第303話 お着換えタイム

「クレア。いきなりで済まないが……」

「はい。いつでも、どうぞ。私は、ヘンリー様の妻なのですから、好きなだけ……」

「って、どうしてローブを捲り上げるんだっ!? 違うぞっ! パンツの話じゃなくて、水中呼吸のマジックアイテムの話だからなっ!?」


 カティと共にマーメイドの所へ行くためクレアの所へ来たら、さっき脱ぎたてパンツを渡された事もあってか、変な誤解をされてしまった。

 普段からクレアは露出が少ないから、太もも辺りまでチラッと見えて、少しドキドキしてしまったのは内緒だ。


「ヘンリーさん。パンツの話って何?」

「……兄たん。ラウラちゃんはパンツ履いてないから、見せてあげられない」

「……こほん。色々諸事情があって、今からマジックアイテムを使いたいんだが、対応可能か?」


 ジト目のカティと残念そうな表情のラウラを無視して、クレアに話を振ると、


「大丈夫ですよ。ただ、あくまでも水中呼吸を可能にするだけで、身体を風の結界などで覆う訳ではありません。ですので、そちらのエルフさんのように、水中でも活動可能な格好の方がよろしいかと」

「なるほど、分かった。カティ、準備をしてくるから少しだけ待っていてくれ。……メリッサ! すまないが、一つパンケーキを焼いてくれないか?」

「わーい! パンケーキ、パンケーキー!」


 今すぐ行けるそうなので、早速準備を始める。

 ちなみに、際どい水着姿で待たす事になるので、パンケーキを提供するから我慢してくれ……と思ったのだが、我慢どころか喜ばれてしまった。

 ノーマがカティにお茶を出したりしてくれている間に部屋へ戻り、革の鎧を脱いで水着に着替えようとして、視線に気付く。


「って、ラウラ。いつの間に居たんだよ。そして、人の着替えを凝視するな」

「……ラウラちゃんは、ずっと兄たんの脚にしがみついてた。兄たんが気付かなかっただけ」

「そ、そうか。とりあえず、着替えるから外へ出て……って、ラウラは出ないよな。じゃあ、せめて後ろを見ていてくれ」

「……ラウラちゃんは兄たんの妻だし、お風呂も一緒に入っている仲。今更気にしなくて良い。……そもそも、もう何度も見てる」


 確かにそうか。

 この前、風呂で思いっきり仁王立ちしたしな。

 あの時、変に隠すから幼女たちが気にするんだと悟ったばかりだった。

 なので、風呂の時と同様に全裸になると……


「って、触って良いとは言ってねぇ!」

「……前は見るだけだったから、ステップアップ。ラウラちゃんは、勉強熱心」

「そんな勉強はしなくて良いっ!」


 手を伸ばしてきたラウラのおでこを指でペチンと弾き、着替えを済ませる。

 準備が整ったので、カティの所へ戻ろうとすると、足元でラウラが両手を大きく広げ、万歳をしていた。


「……兄たん。ラウラちゃんも着替えさせて」

「何故だ?」

「……ラウラちゃんも、もちろんついて行く。これ、ドワーフの試練」

「くっ、確かに。というか、水着なんて持っているのか?」

「……無い」


 ダメじゃねーかっ!

 シャツと水着という格好でラウラを抱えると、王都の商店街へ瞬間移動する。

 大急ぎでラウラが着れそうな水着を買って戻って来ると、スポーンとシャツを脱がし、


「ラウラ、右足を上げて。次は左足……って、俺は何をやっているんだ?」

「……ラウラちゃんのお着がえ」

「これ、ユーリヤの着替えをしているみたいなんだが」

「……気にしたら負け。それより、ちゃんと最後までして。でも兄たんが、このままラウラちゃんの胸を見続けたいというなら、このままでも構わない」

「右腕を通して、次は左腕……よし、出来たっ!」


 あらぬ誤解を受けぬように、大急ぎでラウラの着替えを終え、カティの所へ戻ると、


「ヘンリーさん。その幼女ドワーフの格好はマニアック過ぎない?」


 カティと比べればお腹も隠れているし、遥かに露出が少ない、王都の基礎学校でも採用されているという紺色の水着なのだが、何故かジト目で見られてしまった。

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