第7話 中二病と異世界転生の共通点

 中二病とはいまでは広く知られている、いわゆる思春期に特徴的な過剰な自意識を持ったりそれに基づく振る舞いを揶揄した俗語で、不自然に大人びた言動や、自分が特別な存在であるという根拠のない思い込みを指します。

 自分は実は超能力や魔法的な力が使えるすごい人間で、他の一般的なその他大勢とは違う特別な存在だと、自分自身に設定をしますが、もちろんそんなことはありません。現実世界ではただの人間であり、その能力を使い大活躍をするだとか周囲の人間から一目置かれるだとかそんなことはありません。あくまで自分自身がそう言っているだけです。


 自分は他の人間とは違う格段に優れた能力を持っている、いや、持ちたいという願望は多くの人間が持っている欲求なのかもしれません。その欲求を満たすため自らが考えた設定に自分自身を当てはめて悦に入る、ということはその欲求を一部分だけでも満たすことができる行為なのかもしれません。しかし、現実世界では魔法や超能力的な力なんて当然使えませんし、あまりそういう話を周囲の人たちにしても ちょっとイタい人、、、くらいにしか思われず、なまあたたかい目で見守られることでしょう。


 しかしそれが現代の日本の現実世界ではなく、こことは全く関係のない異世界だったとしたら、、、、自分は実際に本当に優れた能力をもつものすごい存在になれるのではないだろうか?という可能性が広がるわけです。

 架空の世界では自分の考えた最強の力を存分にふるい、実際にその世界に働きかけることができます。

 現代日本では別に特段優れた人間でもない自分が、架空世界ではなぜか得た特殊能力によって大活躍し、その世界の人々から賞賛や羨望の眼差しを受ける、、、という「設定」は自分を特別視したい欲求をより満たしてくれるのではないでしょうか。


 中二病設定がだけではなく、まで拡張されたものが「異世界転生」という物語の正体ではないだろうか?と思ったのです。


 「中二病」では特殊な設定をかけられた存在は自分自身だけです。その周囲の世界は普通の現代日本の社会であり、特殊の設定の外にあります。自分自身が どれだけどのように思い込もうが、世界の中では何も変わることはありません。

 しかし異世界では世界全体を変えることができます。

 自分自身を特別視したいという根底の心情が中二病と異世界転生の共通点ではないかと思いました。

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