Reverse:Rebirth
タクト
第1話 人生の終わり
私の人生は終わった。
終わってみると意外とあっけなかったと思う。
得るものは何もなく、幸せだったとは言えない。
…あぁ、思い返してみても私は無意味に生まれ、無感動に生き、無価値に死んだ。
せめて最後くらい誰かの心を揺さぶれればとも思ったけどそれさえ出来なかった。
私が死んでも、誰も悲しんでいない、と思う。
死んだあとに残された人のことなんて知らない。
元より私の周りには誰もいなかったんだし、そんなこと知ろうとも思わない。
…なんかもう、何もかもどうでもいいや。
願うならあと一つだけ。
もう人生なんて、まっぴらだ───。
***
気が付いたら、私は知らない場所にいた。
何もない空間に一人、私は倒れていた。
倒れていた、という表現は適当でないかもしれない。
なぜなら、今の私には体が無かった。
体が無い状態でも移動はできたので、何となく進んでみる。
よくゲームとかで思念だとか心だとか、そういった肉体を失った存在を表現するのに光る球体が使われているけど、今の私は多分そんな感じなんだろう。
先へ進むと、目の前に扉を見つけた。
扉の裏側には何もない。また空間が続いているだけ。
何となく入れと言われている気がしたし、入らないと無限ループになりそうだったので仕方なくその扉を開けた。
扉の先に広がっていたのは、図書館だった。
辺り一面にあるのは巨大な本棚と、そこに収められている大量の本。
少し進むと、開けた場所に出た。
そこに一人の男の人がいた。
長い銀髪が印象に残りやすそうな、神秘的な人。
そういえば私も生きてた頃は銀髪だったっけ。
等と考えつつも、私はその人に近づいてみた。
「…おや?」
どうやら向こうもこちらに気づいたようだ。
「珍しいな、ここに自我をもった状態でやってくる人がいるなんてね」
そんなことはどうでもいい、ここはいったい何?
「ここかい?そうだね、何ていったらいいかわからないけど、最も分かりやすいのは"三途の川"かな」
でも、ここは明らかに図書館で、川なんてどこにもない。
「はは、そうだね。確かにここは川には見えない。でも実際そういう場所なんだ。死を迎えた人がやってくる場所といえばそうだろう?」
じゃあこの先は地獄に繋がっていて、あなたは言うなれば奪衣婆か閻魔様なのかな。
「少し違うかな。僕はそういう神様めいた存在じゃない。ただの傍観者さ」
何を見ているの?
「人の心だよ」
心?
「そう。君は死に、肉体を失って心と魂だけの存在になった。ここは心と魂を切り分けて、新しい命にするんだ」
…じゃあ私も、今からそうやって新しく生まれ変わるのかな。
「うーん、そうしたいところではあるのだけど、ここに自我をもってくる存在はイレギュラーでね。どうしようか少し悩んでいるんだ。君はどうだい?もしかして早く生まれ変わりたかったりするのかな?」
それはない。むしろその逆。生まれ変わりたくなんてない。
「あはは、なんだいそれは。面白いことを言うね。…ともあれ、わかった。じゃあこうしよう。それっ」
男の人はそう言うと、どこからともなく手に鍵を出した。
その鍵の先端が私に触れると、私には肉体が誕生した。
「そうした方が話しやすいだろう。少しの間だけそれを貸してあげる」
「……」
「改めて、ここがどういう場所か教えてあげる。君がどうしたいかはその後に考えるといい」
そうして私は、ここがどういう場所なのか教えてもらうのだった。
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