第311話 闇の力?

「凄ーい! 一瞬で見た事の無い場所へ来たー! これが人間の家なのー?」

「あぁ、そうだよ。とりあえず、家に入ろうか」


 ネレーアとの約束を果たす為、早速ワープ・ドアを使って屋敷へ戻って来た。


「ヘンリーさん。とりあえず、服を着せてあげた方が良いんじゃない?」

「ヘンリー様。何故、ネレーアちゃんのお尻を撫でながら案内しているのですか?」

「……兄たん。お尻なら、妻であるラウラちゃんのを触ると良い」


 何故か背後から色々言われているけれど、それはさておき、先ずはノーマを見つけて……って、言われなくても出迎えてくれた。

 流石は出来るメイドさんだ。


「お帰りなさいませ、ご主人さ……」

「ノーマ。済まないが、何か彼女に着る物を用意してくれないか」

「ご主人様……ついに、闇の力に手を出してしまったのですね」

「闇の力? 何の話だ?」


 ノーマが何を言いたいのか分からず困惑していると、


「ですから、暗黒魔法を使って、そちらの女性を魅了状態もしくは混乱状態にしているのですよね? 早くマーガレットさんに治癒してもらい、元の場所へ帰してあげるのが良いかと」

「暗黒魔法……って、それは魔族が使う魔法だよ! 俺はネレーアに状態異常なんて付与してないっての。ネレーアが自分の意志でここへ来たんだよ」

「つまり、ネレーアさんと仰る方の弱みを握り、自らの意志で奴隷になると言うしかない状況へ持ち込んだという事ですね?」

「違うってば! というか、どうあっても俺が悪人になるのかよっ!」


 よりにもよって、暗黒魔法を行使したなどと、とんでも事を言われてしまった。


『日頃の行いが行いですからね。仕方が無いのかと』

(いや、俺は善良な一市民だろ。どうしたら、そんな風に思われるんだよ)

『だって最近のヘンリーさんは、外出する度に幼女を連れ帰っていましたからね。何かしら、変な事をしていると思われても仕方が無いかと』

(いや、流石にそれは酷過ぎないかっ!?)


 聖銀で剣を作ってもらい、この世界を助けるため。また、家を失って露頭に迷う幼女を助ける為に頑張っているのに、この言われよう。

 そもそも、俺は幼女に興味が無いっていうのに。


『だからこそ、ついにヘンリーさんが暴走して、大人の女性に見えるネレーアちゃんを無理矢理攫って来たのだと思われているのかと』


 アオイの言葉で悲しくなりつつ、でもネレーアの身体を見て即元気になったので、


「一先ず、ネレーアに変な事はしていない。というか、一緒にカティやクレアも居るだろ? そもそも俺が変な事をしていようものなら、二人が許さないだろ」

「あの……お二人とも、凄く微妙な顔をされていますが」

「……まぁ、それはさておき、このまま全裸は良くないだろう。ネレーアに似合いそうな服を頼む」

「は、はい。畏まりました」


 うーん。やはり全裸のまま連れて来たのがマズかったのか、ノーマが引きまくっている。

 先にクレアを連れて街へ行き、適当な服を買ってから来るべきだったか。


「お兄ちゃん。どうしたの?」

「あー、俺やクレアを見てくれ。人間は、人前では服を着て生活をするんだ」

「んー。お兄ちゃんはおっぱいを出しているのに、お姉ちゃんやお兄ちゃんの恋人がおっぱいを隠しているのはどうして?」

「あー、これは水着……って、ちょっと待て。どうしてラウラが俺の恋人なんだ!?」

「え? だって、お姉ちゃんが……マーメイドのお姉ちゃんが、お兄ちゃんとラウラちゃんがキス……」

「げふんげふんげふん! あれは、人命救助だ。だから、そういうのとは違うんだっ!」


 あの、ちっぱいマーメイドさん……頼むから余計な事を言わないでくれよ。


「……人命救助って、やっぱりラウラちゃんは危険な状態だったのですか? 念の為、マーガレットさんに診てもらいます?」


 ネレーアの言葉を聞いたクレアが心配そうな表情をラウラに向けたので、慌ててフォローする。


「いや、大丈夫だ。なぁラウラ?」

「……ん? マーガレットさんに見せつけるの? ラウラちゃんは、構わない」

「何をだよっ! というか、何故そこで水着を脱ごうとするんだっ!」


 とりあえず、海から直接屋敷に戻ってきて、俺たちも水着姿のままなので、風呂へ入る事にしたのだが、


「……って、へ、ヘンリー様もご一緒に入られるのですか!?」

「あ……しまった。いつも幼女たちと一緒に入っているから、そのノリで来ちゃったよ」

「へぇ……なるほど。男の人って、そういう感じなんですね。初めてみました」


 クレアとカティの前で全裸になってしまい、慌てて水着姿に戻る。

 今更だけど、幼女と風呂に入り慣れて居るというのも考えものだな。


「どうして、隠すのー? ネレーアは平気だよー? あ、でも……見た事が無い変なのがあったー!」

「……うん。ネレーアには、後で色々教えてあげるからね」

「……兄たん。ラウラちゃんにも教えてー!」


『ヘンリーさん。アウトです! 流石に今回は酷過ぎますっ!』


 一先ず、女性たちに風呂を譲り、俺は後で入る事にした。

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