第306話 見えないと思って? 色々やらかすラウラ

「すまない、待たせた」

「……ぜ、全然、大丈夫だよー」

「……そ、そうです。全く待っていませんから」


 マジックアイテムを持ち、クレアと共に戻ると、カティとクレアに迎えられる。

 ……若干変な間があった気もするが、一先ず今はマーメイドだ。

 今度こそ、海のおっぱい天国へ出発だ。


「クレア。マスクが二つあったから、一つ渡しておく。これを着けると、水中で姿が見えなくなるから、絶対に手を離さないようにしてくれ」

「畏まりました」


 ちなみに、マスクと言っても、顔が全て覆われる訳ではなく、口の部分は開いている。

 尚、前に父さんが使っていた時は、口に咥えていた空気を取り込む筒に、お湯を流し込んで成敗した。

 今回は、その筒の代わりに空気を生み出すマジックアイテムを咥え……って、ラウラの事を忘れてた。


「ラウラ。すまないが、ラウラのマスクは無いんだ。海の中で目が痛くならないように目を瞑り、ジッと俺にしがみ付いてしてくれ」

「……わかった。兄たんはラウラちゃんに抱きつかれたい……と」

「いや、海の中だと、いつもみたいに小脇に抱えて進めないからなんだが……まぁ逸れなければ何でもいい。さて、準備も整った事だし、今度こそ出発だっ!」


 クレアと手を繋ぎ、ラウラが足にしがみ付いた事を確認すると、二つのマジックアイテムを装着する。

 先程と同じ様に波の中へ足を入れ……おぉっ! 水に浸かっている俺の足が見えなくて、ラウラの身体が浮いているみたいだ。

 そのまま海の中へ進んで行き、ラウラが完全に水中へ。

 少しして、クレアも水中に入り……俺も水の中へ。

 視界は良好で、砂に埋もれる貝殻が見える程だ。

 一方で、左手にクレアと手を繋いでいる感触があるのに、自分の手を見てみても、そこには砂に埋もれる石が見えるだけで、クレアがいる様には思えない。

 まぁクレアどころか、自分の手や腕すら見えていないのだが。


「ぶはっ!」


 あ、危ない。

 口から空気を作るマジックアイテムが離れ、慌てて咥えなおす。

 ……おい、ラウラ。

 手だけではなく、足を交差させて俺にしがみ付くのは良いさ。

 だけど、どうして水着の股の部分をズラすんだっ! 本来なら俺の足で見えないはずだけど、今は足が透明だから、思いっきり見えていて……っていうか、ダイレクトに俺の足に、そんな所をくっつけるなっ!

 

(くっ! ラウラにツッコミたいのに、水中だから突っ込めない!)

『えぇっ!? ヘンリーさん! ラウラちゃんに突っ込みたいって……やっぱり変態でロリコンなんですね!?』

(ん? ……って、突っ込むの意味が違うわっ!)


 喋る事が出来ないので、頭の中でアオイと話をしていると、目の前から大きな魚が迫って来る。

 早速腰に挿しているダガーを手に取り、


「アクア・ウォーター」


 俺がそれを振るう前に、カティが魔法で倒してくれた。


「この辺りは大した魔物が居ないから、安心してね」


 エルフと違って声が出せないので、ジェスチャーで――サムズアップで、返事をする。


『ヘンリーさん。大きな身振りで伝えようとしていますけど、そもそもその手が見えない状態なのでは?』

(くっ……た、確かに)

『あと、今回は大きな魚探しですよね? さっきの魚も結構大きかったと思うのですが』

(バッカ野郎! 魚なんてどうでも良いんだよっ! 大切なのはマーメイドとお近付きになる事! おっぱいを見せてもらう事! 可能であれば、触る事だっ!)

『えっと、私たちは今、何の為に海中を進んでいるのでしたっけ?』

(今、話したばかりじゃないか。マーメイドたちのおっぱいを触りに行くんだよ)

『大きな魚の情報を教えてもらいに行くんですよっ!』


 あれ? そうだっけ?

 おっぱいよりも大切な事ってあっただろうか……と考えていると、


「こっちよ。この奥にマーメイドの棲家があるの」


 カティが小さな海中洞窟を指し示す。

 やった! ついに、マーメイドのおっぱい天国に到着だっ!

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