第34話 宮下真奈美の推理
宇宙の意思、宇宙の声、愚かな人類を導く超人類。。
・・・思えばこの事件は御影さんも言っていた通り、最初からあまりにも子供じみていた。
真奈美はそう考えていた。
それもそのはずである。
すべては子供が考えた計画だったからだ。
コスモエナジー救世会の会員たちが襲ってきたときも、東心悟が御影探偵事務所を訪ねてきたときも。
東心悟が能力を発動したと思える時には、いつも傍には学が居た。
思考するだけで殺人を実行するサイキック・東心悟の存在・・・それこそがこの事件における最大のミスリードだったのだ。
東心悟は学の操り人形に過ぎなかった。
もしかすると東心悟自身は、自分をサイキックだと信じていたかもしれない。
思考と行動を操られ、心を空っぽにされながらも、自らの力に酔っていたのだろう。
東心悟は命を失いそうになった瞬間、心で学の名を呼んだ。
彼がときおり見せた、学への父としての愛情は本物だったに違いない。
しかし、学には父親への愛情は欠片ほども無い。
学は御影の言う通りサイコパスだ。
目的のためなら、自分に愛情を注いでくれている父親を殺すことすらためらわない。
父を殺し、その後を継ぎ、超人類として愚かな人類を導く存在として君臨するためには。
学こそがサイキックではないか?そう思い至ったとき、真奈美はそれが間違いであることを祈った。
しかし真奈美は見たのだ。
御影探偵事務所の穂積恵子のコンピューターに保存されていた、防犯カメラの映像。
最初に見逃していたのは画面上に移っている子供の姿だったのだ。
拡大し解像度を上げた画像には、東心学の姿がはっきりと映っていた。
今、目の前にいるこの不安げに見える少年は怪物だ!
人の痛みも、命すらもなんとも思っていない、危険な殺人鬼なのだ。
無邪気な子供の姿に惑わされてはいけない。
・・・私がやらなければ。。
これ以上、被害者を出すわけにはいかない。
真奈美は精神を集中し、学の頭部を透視しようと凝視した。
「お姉さん、どうしたの・・なんか怖いよ。。」
目を真っ赤に泣きはらした学が心細そうに言った。
この一言で、真奈美の精神の集中が切れた。
次の瞬間、真奈美の胸に締め付けるような痛みが襲って来た。
・・・ダメだ。子供の姿に惑わされちゃ・・これは真剣勝負なんだ。目の前に居るのは恐ろしい怪物。人の命を奪うことにためらいなど持たない。。
痛みに耐えながら、透視を試みるが、なかなか精神が集中できない。
・・・やらなきゃ。。もっと集中して。。
そのとき、不思議なことに胸の痛みがすっと消え去った。
「宮下君、やめるんだ!」
真奈美は声のする方を見た。
「・・・御影さん?」
まさしく、その御影純一がステージの袖の階段を、まだふらつく足で登って来た。
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