第15話 ハミルトン家
「錬金術師様ですか。私はこの村の村長をやっておりますアーノルドと言います。何もない村ですがゆっくりしていってください。今はフリーでいらっしゃるのですか?」
村長が挨拶する。アーノルドって名前だったのか。
いつも『村長』で問題なかったからなぁ。
「ご丁寧にどうも。今はフリーやなくてハミルトン家にお世話になっとります。」
ハミルトン家?聞かない名前だな。
村長の眉がピクっと動いたところを見ると知っているのか、村長。
「そうですか。立ち話もなんですからあちらで少しお話できませんか?」
村長はスピネルに促す
「ええですよ。じゃあバラシまた後でなー」
村長とスピネルは休憩テントの方へ向かっていった
にわかに森の方が騒がしくなった。冒険者が出てきたかな?
「ミセリ、冒険者が出てきたみたいだから迎えに行ってくるわ」
「あ、あたしもいく!」
荷馬車に乗り込み手綱を繰る
冒険者が森の外まで獲物を引っ張ってきたら手が空いてる人が荷馬車で迎えに行って、獲物と冒険者を乗せて出張所まで戻る手筈だ。
荷馬車は村の共用のものを借りてある。
非常時の負傷者の搬送や非戦闘員の避難にも使う。
「ねえバラシ、ハミルトン家って知ってた?」
馬車に揺られながらミセリが訪ねる
「いや、聞いたことないな。よっぽど小さい貴族か、変な所に住んでいる貴族か。」
研究者というものは多かれ少なかれマッドだ。
そんな研究者を受け入れるのだから変わり者の貴族である可能性は結構高いと思う。
「でも村長は聞いたことあるような雰囲気だったな」
「村長が知ってるなら大丈夫かしらね。あたし達には関係ないし」
そうだな・・・と返事しながら馬車を進める。
聞いたことない貴族、その貴族に繋がりがある冒険者とスピネル、場違いな獣人。
怪しさだけで言ったら抜群に怪しい。
問題は怪しい人リストに村長が入りそうな点だろうか。
何か邪な目的があるようには感じないがモヤモヤする。
モヤモヤしている内に森の入り口に到着。村の狩人達が待っていた。
「ミセリちゃんにバラシ、お迎えありがとさん!」
足元には1.5mぐらいの小ぶりなアングリーボアとファンガスラビットが数匹横たわっている。
「狩猟祭第1号の獲物ですよ。おめでとうございます!早速乗せましょう」
ミセリは上機嫌だ。俺も馬車を降り、全員でアングリーボアを荷台に乗せ、
狩人たちも荷台に上がったのを確認して出張所に向けて馬車をUターンさせる。
「いやーさすが地元ですね。仕事が早い。」
御者台から狩人たちに声をかける
「だろう?ちょっと小ぶりだが地元のメンツに賭けてよそ者に先を越されるわけにはいかないからな!」「数日前から仕込み入れてた甲斐があったってもんだ。」
狩人たちは得意げに笑う
なんでも数日前からアングリーボアが好むキノコや傷んだ野菜などを森の浅いところにばら撒いておいて、その周辺に移動してきていたアングリーボアを仕留めたという事らしい。さすが狩人。
戻ったら解体部の出番だな。
準備運動にちょうどいい。
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