第307話 おっぱいマーメイド

 カティの指し示す洞窟の中へ。

 マーメイドのおっぱい天国だぁぁぁっ! と、喜んで入ったのだが、とにかく暗い。

 普段、アオイの魔法に頼り切ってしまっているせいか、こういう時に準備不足となるんだよな。

 若干困っていると、


「あ……もしかして、人間には暗過ぎる? 私が先導するから、私の手を……そうそう。じゃあ、行きましょう」


 カティが察して手を差し伸べてくれたんだけど、未だ俺は握っていないぞ?

 そう思っていたら、暗闇の中で左手が引き寄せられる。

 なるほど。クレアがカティの手を取ったのか。

 段々洞窟が狭くなっていき、カティ、クレア、俺、俺の足にしがみ付くラウラの順で上に下にと進んで行くと、突然明るい光が見えてきた。

 遂に、おっぱいか!

 光の方向に――上に向かって泳いで行くと、


「あれ? 水から出たぞ?」


 水面から顔が出てしまった。

 その直後、


「うわー。また人間が出て来たー。すごーい!」


 聴き慣れない幼い声が聞こえてくる。

 もしかして、マーメイドおっぱいとご対面かっ!?

 そう思いなが、一先ずラウラを水面まで引っ張り上げ、声がした方に目を向ける。

 すると、水面から突き出た岩に腰掛ける、淡い水色の鱗に覆われた魚の下半身人が居て、肌色しかない上半身に、二つの小さなピンク色が見えた。


「おぉぉぉ……って、幼女かよっ! 大人のマーメイドは!? おっぱい! おっぱいをぉぉぉっ!」

「ヘンリー様。流石に子供の前では控えられた方が宜しいかと」

「……兄たん。ラウラちゃんのを触れば良い」


 俺と同じく顔だけだしたクレアと、ラウラにジト目で突っ込まれるけど、ここまで来て幼女のおっぱいだなんて、叫びたくもなるだろ。


「お嬢ちゃん。お母さんかお姉さんは居ないかな?」

「向こうに居るよー。でも、エルフのお姉ちゃんはともかく、人間はどうかなー? 昔、人間の男の人に酷い事をされた事があるらしくて、皆逃げちゃうかもー」


 マーメイドたちに酷い事だとっ!?

 なんて羨まし……もとい、悪い奴なんだ!


「待ってくれ。俺たちはただ、おっぱいを見に来ただけなんだ。何も酷い事なんてしないさ!」

「ヘンリー様。既にアウトかと。あと私たちは、胸を見に来たのではなくて、魚の話を聞きにきたんです」

「おっぱいと魚の話? マーメイドを食べたりしない? ……じゃあ、ちょっと聞いて来るねー」


 幼女マーメイドが海に飛び込み、音も無くスィーっと泳いで行く。

 しかし、昔の奴め……さっきの子供言い方からすると、マーメイドを食べたって事だろ?

 それで酷いって言われるっていう事は、見境なしに手あたり次第食べていったか、相当特殊な食べ方だったか、もしくは今の幼女みたいな子供にまで手を出したとかか?

 そんな悪い前例がなければ、俺がマーメイドたちと色んな事を出来たかもしれないのに!


『あの、ヘンリーさんが思っている食べると、さっきのマーメイドが言っている食べるの意味に、大きな隔たりがあると思うんですけど』

(ん? どういう事だ?)

『ヘンリーさんの言う「食べる」は、その何ていうか、エッチな意味で食べるんですよね?』

(当たり前だろ? あんな十歳くらいの幼女は無理だが、あと五年くらい育ってくれれば、美味しくいただくが……しかし、魚の下半身でどうすれば良いんだろうか)

『そんなの知りませんよっ! けど、彼女たちの言う「食べる」は、おそらく食事的な食べるです』

(えっ……それ、マジで言ってんのか!? 流石に無いだろ。マーメイドだぞ? 下半身は魚でも、上半身はおっぱいだぞ?)


 それから、人魚の肉は不老不死の材料となるという言い伝えがあった……というアオイの話を聞きつつ、俺たちも手頃な岩に上がる。

 それから少しすると、


「たっだいまー!」

「こんにちは。あら、本当に人間が居るのね」


 先程のマーメイド幼女が器用にジャンプし、岩の上に座る。

 そして、凄く綺麗なお姉さんが一緒に来ているんだけど、水面に首から上しか出してくれない。何故だ!?


「この子から聞きましたが、何でも魚の話を聞きたいのだとか。どういったお話を聞きたいのでしょうか」

「待ってくれ! 魚の話よりも、俺は貴女のおっぱいが見たい! 岩の上に上がってくれないか?」

「……この子の聞き間違いだと思っていたのに、本当だったんですね。まぁ別に構いませんが」


 マジで!? 良いの!?

 やはり、ドライアードのワンダと一緒で、胸を見られても気にしない種族だっ!

 やった! 来て良かった! 本当に来て良かった!

 一人感動して喜んでいると、見た目十七歳くらいの髪の長いマーメイドが岩に上がり……おっぱい! おっぱいだぁぁぁっ!

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