《 八月十六日 》 4
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八月十六日 午後四時十五分
アパートの近くの、止められるいくつかのスペースで待機をはじめた。
水月巡査から電話連絡がはいった
「いま、坂口浩介がアパートの部屋に戻りました。いつもなら、このあとは出かけることはありません。」
と、伝えた。
「これから、アパートの前に集合する。」
と、田辺警部は、捜査員に無線で連絡をした。
同日 午後四時三十分
13人の捜査員が、アパートの前に集合した。
永井巡査と藤田巡査、そして前谷巡査部長に、ベランダ側に回って逃走に備えるように指示をして、静かに坂口浩介の部屋の103号室の前まで行った。
田辺警部は、部屋のチャイムを鳴らした。
「はい。」
と返事が、あった。
「警察の者です。定期巡回に来ました。」
と、田辺警部は、言った。
「定期巡回ってなんですか?」
「巡回連絡カードの確認です。」
「わかったよ。」
と言って、坂口浩介がドアを開けた。
田辺警部は、警察手帳を提示してから、捜索差押許可状を坂口浩介に見せて説明をはじめた。
坂口浩介は怪訝な顔をしていたが、捜索差押許可状の提示に、静かに田辺警部の話を聞こうとしていた
「七月二十日に、横浜市瀬谷区の県道で、不正に入手したと思われるナンバープレートを付けて坂口さんが所有する自家用車を運転していましたね。ナンバープレートの捜索とその時に使用した自家用車の差し押さえをします。」
と、田辺警部は、伝えた。
「家の中に、はいります。」
と言って、捜査員が坂口浩介の部屋にはいって、捜索をはじめた。
時間は、午後四時三十八分だった
「駐車場に止まっている自家用車の鍵はどこですか?」
と、田辺警部は、聞いた。
坂口浩介は、指で指した。
そこにあった鍵を、鑑識課課長の山辺警部に渡した。受け取った山辺警部は、自家用車の捜索に鑑識の三人と向かった
あらためて、田辺警部は、坂口浩介に証拠となる写真を見せて説明をした
「この写真の運転席に座ってハンドルを握っているのは、坂口さんに間違いはないですね。」
「そうですね。」
と、答えた。
「この写真の車は、坂口さんの自家用車である、チェスターに間違いないですね。」
「そうですね。」
「そして車についている、八王子501 し 633のナンバープレートはどこで入手したんですか。それを探しにきました。」
と、田辺警部は、聞いた。
その質問を聞いた捜査員は、一斉に探しはじめた。
坂口は、こう答えた
「ナンバープレートは、押し入れの天袋に新聞紙に包んで置いてありますよ。」
田辺警部は
「四セット分あるのかね。」
「あぁ、置いてあるよ。」
と、答えた。
近くにいた麻生警部補が、椅子を使って天袋を覗いた
「新聞紙で、包まれたものが、四つありました。」
と、言って、天袋から下ろした。
中身を確認したら、犯行時に使用されたナンバープレートの四つに間違いがなかった。
田辺警部は、次にこう質問した
「いま、駐車場に置いてあるチェスターに、ここの四セットのナンバープレートつけて運転しましたね。」
「しましたよ。」
「どこを運転しましたか?」
「どこ?」
「そうです。一セットずつ確認しましょうか。」
「・・・」
坂口は、黙っていた。
田辺警部は、つづけた
「まず多摩ナンバーの、多摩500 お 1523は、チェスターにつけて、どこを走りましたか?」
「・・・」
間髪入れずに
「品川500 し 8574 と、 川崎500 ん 5365 は、どこを走りましたか?」
と、坂口に、聞いた。
「・・・」
田辺警部は
「まぁー、いいでしょ。ナンバープレートの不正入手と不正使用ということで、逮捕状が発行されています。坂口浩介さん逮捕状を執行します。両手を出してください。」
新城巡査部長が
坂口浩介の腕に手錠を掛けた。
時間は、午後五時十二分だった
田辺警部は、坂口に聞いた
「木箱は、どこにある?」
「木箱?そんなもんは、ない。」
「もう、バレているんだよ。正直に答えなよ。」
「ない。知らない。」
「どこにあるんだ。」
「・・・」
「まぁいい。とことん探すよ。」
木箱の捜索を開始した。
その時、坂口が口を開いた
「今日は、ナンバープレートの捜索で、この家にはいった。だったら、木箱は関係ないだろ。」
田辺警部は、言った
「八月十二日に、相模川に架かる高田橋の袂で、木箱を出してチェスターのドアミラーのカバーを外して、何かを装着していたよな。証拠となる映像も撮ってあるぞ。」
「・・・」
「ダンマリはいけないよ。でもさ、さっきも話をした通り、ナンバープレートをつけていたチェスターも差し押さえの対象になっているんだよ。いま、うちの鑑識課が徹底的に調べているんだよ。ドアミラー周辺も含めてね。」
同日 午後五時三十八分
家宅捜索がはじまって、一時間。
鑑識課の山辺警部が、田辺警部のもとに戻ってきた。チェスターのドアミラーについての報告だった。
山辺警部は、坂口浩介にも聞こえるように話をした
「チェスターのドアミラーの両方に、直径約10mmの穴が開いた箱が付いていましたファイバースコープで穴の中を確認しました。銃身らしいものが確認されました、そして線状が残る溝が彫ってあるのが確認できました。その奥には、弾頭らしき尖ったものが見られましたが。突然飛び出してくる可能性もありますので、署に戻って確認をします。ここで分解して、一般人に被害を与えると大変な事になりますので、押収します。」
と、伝えた。
この報告を聞いていた坂口浩介の顔色が、変わっていた。
田辺警部は、すかさず
「もし、銃弾などが見つかったら、銃刀法違反での逮捕もありうるから、覚悟してね。」
と、言った。
そして、あらためて木箱の存在を聞いた。
坂口浩介は、観念したように
「木箱は、風呂場の点検口の中にあるよ。」
と、言った。
大和南署の前谷巡査部長が、脚立を使用して、点検口の蓋を開けた。
そこには、供述通り木箱がビニール袋にはいっていた。
田辺警部は、坂口の前に木箱を置いて
「開けるよ。いいね。」
と、言った。
木箱の中に、はいっていたものを、県警本部鑑識課課長の山辺警部に、現物を確認してもらった
弾の大きさ 22口径 5.56mm
弾の数 3発
と、確認した
そして、外見と大きさから事件に使われたものと同じと判断した。
田辺警部は、坂口浩介に質問をした
「十三日から十五日まで群馬に行った際、実家に寄ったけど、何か置いてきたものはあるのか?」
「特にない。」
「本当か。」
「あぁー、これ以上隠しても、仕方がないだろ。」
と、坂口浩介は、答えた。
「じゃー、署に行こうか。」
と、田辺警部は、坂口浩介に言った。
午後七時三十分を過ぎていた
田辺警部は、実家に捜索に行っている星野警部に電話で連絡した
「坂口の供述では、実家には犯行に使用したもので置いたものはないそうです。ですので、ケーラだけ押収してきてください。」
と、伝えた。
同日 午後八時三十五分
大和北署に、坂口浩介を連行してきた。
明日から、取り調べを行うことを本人に知らせて、留置場に向かわせた
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