10話 ケルベロス登場!
「本当に大丈夫なのか?」
「何?うちが誇る雷使いを信頼できないっていうの?」
「そういうことじゃねんだがよ…」
実際の所貢は信頼はしていない。
何故なら貢はこの2人の事どころか名前さえ知らない。
あの2人はずっといるのだが言葉を一切話さない。真二や琴もあまり話さないのだが、この2人とは違う気がする。
そもそも琴は能力的に集中しなければいけないから話さないだけで、意外とよく喋る方だったりする。
顔も仮面をつけていて見ていない。
そんな2人をただ信頼しろという方が難しい。
「まあ、どうせ信頼なんかしてないんだろうけど。でも、今回の作戦だけは信用してほしい。誰でもない、私を。」
「俺は信頼や信用でするんじゃねぇ。仕事だからするんだ。俺はこの世で納豆と減給が大嫌いなんだよ。」
「そっか…ありがとう。」
「真希さーん。私って何すればいいんでしたっけ?」
「なんで覚えてねんだよテメェーは!ったく。減給にすんぞ!」
そう言って貢は自分の持ち場の方へ行った。
「凪沙ちゃんの仕事は苺を閉じ込める事。重要な役割だから期待してるよ。」
「はい!」
『真希さん。準備整いました。決行しますか?』
「うん。10分後に決行する。通達お願いね。」
『はーい。』
〜
「じゃあ、電力充電開始。」
5区の2人が真希さんの持ってきた電力増幅放射装置に充電を開始する。
辺りはまるで時間が止まったのではないかと錯覚するほどに静まり返っていた。
それは誰も緊張しているわけでも、充電時間中が暇だからではない。
琴の集中を乱さないようにする為である。
今琴は自分の脳細胞のほとんどを、それどころか全身の細胞を右腕に集中させていた。
誰が言ったわけでもなく誰もが声はもちろん全ての音を出すことが許されないと全身で感じた。
息さえ出来ない。
心臓の鼓動や瞬き。
全ての音が何倍にもなって聴こえてきやがった。
耳鳴りがひどい。
目眩もしてきた。
「「充電完了しました。」」
初めて聞いた彼らの声は更に俺の心臓を苦しめる。
「発射3秒前。2・1・0放射!」
真希の声で放射口から電気が目の前の槍の様なものに放射される。
そしてその先端から少し雷が漏れている。
装置を起動させてから約30秒後目の前が少し光った。
そしてそれを琴は見逃さなかった。
『三重音綿(さんじゅうぼいすくっしょん)』
『短小』
『童貞』
『死ね』
目の前からの高速の弾丸に対して琴は三重の『音綿』を使いスピードを落とす。
今回の作戦で琴のこれが失敗すると全て失敗となる。
通常の『音綿』でも琴には負担がかかる。
それを3個同時にというのはものすごい集中力を必要とする。
そしてその集中力は雷をも止める緩衝材となる。
と言うか、琴は短小童貞に恨みでもあるのか?
「ナイス琴!次は私!」
『水牢獄』
雷でおびき寄せて音で止める、そして水で閉じ込める。そして、眠らせる。
これが本来の手はずだった。
そして音で止めるところまでは完璧だった。
決して凪沙がミスをしたわけではない。
だれのミスでも無い。
ただ、凪沙の『水牢獄』を壊し雷を纏う犬を右腕一本で捕まえた男が現れただけのことだった。
「つーかまえた。」
「だれだっ?」
真二のその叫びに男は答える。
「僕?僕はそうだな。『ケルベロス』とでも名乗っておこうかな?」
「『ケルベロス』だと?」
「そう。『ケルベロス』。地獄の番犬。」
『点火』
「お前、DoGだなぁ!」
貢は左手の指輪を見た瞬間に飛び出し『点火』を打ち込もうとしていた。
その一撃は男の死角を完全についていた。
避ける事は不可能だと貢は思っていた。
実際避けられなかった。
ただ、腰を捻り犬を左手に持ち替え裏拳で貢の右腕を殴り、そのまま貢の体ごと吹き飛ばした。
「ねぇ、邪魔しないでよ。僕がこの人と会話しているだろ?確かに僕はDoGだよ。でも、急に殴るなんておかしく無いか?」
その質問に貢は答えられなかった。なぜなら意識がほとんど飛んでいたからだ。
「もういいや。もう君達に用はない。この『合成獣(キメラ)』さえあればもういいや。ばいばーい。」
「やはりそれが…」
真希は男の言葉に絶句する。
そして男は気づくといなくなっていた。
〜
貢はカプセルに入り怪我を回復させ真希たちを集めて会議を行う。
「聞きたいことがある。分かってるとは思うが。」
「まあ、そうだよね。合成獣について、苺についてでいいんだよね?」
「ああ。」
そう言って、真希は語り出した。
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