2-22 スクロール狂騒曲
コストと言うのは初めて聞いた。
俺はちびっ子魔法使いエマに確認する。
「昨晩、スクロール屋のパベルさんに『闇魔法を取得した魔法使いは、四属性魔法を取得出来ない』と言われたのだけれど、そのコストが関係あるの?」
「そうなんだよ! 魔法使いはコスト3まで、魔法を取得出来るんだよ。闇魔法はコスト3なんだよ! だからエマは、闇魔法以外は使えないんだよ!」
「そこ、もうちょっと詳しく……」
ちびっ子魔法使いエマとスクロール屋店主のパベルさんに『コスト』について説明をしてもらう。
初級職の魔法使いはコスト3まで、属性魔法を取得出来るそうだ。
初級火魔法:コスト1
初級水魔法:コスト1
初級風魔法:コスト1
初級土魔法:コスト1
なのでスクロールさえ手に入れば、『火魔法+水魔法+風魔法』のように最大で三属性の魔法を取得出来る。
しかし例外もある。
初級聖属性魔法:コスト3
初級闇属性魔法:コスト3
怪我を癒しHPを回復させる聖魔法はコスト3。
エマが取得した闇魔法もコスト3だ。
初級魔法使いでは、これ以上魔法の属性を増やす事は出来ない。
闇属性魔法のバリエーションを増やしていくしかないそうだ。
「なるほど……そう言う事か……えっと、話は変わるけど中級風魔法のコストは?」
スクロール屋店主のパベルさんがすぐに答えた。
「中級風魔法はコスト3になります」
それだと姫様アリーのコスト計算が合わなくなる。
アリーは、中級風魔法と初級の火魔法、水魔法を取得している。
3+1+1=5
コストが5になってしまう。
「あれ? それじゃあアリーはコストオーバーしていないか?」
「わらわはエルフ族じゃ。種族特性で風属性魔法は初級だろうが中級だろうがコストは1なのじゃ」
「ずっるいんだよ!」
なるほど、種族特性……。
風魔法はエルフと相性が良いと言う事か……。
とにかく魔法コストの件は了解した。
「じゃあ、パベルさん。エマに用意したスクロールをお願いします」
「はい。エマさんにご用意しましたのは、こちらのスクロールです」
「わあ! 金色なんだよ!」
エマに用意したスクロールは、金スクロールを二つだ。
「まず右の金スクロールは、スキル『必中』です! これは必ず攻撃や魔法が相手に着弾するスキルです。ジョブに関係なく取得できるスキルで、かつ効果が高いので非常に人気が高いです」
「凄い良いスキルなんだよ! エマが貰って良いの?」
「ああ。エマの為に用意したんだ」
このスキル『必中』をエマに取得させるかどうか……正直、迷った。
弓士の俺が取得しても良いし、魔法使いで魔法のバリエーションが多い姫様アリーが取得しても良い。
ただ……今回は……装備やスクロールで長身のレイアとネコ獣人のカレンをかなり優遇した感じだ。
姫様アリーにも服と装備と金スクロールに銀スクロール……。
ちびっ子魔法使いエマは、家族が用意した服や装備を持っている。
さらに、おばあちゃんから貰ったスクロールで既に闇魔法を取得している。
エマには、あまり支給する必要がないのだ。
エマをないがしろにしている訳では決してないのだが……。
ちょっとエマへ冷たくないか?
そこでスクロール支給で他のメンバーとのバランスを取る事にした。
スキル『必中』は、金スクロールで値段は高いが、年に数本ドロップがあるらしいので、また手に入れるチャンスはある。
「それから左の金スクロールはスキル『先制』です。アジリティ……つまり素早さが開戦時瞬間的に上昇するので、敵より早く『先制攻撃』が可能になります。こちらもジョブに関わらず取得出来るスキルですので人気が高いスキルですよ」
「やったー!」
このスキル『先制』も『必中』と同じで迷ったが、同じ理由でエマに取得させる。
金スクロール二つなら、他のメンバーとのバランスもとれるだろう。
■レイアの分■
銅スクロール 『パワースラッシュ』
銀スクロール 『大車輪』
■カレンの分■
銅スクロール 『罠探知』『罠解除』『投擲術』
銀スクロール 『罠設置』『お宝探知』
■アリーの分■
銀スクロール 『魔力調整』
金スクロール 『魔力軽減』
■エマの分■
金スクロール 『必中』『先制』
一応、ファイトプランもあって……。
エマの闇魔法『バインド』は、敵の動きを封じ足止めする魔法だ。
スキルが『先制』かつ『必中』なら、開戦一発目でバインドが敵に作用する。
そこへ俺の矢を『パワーショット』で打ち込めば……。
強い魔物対策として悪くない。
何より……ノーコンピッチャーみたいな魔法発動で『バインド』で身動き出来なくされてしまのは……もうご免だ……。
「じゃあ、全員にスクロールが行き渡ったね? それぞれスクロールを開いてスキルを取得して下さい」
俺の掛け声でみんながスクロールを開き始めた。
スクロールが光り、光が体内に取り込まれて行く。
これで……後はみんなのレベルアップだな……。
俺がそんな事を考えているとパベルさんがチョンチョンと俺の肩を突いた。
ヒソヒソ声で話しかけて来る。
『ナオトさん。これが今回のスクロールの代金です』
小さな紙を俺に渡した。
パベルさんが渡して来た紙は、今回購入したスクロールの請求書だった。
銅『パワースラッシュ』 10万ラルク
銅『投擲術』 10万ラルク
銅『罠探知』 20万ラルク
銅『罠解除』 20万ラルク
銀『大車輪』 200万ラルク
銀『罠設置』 200万ラルク
銀『お宝探知』300万ラルク
銀『魔力調整』300万ラルク
金『魔力軽減』500万ラルク
金『先制』 500万ラルク
金『必中』 600万ラルク
合計 2660万ラルク
(うおっ……。結構いった……いや? 考えようによっちゃ安いか?)
正直、お金はある。
神のルーレットで稼がせて貰っている。
(短期間で戦力強化が出来るのだから安い……。それにスキル強化なら目立たない……)
武器や防具に金をかけて強化すれば、目立ってしまう。
新人冒険者が装備品にジャブジャブ金をかけていては、ガラの悪い連中に狙われるかもしれないのだ。
(ゲームで言う所のPK……プレイヤーキラー……この世界でもいるかもしれない……)
魔物を倒して金を稼ぐのではなく、自分より弱い冒険者を倒して金や装備品を奪う……。
装備品に金をかければ、そんなヤツラに目を付けられるリスクを負うことになる。
だが、スキルスクロールに金をかけても見た目ではわからない。
変なのに目を付けられるリスクは減る。
(こっちは平和な日本から転生して来たんだ。対人戦闘は極力避けたいな……)
そんな事を考えながら、大金貨26枚と金貨6枚をこっそりとパベルさんに手渡した。
『毎度!』
パベルさんがニンマリと笑った。
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