伝説‥41話〜リュウキとベルクス

 ここは魔導師学園の時計塔のテラス…。


 リュウキはベルクスを睨み付けていた。


「……お前か……こんな卑怯な手を使い…俺達に攻撃を仕掛けてきたのは……。」


「…ああそうだが……卑怯な手とは…ちと聞き捨てならねぇが……まぁいい……それより…何故ここに俺がいると分かった?」


「さあな……お前にタネを明かす訳ないだろう……。」



 ……何故リュウキは、ベルクスの気配に気づき小型ドリルで攻撃出来たのか…それは、ほんの数分前の事…。


 リュウキはクロノアに治療をしてもらい、その後クロムとギュミルの話を聞いていた。


(…何処かに…そのベルクスって奴が隠れている……って事は……。)


 痛い右手を他の者達に気づかれないように地面に直に翳し心の中で、


(《トリック シャドウアイ‼︎》)


 見えない目だけの気持ち悪い物体が無数にリュウキの周りを覆い尽くした。


(……これスゲー嫌なんだよなぁ……他の奴らには見えてないが……俺にはスゲー見えてるし……はぁ…直ぐに居所が分かれば良いんだけどな……はぁ……。)


 リュウキは周りに警戒しながら話を聞いていたが、背後から誰かの視線を感じた。


 そうこの時、シャドウアイがベルクスの気配と視線を捉えリュウキに居場所を送っていた。


(…これは、後ろか⁉︎…この気配は……さっきの奴なのか……少し遠いな…んー…イメージしか送られて来ないからな……確か俺の後ろには…時計塔があった筈だが……。)


 リュウキは少し考えた後、


(フッ……そこで隠れているなら…お前をそこから引きずり出すだけだ……それと…俺を怒らせた事を身を持って後悔させてやる……。)


 そして、リュウキは他の者達に気づかれないように小型ドリルにベルクスを追撃させていたのだった……



 ベルクスはお尻をさすりながら立ち上がった。


「まぁいい……だが…お前、どうするつもりだ?」


「何の事だ?」


「…俺とやりあうにしても…その手でどう戦うつもりだ……。」


「フッ……策が無い訳じゃない……。」


「なるほど……まだ…何かやるつもりか…こりゃいい……そうでなきゃ楽しくねぇよなぁ……。」


「……楽しい?……お前、正気なのか⁉︎……いや…言っても無理そうだな……。」


「…ん?…まぁいい……じゃあ…始めようじゃないか……。」


 ベルクスはリュウキとの間合いを取り身構えた。


「そうだな……さて…始めるか……。」


(俺の直感が……コイツはただ痛めつけるだけじゃダメだと言っている……確か雷を操っていた…って事は……魔法を操る職業だよな……そうなると…接近戦に弱い筈……今も俺との距離をおいて離れているようだしな……じゃ…俺は何の職業にする?……手がこんな状態だしな……これは賭けになるが……あのプリセットに変えた方が良さそうだなぁ……。)


 リュウキはプリセット画面を開き、職業を忍者に変えた。


「……なるほど……他の職業に変えたという事か…だが…そんな軽装でどう戦うつもりだ?」


「さあな……だが…今の俺にはこれがベストだと判断した……それだけだ…。」


 リュウキは刀を鞘から抜き握ってみた。


「…つう…うっ……はぁ、はぁ……。」


 リュウキは手が痛く顔を歪めた。


(……流石に…刀は無理か?……だが…どうする……そうなると後は…忍術に頼るしかないが……しかし…コイツとやり合うのには…接近戦で距離をおかない方がいい……仕方ない…痛いが……耐えられない痛みじゃない……んー…多分な……。)


「なんだその手は?…ボロボロじゃねぇか……そんな手で俺様と戦うつもり?……まぁ…どんな状態だろうが…俺には関係ねぇがな…。」


 ベルクスは鼻で笑った後、リュウキに見下すような視線を送った。


 リュウキはそれを見て更にムカつきベルクスを睨み付けたのだった…。

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