『131、エルフの国へ(Ⅶ)』
「その伯爵家に行けば古代魔法の謎が解けるかもしれない?」
俺が思わず尋ね返すと、ツバーナは大きく頷いた。
でも、古代魔法が書かれた看板はミラさんの指示を受けたイグルに盗まれたはずじゃ・・・
「もちろん龍魔法もね。あの家は研究者の家系だから」
「グラッザド王国でいうリックラント家みたいな立ち位置か。それならいいのか・・・?」
「罠の数と内容は保証できないけどね」
アスネお姉さまがポツリと漏らす。
研究者の家なら、自分が開発した未知の罠などが仕掛けられている可能性もあるのだ。
怪我するくらいならば魔法でどうにかなるが・・・致死性となると危ない。
蘇生できる魔法なんて無いのだから。
むしろあったとしたら、領地巡りの旅で会ったディッセさんにかけていたわ。
――そういえば、ディッセさんが死んでからもう1年か。
エルフの国から帰ったらヂーク郡に行ってみるのも悪くはないかもな。
10歳の領主であるジューンも気になるし。
そんなことを考えていると、アリナお姉さまから解放された少年が船の後方で手を振った。
すると、何もない空間から馬車が現れる。
「えっ・・・こんな大きな馬車、どこにあったのよ!?」
「あなたたちに声をかける前からここにありました。隠蔽魔法で隠していましたけど」
隠蔽魔法・・・。迷うことなき古代魔法のうちの1つだ。
古代魔法である魔力隠蔽の上位互換で、魔力だけでなく物質も隠蔽できる魔法だ。
ちなみに魔力隠蔽は俺が唯一使える古代魔法でもある。
「もう古代魔法の研究家っていう肩書きが信じられるようになってきたわ」
「確かに・・・普通の人は隠蔽魔法なんて使えないし」
お姉さまたちがげんなりした表情をしていると、複数人の足音が草原に響きわたった。
この足音・・・1000人ってレベルじゃないぞ!?
「早く乗って。ここまで足音が大きいのに姿が見えないということは隠蔽魔法だと思う」
「分かったわ。送ってくれるということには感謝する」
アスネお姉さまが険しい顔でそう言うと、いち早く馬車に飛び乗った。
続いてアリナお姉さまも一礼して馬車に入っていく。
最後に俺が乗ろうとしたとき、膨大な魔力の気配を感じて咄嗟に蹲る。
予想通り、さっきまで俺がいた辺りを風の刃が通過した。
「もう黒龍騎士が来たのか・・・。相手の姿が見えないのと数が分からないのが厄介だな」
「リレン・・・?どこの言葉を呟いているの?」
アリナお姉さまの言葉で、無意識のうちに日本語で話していたということに気づいた。
確かにこの世界の人たちにとっては知らない言語だよね。
「何も喋ってませんよ?」
「そう・・・私の空耳かしら。とりあえず、早く馬車に乗らないと黒龍騎士が来ちゃうよ?」
「そうだね。早くしないと・・・」
あちらこちらから風の刃を放つ音が聞こえるため、まだ相手には気づかれていないはず。
王の言葉では、見つかるだけでもアウトなので気をつけなければ。
イグルたちを助けられるタイムリミットまであと――6日と22鐘。
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