第154話 大好きっ!

「……先輩。今日はヘンリー様を待って居たのは一人だけッスね」

「そうだな。いつもハーレムみたいに沢山少女をはべらせていたが、ついに一人に絞った……というか、あの少女が褐色幼女のお母さんなのか?」

「しかし私の幼女判定では、あの幼女は六歳。一方、ヘンリー様と少女は十五歳くらいに見えますし、髪色も違うので流石に……あ、何でもありませんっ!」


 最後の兵士の幼女判定って何だよ。

 流石に、そんな馬鹿げたスキルは存在しないと思いたいが。


「エリー。一先ずフローレンス様に状況を説明しておいた。詳しい事は後で話すけど、国が全面的に協力してくれると思って良いよ」

「ハー君! ありがとうっ!」

「にーに! ユーリヤもだっこー!」


 ユーリヤを左手で抱きかかえながら、エリーを右手で抱きしめていると、門の傍から「羨ましいッス」「彼女欲しい」「……ハァハァ」と、変な声と共に視線を感じるので足早に立ち去り、完全に離れた所で状況を説明する。


「さっきの続きだけど、お母さんを探す捜索隊が編成されるから、すぐに見つかると思う。で、俺は今から任務に行かなければならないから、エリーは自宅で待っていてくれないか?」

「自宅……エリー、また一人になっちゃう。ハー君、一緒に行っちゃダメ?」

「え? うーん。一応、任務で行く訳だからなー」

「お願いっ! もう一人ぼっちはイヤなのっ! ハー君! 一緒に居て!」


 エリーはお母さんが行方不明で、しかも魔族にさらわれたかも……って、これは俺が言ってしまったんだよな。

 昨晩はベッドで俺の隣を、アタランテから涙の力で譲ってもらい、ユーリヤと一緒にずーっとくっついていた。

 朝は少し落ち着いて居たものの、王宮の入口まで来たし、精神的に相当まいっているのだろう。

 女の子を悲しませる訳にはいかないし、俺の傍に居る事でエリーが少しでも楽になるなら、良いか。

 任務は任務だけど、エルフの村へ行って話をするだけだしな。


「わかった。じゃあ、エリーも一緒に行くか」

「……ありがとうっ! ハー君、大好きっ!」


 おぉぅ。エリーが俺の事を大好きだって叫びながら、抱きついて来た。

 ダーシーから好きだって言われたのは俺の幻覚の中の話だったけど、今回はマジだよな。

 これは、もしや俺の時代が来た!?

 ついに俺にも恋人が出来るのか!?

 出来れば胸の大きな女の子が良かったけれど、エリーは少し胸が小さいけど無い訳ではない。

 それに、エリーはこれからまだ大きく育つ可能性だってある。

 可愛いし、性格も良いし、ちょっと言動と身体が幼い所もあるけれど、初めての相手がエリーならウェルカムだ。


「にーに! ユーリヤも、ユーリヤもにーに、だいすきー!」


 ユーリヤがエリーの真似をして抱きついてきた。

 ユーリヤも俺の事を兄のように慕ってくれて……って、ユーリヤは幼いのに身寄りが居なくて、俺が唯一の保護者みたいなものだからな。

 ……あれ? エリーも、お父さんは国外出張で連絡が取れず、お母さんが行方不明で、俺が唯一魔族と戦えそうで……って、これはユーリヤと同じ?

 孤独を感じている所へ、ただ近くに俺が居るから好きだと錯覚しているだけ?

 だけど、俺の事を好きだと言って抱きついているのはエリーだ。

 だから俺がエリーに手を出した所で、別に俺は悪くないよね?

 いやいや、だけどエリーの心が弱っていて勘違いした所を狙い撃つような男になって良いのか?

 だが、孤独を感じているエリーの傍に居てあげれば、その勘違いが恋心に変わって……あぁぁぁ、わからんっ! 何が正解なんだよっ!


「エリー、ユーリヤ。今からエルフの村へ行くからな。とりあえず、話は俺がするから静かにしていてくれよ」

「うん、わかったー!」

「はーい! ユーリヤいいこにしてるねー!」


 一先ずエリーを恋人にしようとするのは一旦置いといて、先ずは任務をこなす事にした。


『……最近は大胆になってきたと思っていたんですが……やっぱりヘタレでしたね』

(何がだよっ)

『昔はこっそりパンツを覗こうとするだけだったヘンリーさんが、堂々とジェーンさんやソフィアさんの胸を触るようになってきていた事です』

(あれは採寸と事故だっ!)


 アオイの戯言にツッコミつつ、ワープ・ドアの魔法を使って三人でエルフの村へと移動する。

 二人を連れてエルフの長、サロモンの家を訪ねると、


「あ、お兄ちゃん! いらっしゃーい! 今日もルミに会いに来てくれたんだねー!」

「いや、今日は別件なんだ。サロモンさんは居る?」

「うん、居るよー……って、ちょっと待った! お兄ちゃん! そっちの幼女ちゃんは、この前会って紹介してもらったけど、そっちの女の子は誰なのっ!?」

「誰……って、エリーの事か?」

「そうだよっ! どうして可愛いルミが居るのに、また新しい女の子が増えているのっ!? しかも腕まで組んでるしっ!」


 出て来たルミが、エリーに向かって敵対心をむき出しにしてきた。

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