第123話 呼び出し

 翌日。

 いつものように学校へ行き、いつものようにソフィアのパンツを見せてもらって授業へ。

 今日はジェーンがシャロンに剣を教える番なので、ニーナの巨乳を眺めながらドワーフ探しだなと考えていると、


「ヘンリー君。ちょっと来て」


 授業中だというのにイザベルが教室に入ってきた。

 まったく。珍しく訓練室での自習ではなく、精霊魔法の講義だったのに。

 言っておくが、俺は自力で召喚魔法以外の魔法を使う事を諦めていないからな?


「先生。人が真面目に授業を受けていたのに、何の用ですか?」

「そんなのこっちが聞きたいわよ。とにかく、ここじゃなんだから、場所を変えましょう」


 イザベル先生がスタスタと歩きだしたので、ユーリヤの手を引いてついて行く。

 廊下では話せない……つまり、他の生徒に聞かれては不味い事みたいだけど、一体何だ?

 魔法大会優勝者にして、フローレンス姫を助け、既に王宮へ仕官が内定している成績優秀、品行方正な俺に。


『……私は、自分で自分の事をそこまで持ち上げられるヘンリーさんの性格が羨ましいですよ』

(え? でも、どれも事実だろ?)

『品行方正以外はそうですね。日頃の行いについては……あ、呼び出された理由って、これじゃないですか? 女子生徒から苦情が来たとか』

(あー、ユーリヤを触らせてくれないとか、そういう事か。けど、あまりユーリヤにストレスを感じさせたくないんだよな)

『いえ、ユーリヤさんの事ではなく、毎日女子生徒のパンツを覗いたり、チャンスがあればアクシデントを装って胸を触ろうとしたりしている事です』

(……い、いや、あれは事故だし。わざとじゃないし)

『どうやったら、毎日女子生徒の胸に顔を埋めたり、スカートの中に顔を突っ込む事になるんですかっ! それは突発性ハレンチ症候群と宣告されてしまったラッキースケベの宿命の人に与えられた特権です。ヘンリーさんのは、明らかに故意です。犯罪です』


 突発性ハレンチ症候群って何だよ……と思っていたら、イザベル先生が生徒指導室と書かれた部屋に入っていった。

 あ、あれ? 全く心当たりはないのに、どうしてこんな部屋に?


「し、失礼しまーす」

「畏まらなくて良いわよ。私しか居ないし、単にこの部屋が空いていたから入っただけだし」

「なんだ、俺怒られる訳ではないんですね? 良かった……で、先生俺に何の用なんスか?」

「ヘンリー君。怒る訳ではないけど、用件が違うと分かった途端に態度が変わりすぎよ……」


 少しでもイザベル先生が怒りを向け難いようにと、膝の上にユーリヤを座らせていたのだが、どうやら必要無かったらしい。


『ヘンリーさん。ついさっき、ユーリヤちゃんにストレスを与えたくないって言っていませんでしたっけ?』

(もちろん。俺はユーリヤを盾になんてしてないよ? ただイザベル先生が俺を見ると、常にユーリヤの顔が視界に入るようにしただけだし)

『それ、確信犯じゃないですか……今に始まった事ではないですけど)


 とはいえ油断させといて、実は……というパターンもあるし、ユーリヤも俺の膝の上が良いみたいなので、あえてそのままにしてしておくと、


「さて、ヘンリー君。これはどういう事か教えてくれるかしら?」


 イザベル先生が白い封筒を出してきた。


「ヘンリー君。貴方、一体何をしでかしたの?」

「こ、これは! ……何ですか?」

「この封筒の裏、ここに刻印があるでしょう? これは、教会が正式に発行した文書である事を示すものよ。今朝、教会の使いだと名乗る女性が職員室へ持って来たんですって」

「ふーん。で、中身は何て書いてあるんですか?」

「勝手に開けられる訳ないじゃない。正式な文書で、しかも貴方宛なのに」


 とりあえず中身を確認しなさいと、イザベル先生に白い封筒を渡される。

 表には、「第三王女直属特別隊ヘンリー=フォーサイス殿へ」と書かれ、「至急」という文字も書かれていた。

 一先ず、封を切って開けてみると、一通の手紙が入っていた。


――貴殿の実力を示す件について、数日が過ぎているが、どういう所存なのか。大至急意志を示されたし。コートニー=リルバーン――


 随分と達筆な字だけど、しかし一体何の事やら。コートニー=リルバーンって言われても、知らないよ。


「え? これだけ?」

「……何が書いてあるかは見ないけれど、教会が正式に発行した文書よ? 無視すると大変な事になるから、ちゃんと対応なさい。わかった?」

「えぇー、面倒臭いんだけど」

「ダメよ! 教会の力は、国外にも及ぶわ。いくら貴方がフローレンス様の恩人であっても、相手が教会となると、一筋縄ではいかないわよ」


 そう言って、イザベル先生が教室を出て行く。

 しかし言われてみれば、確かにフローレンス様も何か困っている様子だったような気もする。

 ……あー、確かにフローレンス様が実力を示せとかって言っていたな。魔法騎士隊に入れとか何とかって。

 ユーリヤは連れて行っても大丈夫なのだろうか。長時間離れると、大変な事になるのだが……主に俺が。

 一先ず、学校が終わったら王宮へ行ってみようか。

 やる事がいっぱいあるのに……と溜め息を吐きながら、授業へ戻る事にした。

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