第百十四話 作業場を求めて
私達はフレンズとフレームを送り届け、その日はそれぞれの寝床に戻り一晩休んだ。その後、改めて鉱山迷宮の探索に乗り出した形である。
迷宮内は魔物が多く現れたが、私たちの敵ではなく探索は順調に進んでいく。
鉱山内のマップを埋めながら、条件に合う場所を探し求めた。ここで重要なのはできるだけ浅い層であることだ。当たり前だが深ければ深いほど行き帰りの手間が増える。
勿論私が瞬間移動扉あたりを設置してしまえばそれで済む話でもあるが、あれはこの辺りの素材では作成できない代物だ。一時的ならともかく、この鉱山での事業は長く続けていくべき代物だからな。アレクトや他の職人が作成できる範囲の物で対応する必要があるだろう。
「御主人様、マップによるとこの先の場所が作業場として最も適切かと」
メイがポータブルMFMの画面を指差しながら教えてくれた。ふむ、確かにこれはかなり条件が良いな。
「そんなことまでわかるのか?」
ハザンもマップは見ているがいまいち見方がわかたないのか、首を傾げている。直感で考えるタイプだからか、地図みたいなものは苦手なようだ。
「このマップ上に存在するこれが鉱石の場所だ。鉄鉱石がこれで魔法銀がこれ。豊富な鉱脈が周囲に広がっている。これなら確かに条件はピッタリだ」
「なるほどな。流石兄弟だぜ。ところでこの赤い点はなんだ? お宝か?」
「それは簡単に言えば敵だ。敵意を向けている相手がいた場合にこうやって表示される」
「ここを利用するのも簡単ではないということか」
これでも迷宮だからな。しかもこいつは今の位置から一歩も動かずにいる。
どうやらこの場所を守るために生まれた存在のようだな。脅威レベルは12と表示されている。
「それなりの相手だな。だが、悪魔と比べたら全く大したことのない相手だ」
「だったらやるべきだな!」
「ここを解放しなければ何も始まりませんからね」
ハザンは拳を鳴らしてやる気十分といったところだ。メイはいつもどおりだが戦いになれば頼りになる。
私もマイフルを腕輪から取り出し準備した。ハザンはソードリボルバーの弾を確認している。
「よし、こっちもバッチリだ」
「なら行くとしよう」
私たちはマップを頼りに進んでいき、目的の空間までたどり着く。やはりかなり広い。これであれば高炉を設置しても十分に余裕がある。
途中の道は拡張する必要があるが、それでも全体的に見れば広い横穴が確保されているから、線路を敷くことでそのまま列車が走る道として活用出来るだろう。
だが、その前に相手しなければいけないのは広場の中心にドンッと鎮座した巨大な石像だ。
「あれが相手か。何か硬そうだが」
石像をまじまじと見ながらハザンが印象を述べる。私は鑑定眼鏡を取り出して相手の情報を掴むことにした。
「ふむ、確かにただの意思ではないな。鑑定してみたが鉄と魔法銀を多く含有している。物理的にも魔法的にも耐性が強い」
「それは厄介そうだな。大丈夫そうか兄弟?」
顎を擦りながらハザンが聞いてきた。こいつ、さては返事をわかっていて聞いてるな。
「問題ない。確かにただのゴーレムよりは手強いが、それでも多少だ。マイフルならあの程度の装甲は破れる」
「なら、俺の武器でも大丈夫ってことでいいんだな?」
「ふん、当然だろう。それは私が考案した魔導武器なのだからな」
私が答えると、ハザンが剣を肩に乗せて、ニッと笑った。
「御主人様、私はどう致しましょうか?」
「メイでも余裕だろうが思いっきりやると崩落する可能性もある。それにあれの素材は役に立つ。魔法主体で後は基本的に援護で頼む」
「承知いたしました。では念の為に」
するとメイがハザンへ魔法を行使した。
「おっと、何かやる気が更に出てきたぜ。力もみなぎってきてるし!」
「戦闘能力の向上、及び覇気が増す効果のある魔法を唱えておきました。これでかなり優位に戦える筈です」
「ありがてぇ! 流石メイさんだぜ」
メイは魔法も扱うことが可能だからな。付与したのがハザンだけなのは私が身につけている魔導具の効果をわかっているからだろう。
私の着ている服はあの石像以上に物理的にも魔法的にも耐性が強いからな。攻撃に関しては基本マイフルで戦う以上、肉体的に強化されてもあまり意味はない。移動も魔導具を使用するしな。
「よし、いくぞ!」
私たちはハザンを先頭に広場の中に足を踏み入れた。
『グォオオォオォオオオオン!』
途端に石像が雄叫びを上げて戦闘態勢に入った。やはりこの中に入るか否かで戦闘するか否かを決めていたか。
さて、石像は体長10メートル以上は優にあり、獲物として巨大な斧を携えている。
『ゴガァアアアァアア!』
声を張り上げ斧を振り下ろした。距離はまだあったが、攻撃と同時に衝撃波が地面を削って進んでくる。
私たちは左右に散り、そして私はリングから取り出した
ここは天井も高いし立体的な移動で優位に立てる。
「オラッ!」
ハザンが接近し、剣を石像に叩きつけると爆発が生じ石像がぐらついた。やはり十分効果的だったな。
さて、私も空中を飛び回りながら石像に弾丸の雨を降らせていく。あたった箇所が重々と溶けていき煙を上げた。酸属性の魔法が込められたHR弾だ。金属の含んだ体にはやはりかなり効果が高いな。それでいてしっかり調整すればそこまで大きく素材を損ねることはない。
こうしてあっという間に石像の装甲が剥がれていく。するとそこへメイの雷魔法が炸裂した。
「ウグゥウオオオ……」
石像が膝を付きうめき声を上げた。もう限界なようだな。
「後は俺に任せろ、うぉおおぉおおお!」
ハザンがすれ違いざまに石像を12回斬った。斬撃を強化する弾を使用していたようであり、石像に線が走りバラバラになった。
「はっはっは、これで回収が楽だろう兄弟?」
「なるほどね。気を遣わせて悪かったな」
どうやら戦闘後のことも考えてとどめを刺してくれたようだ。以前のハザンは大雑把なイメージだったが、こういう気配りもできるようになったんだな。
そして私たちは倒した石像から素材と魔核を回収した。ふむ、この魔核はいいな。色々と使いみちがある。
そして石像を倒した後は改めて、この場所が高炉の設置と作業場として適切かを確認した。
「うむ、やはりメイの判断は正しかったな。ここなら位置的にも申し分ない」
「ありがとうございます。御主人様のお役にたててこんな嬉しいことはありません」
「いや、その言葉はいいのだが、なぜ撫でる?」
「目の前にお可愛らしい御主人様がいたら、ついなでてしまうのが常というものではありませんか?」
そう言われてもな。ハザンは何かニヤニヤしているし照れくさい!
「しかし兄弟、ここを作業場にするとして魔物は本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、上手いこと
「そうなのか。何が幸いするかわからないもんだな」
「あぁ、それに迷宮にはあのタイプの石像がまだいるはずだ。何体か狩れば護衛としては十分だろう」
この魔核ならもともと考えていた警護用ゴーレムよりも更にいい性能のが作成できるしな。
さて、これで場所は確保できた。後は魔石だな――
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