第18話 ブレードベア
「やっっ・・・!」
やばい!やばいやばい!やばいやばいやばい!
語彙力がすっ飛ぶ。
ブレードベアのナイフのような爪が今まさに振り下ろされている。
丸太のような太い腕、鋭い爪。そんなもので思い切り殴られたら命はない。
こんなこともあろうかと皮製のインナーは着ているがブレードベアに殴られても大丈夫な自信はない。いや信じろ。自分で作った装備を信じろ。爪は左から来る。右に飛ぶんだ右右右右右右!!!
「みぎぃっ!!!」
パリンとガラスが割れるような音が聞こえた。
子供を抱えて右に飛ぶがかわし切れるものではなく、
手加減のない衝撃が背中を襲い吹き飛ばされる。
なすすべなく地面を転がり続け、止まる。
意識はある。即死ではないようだ。
子供は・・・無事かどうかわからないが生きてるといいな。
背中が痛い。熱い。ただただ痛い。
痛すぎて熱すぎて吐きそうだ。
「ぐうううう」
縮こまって痛みに耐える事しかできない。
冒険者ってこんな痛みに耐えてるのか。生き残れたら尊敬することにしよう。
「バラシ!」
「バラシはん!」
「よくもあたしの婚約者をやってくれたな!許さないぞ熊野郎!」
アルルは残ったブレードベアと戦っているようだ。
誰が婚約者だ。
「バラシはん!気をしっかり持つんや!傷は浅いで!」
栓を抜く音が聞こえ、背中がさすられる感覚とともに痛みが引いていく。
スピネルがポーションを使ってくれたようだ。
「あーーー、ありがとう死ぬかと思った。」
痛みは引いたが起き上がれない。
子供も心配そうにのぞき込んでいる
「バラシのあんちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫だから・・・早く逃げるんだ」
顔だけ動かして子供を促す
「
廃材のいろんな魔物の皮を紐状にしてより合わせて作ったベストだ。
切り裂かれてボロボロになってしまったが一撃だけ耐えてくれたようだ。
「備えあればってやつだな」
スピネルの手を借りて起き上がると熊の断末魔が響く。
アルルが残りの1頭にとどめを刺すところだった。
出張所で歓声が上がる。
「バラシ!大丈夫?」
「二人のおかげでなんとかね。ありがとう。」
「いやぁ、未来の旦那様を助けるのは当然というかー」
その話まだ続いてるの?
「あんさん、さっきっからちょいちょい聞き捨てならない事言いよるけど、なんなん?勝手にバラシの婚約者とか認めへんで!」
スピネルがアルルに詰め寄る
「あたしは勇者アルル。先月バラシにプロポーズされたの!」
「いやしてないからな?」
即座に反論しないと面倒だ。
「せやろせやろ。バラシの相方はウチって決まっとるさかいな。」
スピネルがフフンと胸を張るとアルルとスピネルが睨み合い熱い火花を飛ばしながら疎遠だったくせにとか本名も知らんくせにとか言いあいをしている。
「口喧嘩は他の熊どもをなんとかしてからな。アルル、倒した熊は回収しておいてくれ。」
しょうがないなーと答えてアルルは熊の死体を
残るブレードベアはあと2体。
獣人ペアの方はどうだろう。
獣人ペアの方は二刀流のベインが前衛を張ってブレードベアの攻撃をいなし、隙をついて銀髪のお嬢様アッシュが攻撃するスタイルのようだ。
お。アッシュが距離を取った。大技か?
「はあああぁぁ!」
気合の入ったベインの剣を振るう速度が上がる。注意を引き付けているのだろう。
「フレイムピラー!!」
アッシュの声とともにブレードベアの足元から炎の柱が吹き上がって胴を貫き
ブレードベアはうめき声を上げその場に崩れ落ち動かなくなった。
実力はあると思っていたが鮮やかな手並みだ。
残るブレードベアは1体。対するは黒い皮鎧の3人組だ。
3人がかりとはいえ体長4mほどはある大型の個体。
油断はできない。
「そういえばあの3人はスピネルの知り合いだよな。どういう人達なんだ?」
「あん人らはウチが世話になっとる貴族様の兵士や。もともと3人で組んで冒険者みたいに魔物と戦ってたらしいんで今回選ばれたんや。」
「腕は間違いないって事か。」
貴族だから多少なりとも私兵がいるのだろう。冒険者を雇っていても不思議ではない。
さて、彼らは最後の1体をどう仕留めるかな?
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