第3章 第三王女直属特別隊

第32話 第三王女フローレンス=ハミルトン

 煌びやかな装飾がなされた、異様に広くて天井の高い部屋――国の中心にあるエディンベリー城の一角で、俺は王族を含む偉い人たちに囲まれて居た。

 というのも、先日起こった魔族の魔法大会潜入事件で、第三王女であるフローレンス様を助けた功績で、勲章を授与されてしまったのだ。

 勲章だよ? 勲章。

 普通なら、騎士や宮廷魔術士となって、特別な任務を与えられるようになるまで偉くなり、何かしらの功績を上げて、ようやく貰えるような物だ。

 それを学生の身でありながら授与されてしまった。……もしかしたら、この式典が終わり次第、騎士団や宮廷からお誘いが貰えるかもしれない。


「ヘンリー=フォーサイス君。先日は、我が娘フローレンスを助けてくれて、本当にありがとう」

「いえ、この国に住む者として当然の事をしたまでです。ただ、残念な事にフローレンス様しかお助けする事が出来ませんでしたが」

「いや、魔族という伝説級の存在が相手だと聞いている。フローレンスを助けだす事が出来ただけでも、奇跡だと言えよう」


 初めて直接目にした王様と僅かならが会話し、直々に勲章を渡された。

 尚、この場には居ないが、エリーとソフィア、ジェーンも魔族を退けたメンバーとして、別途宮廷より賞状が授与されるらしい。

 それから、あの時俺が救い出す事が出来なかった騎士や宮廷魔術師の人たちは、あの男子生徒と同じく石像にされてしまった。

 今は宮廷魔術士と教会が協力し、石化魔法の解除方法を調べているそうだ。無事に解除出来れば良いのだが。


「それでは、これにてヘンリー=フォーサイス様への勲章授与式を閉会いたします」


 王宮でのマナーやルールが分からないので、一先ず頭を下げておくと、兵士に部屋の外へと案内される。

 そして、出口とも違う別の部屋へと案内された。


「ヘンリー=フォーサイス様。暫し、こちらの部屋でお待ちいただけますでしょうか。ヘンリー様と会話を望まれている方が参られますので」


 来た来た来た来た。

 予想通りのお誘いだ。騎士か、それとも宮廷魔術士か、どっちだろうか。

 正直、以前に騎士団長から直接声を掛けて貰っているから、騎士団の方が可能性が高いと思う。

 だが昨日の活躍――連続テレポートで助けたのではなく、召喚魔法で王女様を安全な場所に呼び寄せたという事にした――で、魔法の実力が認められ、宮廷魔術士としてスカウトされる可能性だって十二分にある。

 どちらに入りたいかと言われれば当然騎士団なのだが、今の俺なら宮廷魔術師からの魔法騎士でも良いかなと思う。

 ワクワクドキドキしながら待って居ると、扉がノックされ、


「失礼いたします。ヘンリー=フォーサイス様。第三王女フローレンス様よりお話があります。では、私はこれにて失礼いたします」


 何故か先日助けた王女様が部屋に入って来て、二人っきりにされてしまった。

 勧誘では無かったのか? ……いや、その前に先日助けてあげたお礼かもしれない。騎士や宮廷魔術士としてスカウトするよりも、お礼の方が先というは尤もな話だ。


「ヘンリー様。先日は、あの魔族から救っていただき、本当にありがとうございました」

「い、いえ。当然の事をしたまでです」


 この前は時間が無くて必死だったけど、改めて見てみると、流石は王女様と言うべきか。

 品のある整った顔立ちで、腰まで伸びる銀色の髪は絹糸みたいに綺麗だ。正直、王女様の大きな瞳が、俺なんかをじっと見つめて良いのか? とさえ思えてしまう。

 王女を前にして、迂闊な事――薄ピンク色のドレスの胸元が大きく開いており、谷間がバッチリ見えているので凝視――をしないように、本能を理性で抑え込んで居ると、


「ヘンリー様。ヘンリー様は召喚士で、魔法学校で魔法を学んでいるとお伺いいたしました」


 王女自らスカウトの話を始めた。

 てっきり、こういうのは騎士や宮廷魔術士の偉い人がするんだと思っていたが、どうやら違うらしい。

 一先ず、宮廷魔術士としてのスカウトらしいので、自らアピールしていこう。


「はい、その通りです。あと半年で卒業となりますが、その後は宮廷魔術士になれればと思っています」

「なるほど。つまり、王宮に仕えるつもりなのですね?」

「はい、そうです。王宮に仕え、この国を、国民を、そして王女様をお守りする所存です」

「ヘンリー様の強い意志を感じました。どうでしょう。ヘンリー様さえ良ければ、今すぐにでも私に仕えませんか?」

「よろしいのですか!? それは私としても、是非お願いしたいです」


 やった! 卒業を待たずして、宮廷魔術士への切符ゲット!

 あの魔族騒ぎで、暫く学校も休校になると聞いているし、今すぐ宮廷魔術士となって活躍していこう!


「わかりました。それでは、第三王女フローレンス=ハミルトンの名の下に、ヘンリー=フォーサイスを第三王女直属特別隊として任命いたします」

「はい! ありがたき幸……せ?」

「ヘンリー、どうかしたの?」

「え? あ、いえ。その……俺――じゃない、私が任命された組織名を教えていただければと」

「ヘンリー。私と二人っきりの時は、もっとざっくばらんで良いわよ? 私直属の特別隊なんだから」


 あ、あれ? 何か、少し思っていたのと違う気がするんだが。


「フローレンス様直属の、特別隊?」

「えぇ、そうよ。騎士団長も宮廷魔術長も魔族を退ける程の実力を持つヘンリーを欲しがったんだけど、どっちに行っても私が直接お話出来なくなっちゃうもん。だから、こうして私だけの特別隊に来てもらったの! よろしくね、ヘンリー」

「よ、よろしくお願いいたします。……ふ、フローレンス様」

「もう、様付けはダメって言ったじゃない。そうね……じゃあ、これから二人っきりの時は、私の事をフロウって呼ぶ事と、敬語を止める事。これは王女命令だからね。破ったらペナルティなんだから」

「わ、わかったよ。フロウ」

「うふふ。よろしくね、ヘンリー」


 どうしてこうなってしまったのか。

 俺は騎士でも宮廷魔術士でもなく、フローレンス王女直属隊に任命されてしまった。

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