ニーナ1-8

 シアちゃんたちが寝付いた事を確認した俺は外へ出た。


 空を見ると星で埋め尽くされていた。


「綺麗だ..」


 星を見るのはいつぶりだろう。


 俺は野原に寝転んだ。


 時折吹く風と、虫の鳴き声。


 死ななかったら、こういう時間は永遠に来なかったのかもな。


「こんばんは」


 起き上がり、振り返ると、昼に会った女の子の姿があった。


「やぁ。もしかして、待ってた?」

「そうですね。1時間ほど..」


 彼女は俺の隣に座った。


「....そっか。ごめんね」

「いえ、私は好きで待ってた訳ですし。それに......」

「それに?」


 恥ずかしそうにもじもじとしだした彼女だったが。


「それに、さんとお話したかったので」

「..ねぇ、君、名前は?」

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はカリンと言います」


 カリンちゃんか。改めて見ると可愛らしい子だな。

 なんと言うか、シアちゃんたちとは少し違う雰囲気というか。


「それでカリンちゃんはどうして俺を知っているの?」

「教えたら、私の恋人になってくれます?」

「じゃあ、やめとく」

「ど、どうしてですか!もっと考えてくださいよ!」


 考えてって言われても....


「俺はカリンちゃんの事を知らない。それなのにいきなり恋人は無理だよ」

「なら、私の事をたくさん知ってくれたらいいんですか?」


「そ、そういう事じゃなくて..」

「....やっぱり、年上が好みなんですか?」


 そう言ってカリンちゃんは少し涙を浮かべた。


「胸が大きい方、がいいですか?」


 胸を触り、確認するカリンちゃん。


「そ、そんな事ないよ。俺はどっちも好きだよ」


 何言ってんだ、俺は!こんなの何の慰めにもならないだろ。


「本当に、そう思うなら。英二さん。私の胸触って、ください..」

「えっ?」


 今なんて?

 胸を触る?

 そんな事したら、犯罪..


「大丈夫ですよ。この世界には犯罪なんて概念は存在しません。だから、安心して私の胸を......」


 それなら..

 嫌、ダメだ。

 例え、犯罪の概念がなくても、俺は絶対にそんな事はしない!


「..ごめん。カリンちゃん。俺には、出来ないよ」

「そうですか。やっぱり......素敵です」


「素敵?」

「はい。誰に対しても優しく接する事が出来る、貴方に。私は惹かれたんです」


「..カリンちゃん」


 誰に対しても優しく接する。そんな事ないよ。

 だって俺は..


「俺は、君の思ってる様な人間じゃない」

「どういう事、ですか?」


 俺は立ち上がり、家へ戻る事にした。


「それじゃあ、俺は戻るよ。おやすみ、カリンちゃん」

「ま、待って!英二さん」


 カリンも立ち上がり、俺の袖を掴んだ。


「私は、どんな英二さんでも受け止めます。だから..」

「ありがとう。でも、今日は」

「分かりました。では、

「うん。また明日」


 今度こそ俺は家へと戻っていた。


「英二さ──ん!私、昼のキス初めてだったんですよ!だから、ちゃーんと責任とってくださいね!」


 俺は振り返らずに戻っていた。




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