軽蔑  2019.4.20

朝、黒いカーテン

男の体毛に触れて、

揺れる。


細胞が

脈打つように

血液の膜は、

小躍りをする。

 本当は

 叫びたいのであろう

 阿鼻叫喚の

 苦境は、

 沼の奥深くに

 沈んでいく。


ぐったりと湿り気の帯びた言葉は

のどごしも悪く、

「俺って猿みたいじゃない」

「気分が悪いわ」

『ぴちぃやぴちゃぴちゃ』

『くちはゆすがなきゃいや』

《もうそろそろ気分の悪い》


清潔な遊戯もまた

何処かで

……。

犬の唾液のようにねばり気のある

嫉妬は、

頭上を巡る蠅のよう 


夜、びっちりと垢の詰まった

女の指の

シーツを掴んで離さない


丘のてっぺんに

執着する

けもののようで、

うんざりする。

 噴火する

 火山を待っているのは

 灰の降る街

 情愛は、

 君だけの冷めない

 マグマだろう。


ぐったりと湿ってばかりの唇は

干ばつした沼を目前に、

「ありがとうごめんなさい」

「気分が悪いわ」

『逆さまになろうよ』

『言葉にすることじゃないでしょうに』

《もう本当に気分の悪い》


○○がしとやかである内に、

完璧な遊戯を覚えよう。

傲慢な声色を持った獣は、

今日も叫んだ。

……。

○○は侮蔑する。


幾千ものけたたましい

叫びは、

幾千もの眼球の見開く

軽蔑の前に、


なす術もなく、

死滅してほしい。






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