眠る世界の人魂たち

various(零下)

第1話 白雪姫の王子様に宿る人魂


 私は、王子である。

 地位も、権力も、財力も持つ、一国の王子である。

 私が気骨のある男であったため、白雪姫を城に連れ帰る行為に成功した。

 貴様は、どうだ? 

 財力どころか、白馬すら持たない身で、一方的に白雪姫に好意を寄せるなど、図々しいにも程がある。

 なんだ、その眼差しは。まさか、最愛の女性を見つけたつもりなのか?

 いいか、よく聞け。

 私は〝王子〟だ。

 小人の貴様など、ただの〝偶然、出会っただけの知り合い〟だ。

 白雪姫が毒林檎を食べて倒れたとき、貴様は、白雪姫が死亡したと涙を流し、諦めた。

 たかが死亡しただけで諦めるような軟弱な男が、今更になって、白雪姫が恋しいだと?

 笑わせるな!

 死体だから、どうしたというのだ。美貌の前では〝死〟など問題ではない。よいではないか、美しければ。問題なかろう、美女であれば!

 担げ! 白馬がないのであれば、体中の骨を折ってでも、白雪姫を担いで家に連れ帰ればよかったものを!

 理想の女性を見つけたら、死体であっても構わない。私にとって、死など一切、関係ない。

 担ぐ! たとえ白馬が途中の沼に嵌って沈んでも、私は姫を背に乗せ、全身に汗をかいてでも、担いで城まで歩き続ける!

 すべては、白雪姫を妻にするためだ! 貴様には、ガッツが足りないのだよ!

 この根性なしの〝ただの知り合いの小人〟が!


 ……少し、言いすぎたようだ。

 貴様を、結婚披露宴に招待しよう。

 私と姫の仲睦まじい様子を見て、ナプキンをキリキリと噛んで悔し涙を浮かべるがいい!


 ……すまん。また、言いすぎた。


 ……。


 お、怒ってる? ご、ごめんね。

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