第122話 エロ薬の効果

「うー。これ……変な味がするんだけど」

「そう? でも魔力はしっかり回復すると思うよ」

「何だか、喉に引っ掛かると言うか、喉越しも悪いんだけど」

「まぁ薬だからね。ほら、良薬口に苦しって言うだろ?」


 今更ながら、何のラベル表記も無いビンを不審に思ったのか、ジロジロとビンを眺め、時折俺をジト目で見てくる。

 だがソフィアは既に薬を飲んだ後だ。

 後は効果が表れるのを待つだけだ。


「どう? こう身体が熱くなって、魔力が湧きでてくるって言う感じがしない?」

「そうかしら? あまりそんな感じは……って、どうしてウチに近寄るの?」

「え? いや、瞬間移動で宿……じゃなくて、家に送ろうと思って」

「そ、それで、どうしてウチにくっつく必要があるの?」

「あぁ、いつもユーリヤと使っているだろ? 密着していないと使えないが、ドアじゃない方の瞬間移動もあるんだ」

「そ、そうなの? ……言われてみれば、確かにユーリヤちゃんと突然消えた事があったわね」


 何かを思い出そうとしていて、ソフィアがどこか遠くを見ているので、静かにそっと肩に手を回す。

 すると、一瞬ビクッと驚いたものの、それ以上何も言わず、受け入れるようにして目を閉じた。

 普段のソフィアなら、こんな事をすれば、即座に何か言ってくるはずなのに、何も言って来ない。

 これは……薬が効いている!?

 行ける! 行けるぞ! この薬の効果は本物だっ!

 じゃあ、この薬を誰に使おうか。やはり巨乳三銃士は外せないよな。

 ニーナは上司と部下の関係にあるし、いろいろと後が面倒臭い事になるから、やっぱりジェーンだろうか。

 シャロンは伝説のロリ巨乳だし、発情期になると凄いらしいし、その凄さを体験してみたい気もする。とはいえ、上級者向きの気もするから、やっぱりジェーンだな。

 よし、決まりだ。残りのエロ薬をジェーンに飲ませて、あんな事やこんな事をしてしまおう。


「ねぇ、まだなの? ウチ、ずっと待って居るんだけど」

「あぁ、ごめんごめん。じゃあ、行こうか」

「もぉっ! 自分から誘ったんだから、ちゃんとエスコートしなさいよね」


 誘った?

 ソフィアをどこかへ誘ったっけ?

 まぁいいや。実験は成功したし、さっさとソフィアを送って、ジェーンの所へ行こう。

 ……あ。せっかくだから、念のためもう少し確認しておこうか。

 今は肩に手を回しただけだし、もう少し触ってみよう。


「じゃあ、行くぜ」


 時々フローレンス様にやるように、右手をソフィアの脚に添え、ソフィアをお姫様抱っこする。

 ほんのり汗ばんだソフィアの脚を持ち上げるが、何も言ってこない。

 それどころか、ソフィアが自ら腕を首に回し、俺に抱きついてきた。

 うん、間違いない。普段のソフィアなら、こんな事絶対にしないからな。

 しかし……フローレンス様と同じ格好なのに、ソフィアの胸が押し付けられる事はない。

 フローレンス様をお姫様抱っこをする時は、いつもムラムラしてしまうのだが、ソフィアには……うん、無いな。


「テレポート」


 ソフィアを抱きかかえたまま瞬間移動し、地面に降ろす。


「ソフィア、着いたよ」

「うん……って、ちょっと待って。ここ、ウチの家じゃない」

「ダメなのか?」

「だ、ダメって事は無いけど……初めては男の人の家じゃないの? というか、ウチの部屋は無理よ? その、片付いていな……じゃなくて、部屋へ行くまでにメイドたちも居るし……」


 ソフィアは何を言っているのだろうか。

 俺は早くジェーンの所へ行きたいのだが。


「よく分からないけど……ソフィアは顔が赤いし、熱もあるんじゃないのか? さっき抱き上げた時に触れた脚も、俺に回していた腕も体温が高かったしさ」

「そ、それは、自分でもどうしてかは分からないけど、ちょっと変な気分で……って、何を言わせるのよっ!」

「いや、勝手にソフィアが言っただけだろ? とにかく、早くベッドに入って、休んだ方が良いんじゃないか?」

「はぁぁっ!? あ、アンタ、ウチをその気にさせておいて、何なのよっ!?」

「な、何が?」

「何が……って、アホーッ! 何で、アンタはいつもそうなのよっ!」


 何だ? 一体、何がどうなっているんだ?

 薬の実験台にしたのは悪かったと思うが、惚れ薬とエロ薬の両方の効果を持つ薬を飲んだはずなのに、ソフィアが俺に惚れるどころか物凄く怒っている。


「そ、ソフィア! イフリートは止めろ! 街の中だぞ!? というか、自分の家のすぐ目の前で、何をする気なんだ!? 近所迷惑だぞ!?」

「この辺り一帯なら、ウチの領地だからどうにでもなるわよっ! このアホーッ!」

「ファイアーボールはやめろーっ!」


 咄嗟に口を塞いで呪文詠唱を止めたものの、ソフィアが顔を真っ赤にして俺を見つめている。

 うーん。薬を中途半端な量しか飲まなかったから、効果が十分じゃなかったのだろうか。

 それとも、過去の人のイタズラにしてやられただけなのか?

 どっちが正解なのか、手でソフィアの口を塞いだまま考え事をしていると、


「うぉっ! 噛むなよっ!」


 軽く指を噛まれてしまった。

 うん、あの薬はイタズラだな。

 本物なら、本気では無いにしても、惚れた相手の指を噛んだりしないだろうし。

 アオイもそう思うだろ?


『……ノーコメントです』


 何故かアオイは何も言ってくれなかったが、


「アホーッ!」


 カラスみたいに叫ぶソフィアを置いて、一先ず逃げる事にした。

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