第287話 ハラペコ幼女たち

「リオナーッ! リオナ、どこだーっ!」


 神聖魔法による身体強化魔法を使って走り回っているのだが、リオナが見つからない。

 空から探すという手段を取ってみたが、森の中なので、上からだと全く見えないので、地道に走って探すしかない中で、


『ヘンリーさん。一先ず、最悪の事態を回避するため、索敵魔法に引っかかる周辺の魔物を、事前に倒しておくというのはどうでしょう』

(そうだな。リオナに万が一の事があったら……いや、絶対にそんな事は起こさせない!)


 アオイから提案のあった、魔物の殲滅を行う事にした。

 迷子になったリオナが、最初にテレポートしてきた村の入り口に戻って来るかもしれないので、そこにラウラを残し、


「リオナーッ!」

「どこに居るんだーっ!」

「リオナ、ごはんだぞーっ!」


 リオナが反応しそうな言葉を叫びながら、点在する魔物を斬り倒していく。

 ……くそっ! 広い森の中だけあって、村の周りに魔物が多すぎるっ!


『ヘンリーさん。でしたら、周辺の森を灰にしてしまって……』

(なるほど。そうだな……って、流石にそれはエルフたちに怒られる。地道に索敵魔法で見つけた魔物を倒すぞ)


 最近のアオイは破壊衝動が強くなってないか?

 若干不安に思いつつ、少し時間がかかったものの、周辺の魔物のを狩り尽くした。

 一先ず、村から出てしまったリオナが魔物に襲われるという最悪のケースは回避したものの、未だに見つかっていない。


「……って、待てよ。ユーリヤ、さっき一緒に居たリオナの場所って分かる?」

「うん、わかるよー。あっちー」


 分かるのかっ!

 最初からユーリヤに聞いておけば良かったな。

 ユーリヤの案内に従って進むと、エルフの村へと戻ってきて、


「にーに。ここー」

「この家の中か? ……すみません、失礼します」


 緊急事態だからと、ノックもせずに無断で家の中へ。

 すると、


「はーい、どなたー? ……あら、魔術師さん! どうしたの? そんなに息を荒げて」

「え? リリヤさん!? ……ここって、リリヤさんの家だったんですね」


 家の奥から裸エプロン姿に見える、巨乳エルフのリリヤさんが現れた。


「今、ルミが外で遊んで居るから……イケナイコトしちゃう?」

「し、したい……んですが、今は迷子を捜していまして。リリヤさん、ルミよりも幼くて、ユーリヤよりも大きな女の子を見ませんでしたか?」

「あら、この子の事かしら?」


 リリヤさんが視線を向けた先に目を向けると、リオナが美味しそうにご飯を食べていた。


「リオナ! ……って、どうして俺から離れたんだ!?」

「あ、おにいちゃん! ごはん、おいしいのー!」

「いや、答えになってない……が、とにかく無事で良かった」


 幸せそうにご飯を食べるリオナを見て、胸を撫で下ろしす。

 しかし、本来ならすぐにリオナを連れ出すべきなんだろうけど、まだ食べてる途中なんだよな。

 どういう成り行きでこうなったのかは分からないけれど、せっかくリリヤさんがご飯を出してくれたのに、残させちゃダメか。


「にーに。ユーリヤも、たべたい……」

「えっ!? ユーリヤ!?」

「あらあら。見ていたらお腹が空いちゃったのね? 沢山あるから貴方も食べる?」


 リリヤさんの言葉に、ユーリヤがコクコクと頷く。

 最強のユーリヤだけど、ご飯には弱いんだよな。


『そのユーリヤちゃんを餌付けしたのは、どこの誰でしたっけ?』


 アオイのツッコミを華麗にスルーしたものの、リリヤさんの魔術師さんもどうぞ……という言葉はスルー出来ず、何故か俺まで一緒にご飯をいただく事に。

 ユーリヤとリオナが結構こぼすので、二人の面倒をみていると、


「流石、もうすぐパパになるだけあるわねー。魔術師さんはいつ赤ちゃんが生まれてきても大丈夫ね」

「……はい? あの、リリヤさん。今のは、どういう意味ですか?」

「え? そのままの意味よ? ルミを貰ってくれるのよね? 三年後に子作りを開始するって聞いたし、もうすぐじゃない」

「それは盛大な誤解ですから! というか三年後が、もうすぐなんですかっ!?」

「エルフは寿命が長いから、三年なんて、ほんのちょっとよ?」


 リリヤさんから、とんでもない事を言われてしまった。

 三年がほんのちょっとって……それで、ルミがあんな事になっているのか。


「って、しまった。ルミの事をすっかり忘れてたっ!」


 ご飯を食べているユーリヤとリオナをリリヤさんにみてもらい、大急ぎでルミを探し、


「お兄ちゃん! 探していた子が見つかったのなら、ちゃんと教えてよっ! ルミ、名前も顔も分からない子を、一人でずっと探してたんだからーっ!」


 どうにか見つけたものの、頬を膨らませられてしまった。

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