何と本作、作者様の処女作である。巧みな構想の導きと、柔らかくも悲壮に満ちた語り手が話を進める。本作は二人が交わる”点”から始まり、多くの枝葉を伸ばして一本の線へ辿る旅路だ。我々、読み手の情緒を言葉の刃でゆっくりと刺しながら奥深くに潜む感情の琴線にそっと触れる。先に「観ている」からこそ、刺さる物が有る。この感動と感情を、あなたへ。
裁判所から始まります。4歳の男児殺害で起訴された女性。被害者の父である検察官が激情して、女性を刺します。それから、時は遡ります。痛ましい事件の背景に何があったのか。基本、優しいタッチで進められます。それがどう崩れていくのかが見ものだと思います。