第331話 九人目の妻!? と不穏な空気

「……では、一先ず我らは監視を続け、何かあれば相談いたします」

「あぁ、頼むよ」


 サロモンさんと話したものの、魔王の魔力が跳ね上がったという結果は得たものの、その原因までは分からない……という結論で一旦話は終わった。

 とはいえ、口には出さなかったが、フローレンス 様の件が気になる。


『私は、あの王女様が発端だと思いますが』

(しかし、どうしてフローレンス様と魔王がリンクしているんだよ)

『それは……分かりませんが』

(だろ? 確かにフローレンス様が怒って、黒いオーラみたいなのは出た。だからと言って、フローレンス様が魔王と関係がある……なんて言えないだろ)

『ですが、十年近く魔王の魔力は安定していたんですよね? それが、あれと同じタイミングで増えるなんて、おかしいですよ』


 確かにアオイの言う事は尤もなのだが、それだけで一国の王女であるフローレンス様を疑うのはな。


(しかし、仮にフローレンス様が魔王と関連しているのだとしたら、アレはどうなるんだ? あの、魔法大会の決勝の事は)

『えっと、魔族が学園に潜んで居て、死に間際の最期の一撃で王女を狙った話ですか?』

(あぁ。テレポートでフローレンス 様だけ助けたものの、他の騎士や宮廷魔術士は助けられなかったが)


 あの時、ギリギリのタイミングで、フローレンス様だけは何とか助けたものの、他の者たちは間に合わず、石にされてしまった。

 その中にはクレアも居て、何とか助ける事が出来たおかげで、今は俺の妻となり、大人しそうな印象のクレアが、ベッドの中では物凄く激しく……


『ヘンリーさんっ! 今は真面目な話をしているんですよっ!』

(あ、すまんすまん)


 気付いたら、いつの間にかクレアとの夜の事を思い返してしまっていた。

 とにかく、それはさておき一度帰るか。


「では、サロモンさん。俺はこれで」

「えぇ。我が孫、ルミを宜しく頼みます」

「……ん? ど、どういう事ですか?」

「どういう事……と言われても、そういう事です。ルミを魔術師殿の許嫁として、家に住まわせてもらうとお伝えし、反対されなかったではないですか」

「……は?」


 これは、アレか?

 またアオイと話している最中に、サロモンさんが話をしていたパターンか!?


「えへへ。今夜からは、お兄ちゃんと一緒だねー!」

「……まぁ構わないが、ルミが思っているのとは、大きく違うと思うぞ?」


 ルミは俺にくっついて寝ると思っているかもしれないが、現実は幼女たちが沢山いる上に、俺はソフィアたちの所へ行くからな。

 一先ずルミを連れて屋敷に帰ると、夕食の時間だったので、そのままルミに参加してもらい、皆に新たな住人が増えた事を伝えると、


「知っている人も多いかもしれませんが、エルフの長老の孫、ルミです。お兄ちゃんの許嫁として、今日からこちらへ住む事になりました。皆さん、宜しくお願い致します」


 ルミが意外に丁寧な挨拶をする。

 エルフの村の次期代表として頑張っているのかと思っていたら、


「アンタ……どういう事なの!? 許嫁……って、エルフの女の子にまで手を出して!」


 すぐ様ソフィアから突っ込まれてしまった。


「いや、許嫁っていうのは、エルフの長老が勝手に言っているだけで……」

「お兄ちゃんが自分でルミと結婚するって言ったもん。皆の居る前で」

「アンタ……何人目の妻なのよっ! さっき聞いたけど、アタランテさんとも、そういう関係になったんでしょ!?」


 ソフィアから凄いジト目を向けられ、アタランテの事は弁明出来ないので謝っていると、


「ちょ、ちょっと待って。お兄ちゃん。何人目の妻……って、どういう事なの!? もしかして、ルミ以外にも奥さんが居るの!?」


 ルミが大きな目を丸くして、俺を見てくる。


「えーっと……こっちは、俺の妻のソフィアだ。で、そっちがラウラで、向こうに……」

「待って、待って! 三人目までは頑張って聞いていたけど、全部で何人居るのっ!?」

「今、八人……だな。ルミが結婚すると言うなら九番目の妻に……」

「うぅ……何なの!? どうなってるのっ!? べ、別に九番目でも良いけど……いや、良くないんだけど、が、頑張るもん! あと数年したら、皆おばちゃんになって、ルミだけ美少女なんだもんっ!」


 ルミが叫んだ直後……あ、ソフィアたちがキレてる気がする。

 気にしてないのは、ラウラくらいか。

 頼むから、仲良くしてくれーっ!

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