第288話 新たなターゲットとなる種族

 リオナとユーリヤの食事が終わるのを待って、ヨセフィーナさんの所へ向かうと、


「ヘンリー。おっそーい! もう、お話済んじゃったよー?」


 イロナが口を尖らせる。

 うん。ルミを見つけた後も、二人の食いしん坊が食べ続けていて動けなかった事は黙っておこう。

 ちなみに、その食いしん坊たち――ユーリヤはいつも通り俺の背中にくっついているが、リオナは満腹になったからか、完全に熟睡している。

 そのため俺の背中にユーリヤがいて、左腕にラウラを抱え、右腕でリオナを抱え、すぐ傍からルミにジト目で見上げられ……幼女カーニバルとなっていた。


「すまない。ところで、どういう話になったんだ?」

「それなら婿殿には私から直接話そう。結論から言うと、海の家で出していたのは普通の魚だ。特に大きな魚についての情報は無い」


 イロナに代わってヨセフィーナさんが話しだしたんだが……婿殿?


『ヘンリーさんが先日のパーティで、ダークエルフの長の娘、カティさんに手を出したからですよ』

(カティの事は覚えてるけど、手なんて出してないぞ?)

『出してましたよ。胸の谷間に、思いっきり手を突っ込んでいたじゃないですか』

(手を出すって、そういう事!? 物理的に!?)


 いや、確かに事故でカティの胸元に手を入れ、柔らかくて暖かい感触を堪能させてもらったけど……あー、思い出した。

 ここ数日が忙しすぎて忘れてたけど、確かにヨセフィーナさんから婿殿って呼ばれてたな。

 ……って、そうじゃねーよ。

 婿の話じゃなくて、今はそれより魚の話なんだってば。


「一先ず、ヨセフィーナさんでも大きな魚の話は知らないって事か」

「そうなるな。だが、情報がありそうな場所は知っているぞ」

「え? というと?」


 ヨセフィーナさんが勿体ぶって少し溜め、


「それはな、マーメイドが棲む場所だ。そこなら、魚の情報が幾らでも手に入るんじゃないか?」

「流石はヨセフィーナさん! よし、決定だ! 今すぐ行こう! マーメイド達は、何処にいるんだ!?」

「落ち着きなよ。ちゃんと案内してあげるからさ」


 凄い情報をくれた。

 これは……何としても、絶対に行かなくては!


『ヘンリーさん。どうして、そんなに興奮しているんですか?』

(アオイ、考えてみろ。マーメイドだぞ!? マーメイドといえば、何だ?)

『何だ……って、人魚の事ですよね? 上半身が人間で、下半身が魚の』

(そうだ。そして、マーメイドは海の中に棲んでいる。という事は、服なんて着ている訳がない。ドライアドのワンダみたいに、普段は全裸で過ごしているに違いないだろ!)

『……そ、そうですね』

(あっちを見ても、おっぱい。こっちを見ても、おっぱい。どこを見てもおっぱいに囲まれているなんて、何て素敵なんだっ!)

『ダークエルフや、獣人族にマーメイド。ヘンリーさんの、そういう種族に偏見を持ったり、色眼鏡で見ない所は凄いと思いますよ。本当に』

(持つ訳ないだろ? 可愛い女の子は全て正義だっ!)

『……ところで、ヘンリーさん。マーメイドって、海の中に棲んで居ると思うんですが、どうするんですか?』

(…………な、何だってぇぇぇっ!?)


 あれ? でも、上半身が人間なら、肺呼吸だよな?

 でも、下半身が魚だから……いやもう、分からんよ。人魚族の神秘だな。


「えっと、ヨセフィーナさん。海の中で呼吸が出来る魔法とかってあるんですか?」

「もちろん……と言いたいところだが、あるにはあるんだが、これは自分自身にしか使用出来ない魔法なんだよ。だから婿殿。先ずは水中で呼吸する手段を得てから、もう一度来ておくれ。そうしたら、マーメイドが居る場所へ連れて行ってあげるからさ」


 ぐぬぬ……水中で呼吸する魔法か。

 エルフの魔法には存在するんだよな。


(アオイ。水中で呼吸する魔法って使えないのか?)

『ヘンリーさんが思い描いているような、水中で空気を吸うような魔法は無いですね。代替となる魔法はありますが……おそらく、お気に召さないかと』

(一応聞いておきたいんだが、そのアオイが言う代替えの魔法って?)

『風の魔法で結界を作り、大きな風船みたいに空気を水中へ運ぶ方法です。その風船の中に入る場合だと、呼吸は自由に行えますが、結界から外の物に触れたり出来ません。一方、空気の風船を持って行く方式だと、息を止めて、苦しくなったら風の結界に顔を突っ込んで呼吸する事になります』

(触れないのはダメだろ! 周囲におっぱいが沢山……もとい、魚を捕まえないといけないんだぞ!? あと、魚を捕まえる為に激しく動くだろうから、息を止め続けるのも辛いな)

『……でしたら、魔法以外の手段を考えないといけませんね』


 一先ず、水中で呼吸する方法を探すため、一旦屋敷へ帰る事にした。

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