銀髪艦長とおとぎの国のトイ・ソルジャーズ

野寺308

Vol.1 銀髪艦長とおとぎの国のトイ・ソルジャーズ

PROLOGUE “年表、あるいは年表という名のあらすじ”

【“注意”――本作は二次創作です。可能なかぎり原作の設定に基づいて執筆しているものの、著者の知識不足からくる(具体的にはアナザー未読)意図せぬ設定改変、あるいは故意の誇張が含まれます。

 それを踏まえ、ポップコーンでも片手にこれ書いてる奴バカだな―、などとあざ笑いつつ、濃度高めなド素人の妄想を存分にお楽しみください】

















【1946】


 ・暴力の時代ラ・ビオレンシアのはじまり。欧米企業の搾取に反抗した労働者たちと、逆に企業と手を結び、これを弾圧する方向へとかじを切ったコロンビア政府との対立によって、国内に20万人もの犠牲者が出る。









【1954】


 ・PBSUCCESSピービーサクセス作戦が成功。中央情報局CIAの仕掛けたこの工作活動によって中米グアテマラでクーデターが発生。その結果、親米独裁政権が誕生する。CIAはこの成功を足がかりに、中南米ラテンアメリカ諸国への影響力を強めていく。









【1964】


 ・コロンビア内戦の勃発。左翼ゲリラ、極右民兵、そして政府軍の三叉の抗争劇は白い黄金コカインという財力を糧に長期化し、史上最長の内戦へと発展していく。









【1967】


 ・MKウルトラ関連資料が、時のCIA長官の手によって破棄される。この冷戦の産物とも呼ぶべきマインドコントロール計画には、ナチ戦犯たるドイツ人科学者たちも多数関与していた。









【1972】


 ・メデジン・カルテルの結成。パブロ=エスコバルを長とする同組織は、史上初の麻薬カルテルだった。









【1983】


 12.24.・ソ連の閉鎖都市ヤムスク11にてオムニ・スフィア高速連鎖干渉炉TAROSが暴走。同市内にいた軍民すべての住民は、TAROSから放出された精神波イオタ波によって発狂、殺し合ったすえに全滅する。

 この事件の犠牲者の中には、計画の発起人であったドミトリー=ヴァロフ博士、そして“ソフィア”と呼称される実験の被験者も含まれていた。

 同日、テレサ=テスタロッサおよびその兄レナードら、ウィスパードたちが誕生する。



 ・レーガン大統領、SDI計画とあわせてロボット部隊スーパー・トルーパー構想を発表。この計画がのちのアーム・スレイブの誕生へと繋がっていく。








 

【1985】


 02.・米麻薬取締局DEAのキキ=カマレナ捜査官が、メキシコでの捜査活動中に拉致され、カルテルによる拷問のすえ殺害される。

 これを受けて米政府は、麻薬カルテルとの対決姿勢を強め、麻薬戦争War on Drugsと称される新たな形態の戦争へと本格的に参戦していく。









【1986】


 ・イラン・コントラ事件の発覚。ソ連によるアメリカ大陸進出を防ぐべく、米国は反共右派ゲリラであるコントラへと違法に武器援助を行う。だが議会によってこの問題があかるみになったことで、計画に加わったCIAは世論から激しい指弾を浴びる。

 この事件に使われた裏資産ブラックバジェッドの中には、麻薬カルテルによるコカイン売買の利益が混じっているのではないか? という疑惑が挙げられたものの、ついに決定的な証拠は見つからなかった。







【1987】


 ・シモンボリバル・スポーツアリーナの建設が中断される。最大の出資者であったメデジン・カルテルが政府との戦争激化によって出資を渋るようになったのが原因だった。









【1988】


 ・後にトゥアハー・デ・ダナンTDD1の副長を務めるリチャード=ヘンリー=マデューカスが、カール=テスタロッサ中佐のお招きにあずかり、テスタロッサ邸のあるポーツマスへと赴く。

 そこでマデューカスは、当時5才であったテッサと初めて出会う。(〈トゥアハー・デ・ダナン〉号の誕生)









【1989】


 ・パラジウム・リアクター常温核融合の発明が全世界に報じられる。

 この技術の発明を皮切りにささやかれた者ウィスパードたちが作り上げたブラックテクノロジーが世に出回りはじめ、すこしずつ歴史がねじ曲げられていく。

 これらの発明品の中には、テッサとレナード兄妹が組み上げた電磁迷彩システムECSの基礎理論も含まれており、この技術はのちに、クウェートへと撃ち込まれたステルス核弾頭の原型となってしまう。









【1990】


 ・M6“ブッシュネル”の登場。飛行機、戦車につづく第3の兵器として、アーム・スレイブASの存在が世に周知されていく。









【1991】


 ・湾岸戦争の勃発。クウェート侵攻にはじまるこのイラクによる軍事的冒険は、多国籍軍の介入によって寸前で阻止される。

 戦争の首謀者たるサダム=フセイン大統領の拘束によって戦争は終わるかに見えたが・・・・・・直後、解放されたばかりのクウェート北部に史上3度目となる核攻撃がなされる。

