第9話 めんどりの恩返し。

 わたくしが小学生の折り、同級生の女の子の家に行くために、よくその橋を渡ったものである。

 その橋のたもとには、小さなお堂があり、中に小さなお地蔵さんが祀られている。

 して、その脇道を、めんどりが。

「コッコッコッコッコ……」

 と言いながら、よちよち歩いて来たんで、びっくりしたことがある。

 友達に話して、漫画を借りて、帰りにも見かけたのでよく憶えている。

 一週間後、漫画を返しに行ったら、また。

「コッコッコッコッコ……」

 と言いながら、首をふりふり、めんどりが歩いている。

 どうやら、川に流れこむ下水道に住んでいるらしく、のぞきこむとふかふかした羽毛に覆われたお尻が見えた。

 そして、あるとき衝撃的なシーンを発見!

 なんと、橋のたもとにあるお地蔵さんのそばに、めんどりの卵(おんどりは卵を産まないから)らしきものが、転がっていたのだ。

 おかしくて。

 わたくしは思わず、手を合わせて、その卵をお地蔵さんの足元にお供えしてきた。

 のちのち、それを見つけたどこぞの男子が、食べてやれとその卵を割ったら、中身がゆで卵だったとかなかったとか。


 だれだ、いたずらしたの。

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