第6話 超能力少年44年目の再会
田村と真奈美が**署に到着すると、山科警部補が入り口で出迎えていた。
「山科さん、御影君・・・御影純一はどんな様子ですか?」
「危険な男だと聞いていたから警戒していたんだが、いたって大人しく連行されて来たよ。留置所でも大人しくしている」
「そうですか。いったい何の容疑で逮捕したんですか?」
「御影は有名なゴト師だったから、わりと簡単に捕まえられたんだ」
「ゴト師?」
「パチプロの一種だよ。パチンコ台を不正操作して玉を抜く稼業だ。店から何度か通報を受けていたんだが、手口が不明だったので逮捕をためらっていたんだ。今回は無理して逮捕状を取った」
なるほど、どうやら御影純一の能力は健在のようだ・・田村は思った。
「早速ですが、御影純一に会わせていただけますか?」
「もちろんだ。ついてきてくれ」
田村と真奈美は山科に先導されて、署内にある留置所に向かった。
留置所の牢内の片隅に座っている男は、身長175cmくらい。
やせ形で安っぽいグレーのスーツにノーネクタイのワイシャツを着ている。
髪は刈り込まれているが無造作であまり整えられていない。
無精ひげの生えている顔は、なかなかに彫が深く整っていてハンサムといえるだろう。
しかし全体的な印象は、リストラされた元サラリーマンといった風体だ。
「御影純一君か?」
田村が声を掛けると、その男は顔を上げて田村の顔を見て、人懐っこそうな笑みを浮かべて応えた。
「おお、田村貴仁君だ・・・懐かしいな」
御影純一は田村と同年齢のはずだが、どう見ても10歳以上は若く見える。
「こんなに歳を取ったのに、よく私が分かったな」
「分かるさ。この世ではめったに出会えない、数少ない『同類』だからな。一目で分かるよ」
次に御影は真奈美の方に目を向けた。
「これは驚いた。そちらのお嬢さんも『同類』なのか。複数人の『同類』と対面するなんて、T大学の実験以来だな・・」
急に話題を向けられた真奈美は驚いて、御影の顔を見つめた。
御影の思考は、田村や東心悟と同じくまったく読めない。御影は確かに『同類』らしい。
「こんなところで鉄格子越しに話すのもなんだから、場所を変えよう。山科さん、いいでしょうね?」
「田村さんが言うのならいいだろう。しかし御影純一、お前が聞いているとおりの男なら、この牢屋を自力で抜け出すことも出来たんじゃないのか?」
御影はまた人懐っこそうな笑みを浮かべた。
「もちろんやろうと思えば出来ますよ。でもあとあと面倒はご免ですからね。それにどうせすぐに釈放されると思ってたから」
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