5/22 15:45

 スクショとともに「これなんだろう」と幹人から連絡が来た。

 たった三文字のメールである。


「また迷惑メールじゃない?」


 私は適当な返事を送って、反応を待った。

 

 渋谷の駅前にポツンと立っていると、孤独感が強く心中を満たす。人はたくさんいて、代わる代わる私の目の前を通り過ぎていく。あるいは、同じように待ち合わせをしている。シンボルのハチ公がまんじりともせず待ち合わせの代表然としている。なのに、たった一人だ、と思ってしまう。誰もかれも、一人ひとりの人生を生きているだけで、たった一つの結び目も、彼らとの間にはできない。


 幹人とは付き合っているのだろうか? とたまに自問自答することがあった。

 お互いになんとなくそんな空気を感じてはいるものの、直接的に何かを言ったり、なにかをしたりということはない。付き合いたいかと言われるとそうではないし、付き合ったところで何かが変わるのかと言われるとわからない。でも、付き合ってるの? と聞かれるたびに、付き合っているのだろうか? と考える。


 私と彼の関係は、迷惑メールみたいに一方的なのだろう。お互いにとって。


「気になるます」


 ——ばーか。


 助けて――の打ち間違いに見えなくもないし、迷惑メールにありがちな返信の催促らしい感じも、怪しげなURLや電話番号の記載もない。

 何より、送り主のアドレスはソフトバンクのもので間違いない。迷惑メールを送る連中もわざわざキャリアと契約してまではしてこない。


「わかった。推理してみよう」


 のんびりと返信を打って、16時を迎えたところで私は渋谷を去った。

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