11話 DoG の計画

『苺』について話すにはまず、DoGについて話す必要があるから少し話させてもらうね。


鬼の能力がなぜ存在するのかは未だ不明だけどその能力が遺伝する事はわかってる。


両方が炎の能力を持った親であれば子供も炎の能力を持って生まれてくる。


でも同じ様な能力者同士の結婚は確率的に考えても少ない。


ほとんどの場合は違う能力同士が結婚する。


その時子供の能力は片方の能力かお互いの能力の複合的な能力か全く異なる能力が発言するのは知ってるよね。


DoGは俗に言う『ミュータント』。最後の全く異なる能力が発言すると言うところに目をつけたの。


DoGは自分達の精子と卵子を受精させてたくさんの子供を作る計画を立てたの。


その計画も子供のことを考えていない非人道的な計画だったのだけれどDoGはこれなんかただのおままごとに見えることを考えついたの。


1人の子供を作るのに時間がかかりすぎる上に生まれた子供同士の交配にはさらに時間がかかってしまう。


そこでDoGは生まれたばかりの子供から細胞を取り出してそこから精子と卵子を作り始めたの。


IPS細胞って言うのは少しくらい聞いたことがあると思うけど、それの応用だと思って欲しい。


でも、それでも時間がかかってしまう。


そんな時に生まれたのが『ケルベロス』だった。


彼の能力は『壊れた壁掛け時計(こわれたかべかけどけい)』


右手で触れたものの時間を10倍もしくは10分の1倍にする。


この能力のおかげで今までより10倍早く子供が成長することができるようになった。


そして、同時期に母体無しでの受精卵を成長させる擬似子宮を完成させた。


この2つの出現がDoGの能力の歴史において1番の出来事だと思う。


でも、あいつらはこれで満足をしなかった。


次に考えたのが能力の保存。


『ケルベロス』の能力は確かに強力だけれど、人のものである限りいつかなくなってしまう。


それを恐れたDoGは能力を別の人間への継承ができないかと最初に考えた。


でもそれは不可能だった。


自分の子供に対して全く同じ能力が出現すると言うのは無かった。


そこで考えたのは能力の移植。


でも、人は生まれた時から自分の能力を持っているから人への移植は出来なかった。


そこで人以外の生物への移植をDoGは試みた。


それの第1号が『苺』。


『苺』は初めて人以外で能力が発動した生物ではなく、初めて人から能力を移植された生物なの。


それを5区で保護することになったの。


それの経緯は少し待ってね。


ここで君達はひとつ疑問を覚えると思う。


なぜ私がこれほどまでにDoGについて知っているのか。


それはね、私の父がDoGの構成員だから。


と言ってもスパイなんだけれどね。


DoGの情報をNeCOに教えていた。


DoGにもバレないようにNeCOの情報も教えていた。


そのせいで犠牲になった人も出てきた。


そんな時DoGの人間が私の父がスパイじゃないかと疑ったの。


そしてそれを証明する手立てに使ったのが能力移植計画だった。


私の父は自分の息子を悪魔に捧げた。


そして出来たのが、『苺』。


『苺』が生まれる代わりに私の弟大野 一護(おおの いちご)は消え去った。


私は、DoGに一護を渡したくない。そして、あいつらの計画は完成させてはいけない。


「ちょっと待った。あんたの話を全部信用するってんなら、仮に移植が成功してもそいつを人間につけるのは無理なんじゃねぇのか?」


仮に移植したとしてもその生物が死んでしまっては意味がないしその生物が完璧に人間の言葉を理解できるとも思わない。


「確かにその通りだ。最初この計画は今貢くんが言ったようなことで実行されなかったんだ。でも、ある2人の能力者が生まれた。その2人の能力は…」


『凪(なぎ)』



『模倣(いみていしょん)』


ひとつ目の能力は触れたものの時間を停止させる能力。これを使って移植した生物を永遠に生きたまま保存しようとした。


2つ目の能力は名前の通り。触れた能力を模倣する。


保存した生物に触れて自由にその能力を使うことができるようになると言うわけ。


「ちょっと待て。それだと、根本的な部分が解決してねぇだろうが。結局『模倣』の能力者が死んだら終わりじゃねぇか。」


「その通りだよ。でもそれは大丈夫なんだ。それは何故か?その答えはクローン。今まで、クローンを作ってもオリジナルと同じ能力が発現するとは限らなかった。むしろ、違う場合が多かった。なのにもかかわらず、この模倣の能力者に関して言えば何体作っても同じ能力しか発現しなかった。理由は不明。でも、これによって計画の概要は完成した。」


「まあ、大体は分かった。だが、何故今DoGが『苺』を取りにきたのかがわからない。『電光石火』なんてよくある電気能力じゃねぇのか?」


たしかに犬の雷への耐性のある体は興味深いがわざわざ、取りにくるようなものではない気がする。そこまであの犬が重要だと貢は思えなかった。


「君のその頭の回転の良さは王者くんみたいだね。君の言う通り『苺』の能力には価値なんて全くない。ただ、『苺』がいないとどの様に移植をしたかがわからないから『苺』を盗りに来たんだよ。」


「普通なら移植したやつがいれば過程はわかる。だがそれが出来ないと言うのは死んだか?」


「うん。私の父が殺した。自分の息子を悪魔に捧げたことによって生まれた罪悪感に耐えられなくなって、研究所とその施設全てを破壊した。もちろんすぐにバレて殺されたけどね。でも、父はもう一つあがいていた。それこそが『苺』を逃したということ。見た目はただの犬だからDoGもすぐには分からなかった。でも、暴走期になったことによってバレてしまった。それがさっき起きた事。私の知っている事はこれでほとんど話した。質問はある?」


真希の言葉に対して誰も何も言わなかった。


「私は今から助けに行こうと思う。そこで、一緒に来てくれないか?図々しいのは分かってる。でも、助けたいんだ。」


「13人。昨日から合わせて事故で死んだ人間の数だ。俺たちの街でそこまで人を殺したやつを助けるのはどうも、気乗りしねぇ。」


「うん…」


「だが、それの元凶のDoGを殺すのはやぶさかじゃねぇ。それに、こいつはあんたの私情の少し含まれてるからな。特別ボーナスが出るかも知れん。行ってやるよ。」


「貢…」


「当然私は行きます。憧れの真希さんのためですもん。」


「凪沙…」


「行くなら…明日がいい。闇雲に行っても仕方がない…」


「真二」


「場所は大体わかってまーす。」


「琴…ありがとう。そして、あんた有能だな。」


「キュピーン。」


琴は真顔でそう言った。


「さてと、作戦でも立てますか。」

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