1964年のオヤジバンド 「僕たちのいた夏」
結城 てつや
第1話 イントロ
「歌は世に連れ。世は歌に連れ」と言う決まり文句がある。
ある時代を振り返る時、人はその時代の歌を思い出す。
歌は時代を映す鏡。
歌と世は、まるで月と地球が引かれあうように微妙な力で時代を創り上げてきた。
歌に欠かせない楽器は共鳴と言うバランスで成り立っている。
ギターは弦とボディー、ドラムはヘッドとシェルが共鳴する事によって音を創り出している。
時代も社会というシステムと人々の感情が共鳴する事によって創られていく。
しかし時として楽器は、異常な共鳴をする事がある。
それを不協和音と言う。
この音が鳴ると人の注意が喚起される。
駅で使われる発車のメロディー音に多い。
人々に注意が促され、普段と違う行動のきっかけとなる。
歌と世の間にも不協和音が存在するとしたらどうだろう。
もしかして、それは微妙に保たれている時のバランスを崩し、不思議な事件を引き起こすきっかけになるかも知れない。
譜面の中にダルセーニョが出てきたらセーニョに戻り、もう一度同じ五線譜を繰り返し演奏して行く……。
そんな事が時の中でも起きることがあるかも知れない。
その旋律は、どこにでもある日常の中にあり、ただ人は気づかずその前を通り過ぎて行く。
歌と世に不協和音が生まれた時、譜面を彷徨う音符の様に人は時の旅人となる。
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