第37話「大団円?」
「さてと、ドラゴンは退治したが、重要な問題がまだ残っているぜ」
レアンの言葉に僕はどんな重要な問題が待ち受けているのか身構える。
「ウルラが倒れた今、アタシら、ここがどこだかわかんねぇんだよな。どうやって帰るんだ?」
「え? あっ!! 確かに!!」
僕は今更ながら慌てると、レイの笑い声が聞こえてくる。
「ハハハッ! いや、シグノは普段完璧だけど、微妙に抜けるときがあるのがいいよな。帰り道なら大丈夫だ。ウルラがゴーンも回復してくれてあるし、あいつが目覚めれば、ゴーンのスキル、『物質命令付与』で、コンパスに帰りの道を常に指し示すよう命令をつければ帰れるさ」
ほほぉ! ゴーンのAランクスキルはそういう能力だったのか。それで盾が自動で守ったりしたんだね。
「最後はいまいち締まらなかったけど、これで俺らの夢は叶ったんじゃないか? 英雄になるって夢が」
僕はこの先の展開がなんとなく読めるので、微妙な表情を浮かべる。
「いや~、どうだろうね。レイはともかく僕はまだ無理じゃないかな?」
「なんでだよ。魔王だぞ、火の魔王討伐なんて確実に英雄だろ!!」
「それはこれから分かるね。あっ! ゴーンが起きるんじゃないかな?」
それとなくお茶を
※
レイがカローレの首を持ち帰ったことで、魔王討伐はすぐに王都中に知れ渡ることとなった。
そして、各自がしっかり療養をとった数日後、僕らは教皇猊下と王様が待つ宮殿へと招かれた。
余談だが、ウルラは『医学伝来』の後遺症として、魚好きになった。
宮殿へ訪れた僕らがどうなったのか。まずは結果から言おう。
僕はやはり英雄になることは出来なかった。
宮殿に招かれるにあたり、失礼だとは思ったがカローレとの戦闘でボロボロになった服しかなく、そのまま向かうと、強制的に礼服に着替えさせられることとなった。
僕とウルラはモーニングスーツを滞りなく着る。
レアンは、筋肉をもっと見せる服はないのかと騒ぎ、肩とヘソが露出するドレスに落ち着いた。
そして、ホルンはというと、ボロボロになってしまったポンチョを無理矢理脱がされ、角が
「貴様みたいなハーフが宮殿へ入れると思うな! 出て行け!」
衛兵が集まり、強引に外へ連れ出されそうになる。
ホルンは半ば諦めたように従おうとするが、その時、鉄拳が炸裂した。
「おい。テメー。ホルンはアタシの仲間だ。それをハーフだっていう理由だけで、追い出そうなんていい度胸だ。オラァ! ホルンを追い出したいなら、まとめて掛かってきやがれ!」
僕もホルンを
「理論的に考えれば、どうせ、文字化けスキルだとかハーフだとか言って、全部レイたちの手柄にするつもりだったんだろ? なら、ここで暴れた方が向こうは感謝するよね。ホルンを追い出そうとした奴は誰だッ!! ぶっとばしてやる!!」
「ええっ!? 2人とも何してるんですか!!」
僕はホルンを追い出そうとした奴に1発拳を叩き込むと、そこで抵抗を辞め、大人しく外へと放り出される。
レアンはお構いなしに暴れようとしたから、僕のスキルで動きを止め、同じタイミングで、皆揃って外へ。
レイは今回の件で文句を言いそうだけど、ゴーンにはすでにこうなるだろうと予想を立てて話してある。
上手く取り繕ってくれるだろう。
それにゴーンにはパーティの件で貸しも作ったしね。
ゴーンとリルはどうやら一緒に苦楽を共にするうち恋仲になったそうで、ゴーンが抜けるときはリルも抜けると言っていたそうだ。レイはその説得が出来なくて、僕に微妙な表情を浮かべていたのだ。
でも、僕ももう、このパーティを抜けるなんてできないから!
「それじゃ、皆、ミトのところに戻ろうか。きっと僕らの無事を案じてるだろうからね」
そして他の魔王も倒して、魔人に対して偏見のない世界を作ろう! そしたらホルンだって認められる。
僕の夢は少し変わったんだ。
僕とレイで英雄になるんじゃない。
僕と皆で英雄になるんだっ!!
この訳ありだらけだけど、使い方次第の最高のパーティでッ!
(了)
使い方次第の訳あり冒険者達! タカナシ @takanashi30
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