはチョコレートパフェなんです。さやかにそう言うと、確かに似てるね、と笑いました。
「私、お母さんにお願いして、この毛糸買ってもらう!」
「気に入った毛糸で編むのが、一番だよ。この毛糸なら、2玉でマフラーが作れると思うよ。あかりちゃんがチョコレートパフェ色にするなら、あたしはチョコミント色にしようかな。ほら見て。あかりちゃんが欲しい毛糸のとなり、こっちは色違いでミント色に茶色が混じってるでしょ? きっと、チョコミントみたいになると思うんだ」
さやかは一足先に、お小遣いで毛糸を買いました。
「土曜日が楽しみだよね」
「うん。私も絶対にこの毛糸買ってもらって、さやかちゃんの家に行くからね!」
二人は手をつないで、海岸まで歩きます。
「バイバイ! また来週!」
手を振りながら帰って行くさやかに、あかりは手をふり返します。
「バイバイ! またね!」
いつも陸に上がる岩陰で、お母さんが待っていました。
「お帰りなさい、あかり。どうだった?」
「ただいま、お母さん。あのね、すっごく楽しかったの。それでね! これ作ったの!」と、あかりは『あやとりのひも』と『コースター』を見せました。
お母さんは、不思議そうに編み物をさわります。とくに気になったのは、コースターのようです。
「これが編み物なのね。ふわっとしていて、すてきね」
お母さんが返してくれた『あやとりのひも』と『コースター』をぬれないように、お花のカバンに大事にしまいました。
「編み物の材料、用意しないといけないわね。今日の材料は、さやかちゃんにもらったのでしょう?」
「うん。お母さん。私に毛糸、買ってもらえる?」
「ええ。今から買いに行きましょうか。」
お母さんは、そのために待っていてくれたのです。
あかりは、さっきのお店にお母さんを案内しました。お母さんも手芸屋さんには、初めて来たそうです。いろんな色であふれる店内を、不思議そうにながめています。
お母さんの手を引いて、毛糸のコーナーに行きました。ほしかったチョコレートパフェ色の毛糸を、お母さんに見せます。
「あら、確かにこの間食べたパフェに
「うん。さやかちゃんは、2玉あればマフラーが作れるって言っていたの。あと私、かぎ針も欲しいの」
「毛糸とかぎ針ね。いいわよ」
お店の人に、毛糸にあったサイズのかぎ針を教えてもらいました。これで今度の土曜日からは、マフラーを編むことが出来ます。
帰り道、うれしくてたまらないあかりは、毛糸とかぎ針を入れてもらったお店の袋を、大事に抱えて帰ります。
「海の中でも編み物が出来たらいいのに。そしたら、お母さんにも教えてあげるのになぁ」
「そうねぇ。毛糸って、何で出来ているのかしらね?」
海であかりが着ている服は、海底で育てた綿を
海で毛糸が作れたなら、お母さんと一緒に編み物が出来たら、どんなに楽しいでしょうか。そうあかりは思います。
海に入る前に、大事な毛糸をお花のカバンにしまいます。次の火曜日まで、編み物はお休みです。
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