 この攻撃によって軍民合わせて数十万人が死亡。核攻撃の責任はフセイン大統領に被せられるが、その実、攻撃を主導していたのは戦争利権を狙ったアマルガムであった。

 この爆発が引き金となり、第5次中東戦争が勃発する。



 ・ソ連の指導者、ミハイル=ゴルバチョフ書記長が暗殺される。これにより保守派がソ連国内の主導権を握り、ゴルバチョフが推し進めていたペレストロイカは道半ばで頓挫してしまう。

 同年、ソ連はアフガニスタンへの再侵攻へと踏み切り、タリバン政権を打倒。アフガニスタン全域を占領下に収める。



 ・ミスリル創設。迫りくる第三次世界大戦を未然に阻止すべく創設されたこの極秘の傭兵組織は、西側諸国の内諾をうけつつ、全世界を舞台として非公然に活動していく。









【1992】


 ・モンドラゴン・ファミリアの結成。元英国特殊空挺部隊SAS員であった中米ベリーズ出身のハイメ=モンドラゴンは、カルテルの軍隊パラミリタリー化をいち早くおし進め、他のライバル組織を圧倒。

 中南米全域に影響力をもつ、一大麻薬カルテルを築き上げる。









【1993】


 01.30.・コロンビアの首都ボコタにて、死者21名をだす爆弾テロが発生。

 エスコバル率いるメデジン・カルテルによる政府への報復計画の一環だったのだが、犠牲者はいずれも麻薬戦争とは縁もゆかりもない、たまたま本屋を訪れただけの民間人であった。

 貧者の味方として民衆から根強い支持を受けていたエスコバルだったが、この事件を機に世論からの支持を失い、急速に孤立を深めていく。



 ・自警団“ロス・ぺぺス”の結成。パブロ=エスコバル被害者の会と称した同団体は、メデジン・カルテルを標的とした超法規的な私刑活動をコロンビア国内で繰り広げていく。

 この組織の裏には、メデジン最大のライバルたるカリ・カルテルや、極右民兵組織である自警軍連合AUC、そしてCIAの影があった。



 12.02.・パブロ=エスコバルが当局に射殺される。これが決定打となり、中南米最大の麻薬組織であったメデジン・カルテルは崩壊する。

 だが残されたカルテルの構成員たちは他の組織へと流れていき、それが麻薬産業の拡散、拡大へと繋がってしまう。



 12.・ニューハンプシャー州ポーツマス市にあるテスタロッサ邸に武装集団が押し入る。

 正体不明の襲撃者たちによってテッサの父であるカール、そして母マリアが死亡。この事件以後、テッサは父カールの旧友であったジェローム=ボーダ提督の庇護のもとミスリルに身を寄せ、TDD1の設計に携わっていく。(〈トゥアハー・デ・ダナン〉号の誕生)



 ・ネオ・パンナム社が創業。DEAの必死の捜査もむなしく、同社とモンドラゴン・ファミリアとの関連性はついに見いだせなかった。









【1994】


 ・ロドリゲス兄弟が逮捕される。創設者を失ったことでカリ・カルテルは大きく弱体化し、麻薬戦争のメインストリームはコロンビアからメキシコへと移ろっていく。









【1996】


 ・キャッスル・フルーツ・カンパニー社創設。南米進出の第一歩としてチリ風味おしるこコーヒー缶を発売したことで、一部の好事家から絶大な支持を得る。



 ・モンドラゴン・ファミリア、メキシコ・アメリカ間の国境をめぐるメキシカン・カルテルとの抗争に破れる。

 血吸姫ラ・バンピーロことオクタヴィア=ドレスニコバの活躍も力及ばず、地元意識の強いメキシコ勢に追い出される形での敗北であった。だがそれでもなお、中南米全域に一定の影響力は保持しつづける。









【1997】


 ・モンドラゴン・ファミリアがコロンビアへと侵攻。強大な武力をもってしてFARCファークら左翼ゲリラ、AUCといった民兵のみならず、政府軍をも圧倒。

 メキシコ国境を得られなかった埋め合わせとして、カリブ海密輸ルートの独占を目論むも・・・・・・創設者の逮捕から一転、近年、急速に力を増しつつあった新生カリ・カルテルによる激しい抵抗に遭い、戦いは膠着状態に陥る。









【1998】


 ・陣代高校の生徒たちを乗せた旅客機がテロリストによってハイジャックされる。(戦うボーイ・ミーツ・ガール)



 ・モンドラゴン・ファミリアが静謐なる地トランキランディア農場カンポの建設を開始。









【1999】


 ・テッサ、フラれる。(踊るベリー・メリー・クリスマス)









【2000】


 ・レナード=テスタロッサ、千鳥かなめを伴いメキシコ南部の邸宅に到着。(つどうメイク・マイ・デイ)



