第百二十七話 熱対策と水不足解消へ向けて
ブタンは教え方も上手かった。鉱夫達からも凄くわかりやすいと評判も上々だ。言葉だけではなく図もつかって教えてあげているからな。
「それにしても、鉱山の中を涼しくする魔導具とは、そのようなものがあるとは驚きました」
「
これは箱型の魔導具で箱の内部で冷やした空気を冷風として吐き出しすことで一定範囲を冷やすことが可能な魔導具だ。
術式は単純だから素材さえ揃えばアレクトでも問題なく作れるとは思うのだがな。まぁそれは落ち着いてからの話になるだろう。
「しかし、そんな気がしなかったわけでもないが、これも見たことがないとはな。ならば魔導式扇風機ぐらいはあるのかな?」
「なんですかなそれは?」
それもなかったか……これは魔導の力で羽根を回転させて風を発生させるというものだ。実に単純で原始的だがその分作成が簡単だ。
「いやはや、本当にエドソン殿は珍しい魔導具を知っている上に、このようなものまで作成されるとは」
「はい。彼のおかげで私も随分と助かっています」
デニーロがやたらと私の作成した魔導具を褒めフレンズも同調している。悪い気はしないがやはりこの程度でそこまで言われてしまうのはむず痒いものがあるな。
「とにかく、鉱山内の空調に関してはブタンに任せるとして、こっちはもう1つの問題を解決だ」
「もう1つというと?」
「水さ。水も不足してるんだろう?」
「えぇ、確かに近くの川が枯れてしまって。て、まさか水も何とかなると?」
「問題ないさ。とりあえず近くの水源を探してみようか」
私はポータブルMFMを起動させ、周囲の地図を確認してみる。
「これは、何ですかな?」
「空間に地図を投影させる魔導具だ」
「く、空中に、地図?」
先ほどと違って今度はいまいち概念を理解できていない様子を感じるな。
「とにかく今見えているのはこの辺りの地図だ。しかし――」
気になるのは水源だ。確かにこの街を含めて鉱山周辺の水脈がかなり弱くなっている。そして特に謙虚なのはこの山の辺りだな。
「デニーロ卿。この山は何かな?」
「うん? この辺りは、火の魔石の採掘所だな。実はここが一番温度の上昇が激しくて作業は完全にストップしている状態で……一応ブタン様にはお伝えしていますが、作業は難しいかと」
ここが火の魔石鉱山だったか。地図の情報を更新しておくとして、私にとって一番大事なのはここだ。しかし、温度がここだけ高いのか……少々気になるな。後で調査が必要かもしれない。
この山を中心に水脈が枯れていってるのも危惧すべき点だ。
「ねぇエドソンくん。私にも何か手伝えることあるかな?」
するとロールスが私の袖を引きながら尋ねてくる。ロールスは宝飾品の加工がメインで来てもらったが、この状況を知って何か協力したいと思ったようだ。
それ自体はありがたい話だ。ふむ、それならば。
「丁度良かった。火の魔石が採れる鉱山の様子が気になるので、調査をお願いしてもいいかな?」
「勿論! 鉱山の調査なら私だってドワーフの女だからね。任せてよ」
ドンッと胸を叩くロールス。頼りになるな。宝石を扱うのが好きなのがドワーフの女だが、鉱石に関する造詣は男と変わらず深い。鉱山の調査も得意な種族だ。
「しかしエドソン殿。先程も申し上げた通り、今火の魔石鉱山はとても温度が上がっていて調査出来る状態では……」
「それなら問題ない。対策方法はある」
「ふふ、それに私達は暑さには強いのよ。問題ないわ」
そう。ドワーフ族は熱に強い種族でもある。だからこそ男のドワーフは熱い高炉の前でも肌を晒したまま平気で仕事を続けられる。
その特性はドワーフの女も一緒だ。だから多少暑いぐらいは問題ないが、とは言え年のためにだ。
「これを着ていけばいいの?」
「そうだ」
「お似合いですロールス様」
私は自分が作成した魔導ベストをローレルに渡した。私が着ている服と同じで耐熱、耐衝撃、耐まぁとにかく様々な耐性の付与が施されており危険が迫ったとしても守ってくれる。
「それと
7つの変化で様々な場面に対応できるのがこの魔導具だ。騎士モードなら盾で守ったり近接戦闘がこなせるし狩人モードなら弓矢で遠距離から攻撃。賢者モードなら様々魔法が行使できる。以前も使用した探索モードなら斥候として優秀だし罠を解除したり設置したり出来る盗賊モードも備わっている。
「あとはこれだな」
「指輪?」
「通信の指輪だ。私とメイも嵌めておく。これで離れていても連絡をとりあえるぞ。何かあったらこの指輪に通信したい相手の名前を呼びかけると良い」
「先程から何かとんでもないものを見せられている気がします」
「はは……」
私が説明しているとデニーロが目をパチクリさせていた。隣ではフレンズが苦笑している。
私からしてみればこの程度の魔導具が浸透していないことの方が驚きなんだがな。せめて通信の魔導具ぐらいはあってもいい気がするんだが。
「……不満ね」
そるとロールスが私が渡した指輪を見ながらそんなことを呟いた。
「何か問題があったか? ならば言って欲しい! 研究者として是非とも意見を――」
「装飾がなってないわ!」
「……はい?」
「全然美しくない! デザインもダサいし最悪よ! あのねエドソンくん。確かに魔導具は機能も大事だけど見た目も気にした方がいいと思うの。特にこういった装飾品系なら」
「わ、わかったわかった。それは今度改善点を聞くし何なら君にデザインを任せるよ」
「本当? やった!」
ロールスがピョンピョンっと飛び跳ねて喜んだ。
しかしこの辺りは流石ドワーフの女だな。デザインも全く気にしていないわけではないが、こだわりが私なんかよりよっぽど強い。
とは言え――
「そんなにダサかったか……」
「と主人様、気を落とさず」
メイに慰められてしまった。くっ、仕方ないであろう。300年も経ってるのだから、少々デザインが古臭かったとしても!
「それじゃあ行ってくるね」
「頼んだぞ。小人達も護衛をよろしく頼む」
「「「「「「「イェッサー!」」」」」」」
こうしてロールスが魔石鉱山に向かった。
さてこっちは水の問題を解決しないとな。
大事なのは水場だが、うん? 何だいいのがあるではないか。
「ここに大きな湖があるな」
私が指で場所を示すとデニーロもそこを確認し。
「確かにありますが、距離がありますし、険阻な山の向こうなのでとても水は引けそうにないのです」
デニーロが答える。確かに間に山が3、4つあるか。だが問題ない。
「大丈夫だ。とは言え現場は見たほうがいいしな。直接行ってみるとしよう。メイ頼む」
「承知いたしました」
そして魔導車を用意した私達だが、それを見て魔獣だー! とデニーロがすっ転んだ。もはやこれは定番のリアクションだな。
「これがエドソン様が使役している魔獣だったのですね。しかしこのような鉄のような魔獣驚きです」
「いい加減そのリアクションにも慣れてきたよ。とにかく、これでちょっと湖まで行ってくる」
「一体どのようにして水を引かれるおつもりなのか私の考え及ばぬことですが、ただ1つこの湖には主がいるとも聞きますのでご注意ください」
主? ふむ、魔物か何かがいるということか。
しかしメイも一緒だし私もマイフルで戦えるしな。とにかく、そういうことなら多少は気をつけるとするかな――
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