2-20 フォーメーション編成
――翌朝。
昨日はパーティー強化『U作戦』を考えた。
作戦と言っても、難しい事じゃない。
一つ一つをちゃんとやる。
これに尽きる。
冒険者ギルドのロビーにパーティーメンバー全員が集まった。
長身のレイア、ネコ獣人のカレン、姫様アリー、ちびっ子魔法使いエマ、四人とも表情はスッキリしている。
一晩休んで気持ちを切り替えてきたな。
俺は全員を見回し告げる。
「午前中は色々やる事がある。まず確認だけど、冒険者ギルドにまだ登録していない人はいる?」
「おう! 俺!」
「ニャ!」
長身のレイアとネコ獣人のカレンが手を上げた。
やっぱりな。
レイアとカレンは、田舎から出て来たばかりだから、冒険者登録はまだだと思った。
「じゃあ、最初にレイアとカレンの冒険者登録から済ませよう。費用はこちらで出すから安心して」
「助かるぜ!」
「ニャ! ありがとう!」
初心者向けの緑カウンターで、いつものワーリャさんに登録をお願いする。
「ナオトさん、おはようございます。パーティーメンバー採用出来ましたね」
「ワーリャさんのお陰で良い人が入りました。冒険者登録とジョブ登録をお願います」
パーティー強化U作戦の一つ目。
まずは『キッチリとジョブ登録を行う』だ。
「こっちの背の高いレイアは、戦士で槍を使います。こっちのネコ獣人のカレンは、盗賊でお願いします」
「かしこまりました。スクロールを用意しますね」
俺の言葉を聞いてレイアが不思議そうにしている。
「なあ、ナオト。カレンは剣士じゃないのか?」
「カレンにはジョブ『盗賊』が向いていると思うんだ」
「ニャァ~?」
カレンも首をかしげて不思議そうにしている。
俺はカレンにジョブ『盗賊』を勧める理由を説明した。
昨日のダンジョン探索で、カレンは俺より早く魔物に気が付いた。
俺にはスキル『遠見』がある。
スキルの力で普通の冒険者より遠くが良く見える。
その俺よりも早く魔物に気が付いたと言う事は、カレンの索敵能力は相当高いと言う事だ。
カレンのスキル『ネコミミ』や『ネコ目』『ネコ鼻』の力だろう。
索敵能力が高いなら、スカウト、斥候役、情報収集担当の盗賊は向いている。
加えてカレンのステータスで器用:Cは、『罠解除』など盗賊系のスキル活用に役立つ。
ダンジョンも深い階層に行くと致死性のトラップがあると言う。
罠解除が出来る盗賊はパーティーに加えておきたい。
普段はニャアニャア言っているけれど知力:Fだから、カレンは決してバカじゃない。
優秀なスカウトに育成出来る。
ダンジョン探索では、パーティーに先行して情報を集めてもらうのだ。
俺は昨晩紙に書いた探索時のフォーメーション図をパーティーメンバーに見せた。
盗賊のカレンが先行。
その後を盾役の戦士レイアが進む。
最後尾は横並びで、アリー、エマ、俺だ。
-----------
カ
レ
ア エ 俺
-----------
「ふむ。ナオトの案は良いように思える。賛成じゃな」
姫様アリーが賛成してくれた。
続いて攻撃時のフォーメーション図を見せる。
「攻撃の時はこう言う並び方にしたいんだ」
前列に戦士のレイア。
後列に左からアリー、エマ、俺だ。
カレンは俺のちょと前に入って貰う。
-----------
レ
カ
ア エ 俺
-----------
攻撃においてカレンに期待するのは、『遊撃』だ。
ウチのパーティーでは長身でスキル『再生』があるレイアが前衛を張ってくれる。
しばらく前衛はレイア一人でも大丈夫だ。
むしろ側にカレンがいては、レイアがリーチの長い槍を扱う邪魔になる。
それなら素早さ:Cでスピードのあるカレンは遊撃で良い。
1.5列目に入って、前衛、後衛のフォローと隙を見て敵の背後に回り込む動きを期待したい。
「……と言う事なんだけど、どうかな?」
俺がカレンをジョブ『盗賊』にする理由とパーティーでの動きを説明するとカレンはご満悦だ。
「ニャ! リーダーは良く見てる。そんなに期待されてるなら、ジョブは盗賊にする!」
「よろしく頼む! フォーメーションはどうかな?」
フォーメーションはパーテイー強化U作戦の2つ目だ。
フォーメーションをきっちり決める事で、各自の役割分担とパーティーとしての戦い方を確立させるのが狙いだ。
俺がみんなを見回すと、なぜか長身のレイアがドヤ顔している。
一体どうした?
「レイア、どうだ?」
「俺が一人で前衛か! つまり! それだけ俺が強ええって事だな!」
あ……そこ!
そこがツボなんだ!