 ・メリダ島における最終決戦。この戦いによってTDD1は沈没。それから間をおかずテッサの手によってミスリルは解体され、かつてミスリルに籍をおいていた者たちは三々五々、おのれの人生を歩むべく世界に散っていく。(ずっとスタンド・バイ・ミー)



 ・初の第3世代ASであるM9 “ガーンズバック” の評価試験が終了。米軍への実戦配備が始まる。この報を受け、焦りを感じた各国のあいだで第3世代ASの開発競争が激化する。



 ・ソ連崩壊、民主化へ。









【2001】


 ・モンドラゴン・ファミリアとコロンビア政府との間に停戦協定が成立。

 表向きにはそのような図式であったものの、カリとモンドラゴン、コロンビアを二分する巨大カルテル同士による手打ちというのが実情だった。

 停戦協定の中身について国の内外から批判されたものの、終わりなき麻薬戦争に疲弊しきっていた国民からの歓迎の声は、その批判をはるかに上回るものだった。


 1. モンドラゴン・ファミリアによるコロンビア国内におけるコカイン生産の黙認。ただしこれは、ジャングル地帯にのみ限定される。

 2. カリブ海密輸ルートならびに都市部の縄張りは、引き続きカリ・カルテルのものとする。

 3. 先の条件を履行する限りにおいて、コロンビア司法局は、ハイメ=モンドラゴンおよびカリ・カルテルの幹部を訴追しない。

 4.これらの条項は、両組織の抗争が再熱した時点で失効となる。



 ・チャイナレイク砂漠にて無人機UAV “プレデター” による攻撃実験が成功。この成功を受けてCIAは、無人機を用いた暗殺プログラムの検証をはじめる。



 ・テッサ、亡き友人バニの故郷へと赴き、その墓前に花を手向ける。これが契機となって、亡き部下たちへの墓参りが習慣となる。(テッサのお墓参り)



 ・メキシコのシウダー・フアレスにて、ジオフロント型商業施設 “ミクトラン” の建設が始まる。この計画の最大の出資者はキャッスル・フルーツ・カンパニーであり、同社はコロンビアおよびメキシコにて、複数の商業施設の建設計画を押し進めていく。



 ・英国BAEシステムズ社が試作開発中であった第3世代ASが、アメリカでの性能評価試験のための輸送途上に、船の沈没によって全機損失してしまう。

 プロトタイプ9機が全損したことを受けて英国国防省は、次世代機開発計画“プロジェクト・フェイスレス”の無期限凍結を決断する。



 ・サンタ・ムエルテの礼拝所がメキシコ・シティにはじめて設置される。

 古代より中南米に根づいてきた死への崇敬が、現代的なカトリック信仰と組み合わさった、この古くも新しい新興宗教は、草の根的に南米大陸中で信者を増やしていく。

 その信者の中には、カトリック教会から見捨てられたカルテル関係者もおおぜい含まれていた。



 9.11.・湾岸戦争戦没者慰霊碑の最終工事が完了。核攻撃によって亡くなった万単位の米兵を慰霊するべく、ニューヨークの貿易センタービル内で式典が開かれる。

 連邦捜査局FBIは、同ビルにテロ攻撃の可能性ありとの警告を発していたものの幸いなことに杞憂に終わり、式典はつつがなく終了する。









【2002】


 ・ソ連崩壊によって表面化してきた民族紛争とテロリズムの嵐によって、民間軍事会社PMCの需要が急増。かねてからミスリルの復活を目論んでいたボーダ元提督はこの波に乗り、政府とのコネをいかして新たなるPMC、ミスリルUSA社を設立する。

 旧ミスリルの資産を吸い上げながらミスリルUSAは、急速にその事業規模を拡大。不足した人手を補うべく、わりとアコギな手をつかって元ミスリル隊員のリクルートを始める。



 ・メリッサ、クルツ夫妻1度目の離婚。だが離婚後わずか1週間足らずでよりを戻して、再婚。テッサと役所を大いに困惑させる。



 ・テッサら生き残ったウィスパードたちの共作した検閲AIが、ネット上に放流される。あらゆる対象へと無差別に侵入して、ウィスパード関連の情報を削除するこのマルウェアは、作成者たちの予想よりも早くその効果を発揮。ウィスパードの存在は歴史の闇へと葬られていく。









【2003】


 ・ロシア連邦にて諜報機関KGB出身の新大統領が誕生。就任と同時にいくつかの恩赦がなされ、ソ連時代に政治犯として拘束されていた元KGB職員の幾人かが公職へと復帰する。



 ・マオ、世の民間軍事会社ブームに遅ればせながら乗っかり、自らの会社の旗揚げを計画。さっそく起業準備を開始する。



 ・CIA、極秘収容施設ブラック・サイトの存在を否定。またこの施設の運営に関して米シンクタンク、アミット・ストラテジック社が関与していることも重ねて否定する。



 ・テッサ、元部下の墓参りのためにブラジルへ向かうことを決める。(おとぎの国のトイ・ソルジャーズ)




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