「人魚の泡」、という物があるらしい

 「人魚の泡」、という物があるらしい。

 それはどこかの国の王が、人魚との逢瀬を拒んだことに悔いて、その日の内に人魚が消えた海の水を瓶で掬った物という。

 しかし海水にも関わらず、見た目は青く透き通り、王は彼女の命だとひどく喜んだ。王は晩年まで形見離さず持っており、「自分が死んで埋葬するのなら、瓶にある水と共に海に投げ入れてくれ」と、宰相に命じた。

 彼の死後、宰相はその通り王の躰に瓶の中をかけた。しかしただ透明な水が、王をずぶ濡れにさせただけで終わった。

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