どうやらレイアは自分の強さに、こだわりがあるらしい。
そう言えば、『一旗あげる為にこの街に来た』って言ってたな。
ここは上手くおだてて気分良く働いて貰おう。
「そうだ。レイアの強さに期待している。ワントップで大変だけどよろしくな!」
「ワントップ……まかせとけ!」
よしよし。
レイアはこれで良し。
後衛陣はどうだろ?
「アリーは、後列左だけれどどう?」
「ふむ。視界が広く取れるので魔法が打ちやすく思える。わらわが左、ナオトが右なのは、意味があるのかえ?」
「あるよ。一つはアリーと俺は長距離攻撃だから視界が広い方が攻撃範囲が広くなって有利だ。もう一つは、俺は右じゃないと弓が引きにくい」
俺は弓を構えて、動作を見せる。
右手て弓の弦を引っ張るので、右横に人がいると肘が当たってしまうのだ。
昨日はレイアの胸に肘がヒットしてしまった。
あれは……良い物だ……。
「ふむ。なるほど。肘パイ防止と言う訳じゃな」
バレてる!
俺は視線を逸らしたが、冒険者ギルド受付のワーリャさんと目が合った。
ワーリャさんの生暖かい視線が辛いな……。
肘パイから話を変えよう。
「エ……エマはどう?」
「エマは真ん中なんだよ! レイアちゃんの背が高いから前が良く見えないんだよ!」
そこか!
そこは迷ったのだが……。
俺の攻撃手段は弓だ。
スキル『曲射』があるので、前方に背の高いレイアがいても攻撃は出来る。
だが、スキル『曲射』は、スキル『パワーショット』などとの併用が出来ない。
攻撃力が落ちてしまう。
視界が良く、弓を射やすい右端にポジションを取れば、弓の攻撃力を維持出来るし、遠い魔物へ狙撃も出来る。
と言う事で、俺は右端ポジションが確定だ。
次に中級風魔法が使える姫様アリー。
昨日ダンジョンで見た姫様アリーの強力な攻撃魔法は直線で放っていた。
おそらくアリーのあの風魔法は、視界を確保して直線でしか攻撃出来ないだろう。
なので、アリーは後列左端で視界が広くとれるポジション確定だ。
そうすると残りは後列中央になる。
ちびっ子魔法使いエマの魔法は闇魔法で、相手を足止めする『バインド』だ。
初級の闇魔法は『バインド』の様に攻撃を支援する魔法で、敵を直接攻撃する魔法はなかった。
なので、後列中央でお願いしたい。
「……と言う理由なんだ。視界が取れない時は、右か左に少し寄って欲しい」
「わかったんだよ! このフォーメーションでやってみるんだよ!」
理由をきちんと説明したらエマは納得してくれた。
良かった!
受付カウンターのワーリャさんが、長身レイアとネコ獣人カレンにギルドカードを差し出した。
俺のカードと似たデザインの白いカードだ。
「では、こちらがお二人のギルドカードです。それから……レイアさんがこのスクロール。カレンさんがこのスクロールです」
二人はワーリャさんから茶色リボンのスクロールを受け取った。
二人ともスクロールをじっくり観察している。
「ニャ!? これがスクロール? 始めて見た……」
「ああ、俺も初めて見た。なあ、ナオト。これをどうすりゃ良いんだ?」
「リボンをほどいてスクロールを開いてくれ。そうすればジョブが得られるよ」
二人がリボンをほどいて、スクロールを開いた。
スクロールが光り、光の塊が二人の体に吸い込まれた。
「なあ、ナオト。これで……良いのか? 俺の見た目は何も変わって無いけど……」
「ニャ! 変わらないね……本当にジョブが盗賊になったのかな?」
「ああ、心配ない。ワーリャさん、鑑定紙をお願いします」
二人に鑑定紙を使わせるとジョブはしっかり『戦士』と『盗賊』になっていた。
-------------------
◆ステータス◆
名前:レイア
年齢:13才
性別:女
種族:ティターン族
ジョブ:戦士 new!
HP: C-小上昇中 new!
MP: G
パワー:C
持久力:C
素早さ:F
魔力: G
知力: F
器用: F
◆スキル◆
再生
槍術 new!
-------------------
-------------------
◆ステータス◆
名前:カレン
年齢:13才
性別:女
種族:猫人族
ジョブ:盗賊 new!
HP: F
MP: G
パワー:F
持久力:C
素早さ:C-小上昇中 new!
魔力: G
知力: F
器用: C
◆スキル◆
ネコ目
ネコミミ
ネコ鼻
短剣術 new!
-------------------
「おお! 俺のジョブが戦士になってるぜ!」
「ニャ! こんな紙があるんだ!? 初めて見た!」
二人とも田舎から出て来たばかりだからかな?
自分のステータスを見るのは初めてか。
二人ともジョブはついたし、長身のレイアにはスキル『槍術』が、ネコ獣人のカレンにはスキル『短剣術』がついた。
「さあ! じゃあ、次に行くよ! ついて来て!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます