《 執念の捜査 》 1・2

                1


八月六日 午前九時


 大和北署の鑑識班部屋に入室した神奈川県警鑑識課課長の山辺警部は、四件目に起きた相模原中央署から来た鑑識班の二人を含めた、十人の精鋭部隊に、あらためて指示をした

「昨日の、捜査会議にもあったように、犯人が運転をする軽自動車が、一番の鍵となる。この軽自動車が判れば、犯人までたどり着けることになる。防犯カメラの映像から、あらためて自動車の特徴を割り出す。」




 同じくして、各所轄に戻った捜査員は、署内での打ち合わせ後、管内にあるサバイバルゲームが出来るフィールドやお店を探しに出かけた。




               2


 八月七日 午前九時


 大和北署の合同捜査本部に、各捜査員と鑑識班が集合した。

管内で捜索をした、サバイバルゲームが出来るフィールドと、お店の情報と防犯カメラ映像から割り出した軽自動車の情報を報告した。



 神奈川県警捜査第一課10係係長の田辺警部は、各捜査員に聞いた。



 先陣を切って、箱根署の木下警部補が、報告しはじめた

「箱根で、サバイバルゲームが出来る場所と、お店を確認しました。確認の結果、フィールドが一ヶ所ありました。


『 シューティングターゲット箱根 』


元箱根にある、サバイバルゲーム専用のフィールドでした。自然を活かして、高低差のある起伏のとんだフィールドでした。個人から団体まで、20団体以上の登録があり、500人以上の会員が、サバイバルゲーム愛好者が、楽しんでいるということです。」


 田辺警部は

「500人以上が楽しんでいるのか。」

「そうです。平日もそれなりに予約があるそうで、土日には、団体対抗戦も催されるそうです。」


「その中に、今回の犯人がいる可能性が、あるということか。」

「その可能性が高いです。」

 と、木下警部補は、報告した。




 つづいて、瀬谷北署の品川巡査部長が、報告をした

「瀬谷北署管内と横浜市瀬谷区となりの旭区にあるモデルガンを販売している店を廻ってみましたが、量販店しか見つかっておらず、特化したお店を発見することはできませんでした。」


 田辺警部は、こう質問した

「フィールドは、無かったということですか?」

「はい。そういうフィールドもありませんでした。」

 と、品川巡査部長は、報告した。




 つづいて、大和北署の浅倉警部補が、報告をした

「大和市内を確認しましたら、一ヶ所モデルガンやサバイバルゲーム用の用品を扱う専門店がありました。会員制ではないのですが。お店専用の会員カードがあり、約1000人の会員がいるそうです。」


 田辺警部は

「その中に常連客というのは、どの位いるのだろうか?」

「はい。約50人だそうです。ただ、常連と言っても、毎週毎週来る客は、そうそういないそうです。どこかでイベントがあった時に、部材や用品を買いに来る程度だそうです。」


「それじゃ、客と店員が仲良しになることはないのか?」

「それはそうでもないそうです。専門分野に客も店員も精通しているので、色々な話をするそうです。」


「今回の事件についても、話題になっているのだろうか。」

「はい。今回の事件は、お客との間でも話題になっているそうです。誰が犯人なんだろうか。という犯人探しみたいなことを考えている、お客もいるという話でした。」


「で、誰かという人は見つけたのですか?」

 と、田辺警部は、聞いた。


「いえ、そこまでは店員にも解からないそうです。店員の話だと、実際に改造をする場合、こういうお店では、部品は揃わないそうです。違法になるものは売らない。そういう危険なものを売って、犯罪を起こされたら、お店の信用がなくなるということでした。ただ、ネットでは売っている可能性は高いという話でした。」

 と、浅倉警部補は、報告した。




 つづいて、相模原中央署の池辺警部補が、報告をした

「相模原市内には、サバイバルゲームを楽しめる施設が一ヶ所と、専門店ではないのですが、モデルガンやサバイバルゲームの用品が売っているお店がありました。」


 田辺警部は、こう聞いた

「サバイバルゲームを楽しめる施設とはなんですか?」

「はい。遊園地の一部をゲーム用のフィールドに改造した場所を提供しています。特に会員制度もなく。団体のみに場所を提供しているそうです。」


「個人には、貸していない。」

「はい。個人には貸していません。管理の問題で、団体のみに貸し出しをしているそうです。」


「その団体名簿は、ありましたか?」

「はい。借りてきました。いままで利用した、団体の代表者の連絡先が記載されている名簿のみです。」


「団体の会員の名簿は、ないのですか?」

「はい。そこまでは、管理していないそうです。その辺は、代表者に任せているそうです。」


 田辺警部は

「それから、販売店についてはどうでしたか?」

「はい。この販売店は、モデルガンやその他の用品を置いてありますが。鉄道模型やラジコン・プラモデル等の総合的なショップとなっています。会員数も約3000人だそうです。ですので、個々のお客との関係は希薄だと、お店側も認めています。」


「それでは、今回の事件についても店員同士は、話をしていても、お客とは話をする仲ではなさそうだね。」

「そうです。お客と事件の話をした覚えはないそうです。」

 と、池辺警部補は、報告した。




 つづいて、本部鑑識課の下田巡査部長は、防犯カメラの映像から割り出した、軽自動車の情報を、報告した

「8月5日に報告をしました件で訂正します。軽自動車の本体色を、黒色と伝えましたが、誤りがありました。」

 と、まず、訂正をした。

 つづけて

「あらためて、防犯カメラの映像から判断した特徴は、本体色は紺色、タイヤのホイールは純正のもので、鉄のホイールにカバーが付いているものになります。フロントグリルはメッキタイプになっています。その他の特徴は、ドアミラーが改造されている可能性があります。カタログと実車と映像を確認しまして、ドアミラーに加工された箱が映像から見受けられました。」

 と、下田巡査部長は、伝えた。


 田辺警部は、こう聞いた

「改造された可能性があるということですか?」

「ミラーの部分は改造されています。」

 と、下田巡査部長は、答えた。



 田辺警部は、つづけて質問した

「車種やメーカーはどうなっていますか?」


 下田巡査部長は、こう報告した

「メーカーと車種は、A社のチェスター グレードS。

ローマ字では、Chesterになります。2018年に発売された軽自動車です。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県で販売された台数は、約2000台です。ただし、特徴に照らし合わせると約500台になります。」


 田辺警部は、こう統括した

「一都三県に、約500台の該当車両がある。一台一台、現物を確認して廻ることになる。ただ、犯行が行われた場所から判断すると東京都・埼玉県・千葉県の田舎方面は該当から外す。都市部に車庫を持っている該当車両を捜査対象とする。」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る