あなたの理想の女子属性は?
いっくん
第1話 先輩1 委員会
「わたしと付き合わない?」
目の前の先輩は、なんとも可愛らしい笑顔でそういった。
〜4月〜
桜舞う校庭。
四月のお昼時の心地よい春風とともに、桜の美しい花びらが校庭に空高く舞う。
少しぶかぶかの学ランは少し首元が苦しいが、悪い気はしない。それよりも、今日から始まる中学校生活にワクワクとドキドキが止まらなかった。
友達出来るかな、部活何入ろうかな、勉強ついていけるかな。そんなことを考えながら校舎の方へ向かっていった。
サァァァァァッ
ふいに少し強い風が吹いた。そして、また花びらが舞う。
その光景を目で追っていた時、体育館通路を走る一人の女子を見つけた。黒髪のショートで目はクリっとしていて身長は僕と同じくらいかな。肌は白くて見るからに細い体つきをしている。
ふと女子がこっちを見て、僕と目が合った。が、すぐに向こうは機材のようなものを持って体育館の中に入っていった。
先輩かな?体育館シューズの色が赤だったし。にしても、かわいい人だったな。 これが先輩との初めての出会いだった。
~5月~
「えっと……、一年三組の筑波海斗といいます。テニス部に入部しています。よろしくお願いします。」
僕の学校は、基本帰宅部はなく、部活と委員会に一つずつ入らなくてはいけない。部活は小学校からしていたテニス部へ、そして委員会も小学校の時にしていた放送委員へ入ることにした。今日は放送委員会の初めての活動、顔合わせだ。
「はい、新入生の皆は自己紹介したかな。じゃぁ、今度は先輩たちから自己紹介してもらうね。っと、その前に、まずは先生の方から手短に。私が放送委員会の責任者兼担当者、西塚です。去年までは鈴木先生という別の先生が担当だったんだけど、若手の僕に回ってきました。何かわからないことがあれば気軽に聞いて下さい。」
パチパチ……
「じゃぁ、先輩たちから挨拶してもらおうかな。じゃぁ、委員長の伊藤君から。」
西塚先生がそう言うと、前の席に座っていた高身長のイケメン先輩が教卓の前に立った。ちなみに人数は田舎の中学校なので、三学年合わせても15人ほど。しかし、さすがに放送室にこの人数は入りきらないので、西塚先生の担当する理科室を使って委員会を行っている。
「はい、僕が委員長の伊藤です。一年生の皆はまだわからないこと多いと思うけれど、僕ら先輩と先生がフォローしていくので分からないことは遠慮なく聞いてね。」
「委員長、それ、西塚先生も言ったー(笑)」
「わ、分かってるよ!でもほかに言うことがないし。じゃ、じゃぁ、次は副委員長どうぞー」
すると今度は眼鏡をかけた、いかにもオタクって感じの女の先輩がめんどくさそうな顔で委員長の方を見た。
「委員長、めんどくさくなると他人に投げる癖相変わらずですね。」
「し、しかたないだろ、他に思い付かなかったんだからさ。それに俺たち三年はもうすぐ引退。二年のお前たちがこれからは委員会を引っ張っていってくれないとさ。」
「はぁ、まぁいいですけど……。一年生の皆さん、初めまして。副委員長二年の川崎です。具体的な活動や機材の扱い方は後で説明しますけど、放送委員会は主にお昼と朝読書の時間に音楽を流したり、全校への連絡事項を伝えたりします。今年は今いるこの十五人で月曜から金曜の五日間を回していきますので、くれぐれもばっくれないでください。それに最初は先輩たちと一緒に組んでもらうので心配せず委員の仕事頑張ってください。」
とんだやつがいたのかな…。なるほど、基本的には小学校の委員会とやることは変わらないのか。最初は先輩と一緒か……。安心だけど、怖い先輩とかだったらいやだな。僕、緊張するとミスしがちなんだよな。
その後、先輩たちの自己紹介が進み、最後の人まで回った。
「私が最後かー。初めまして、二年の木下有希亜です。部活はバレーボールです。って、そんなもんかな。よろしくお願いします」
あ、この人。入学式の日、体育館へ走っていった人だ。放送委員の人だったんだ。じゃぁ、あの機材はマイクとかかな。
「はい、じゃぁ自己紹介も終わったことだし、一度機材の説明とかしておきたいからみんな放送室に向かって。先生は鍵取ってくるね。」
放送室は職員室の隣にあり、放送の機材の置いてある部屋と折り畳みの机が置いてある部屋の二つに分かれていた。多少狭苦しいが、それぞれの部屋に半分半分でなんとか全員入りきった。
「こっちの部屋は君たちがこれから放送するときに使う部屋、それでそっちの今先輩たちがいる部屋はお昼の放送の時に給食を食べる部屋ね。じゃぁ、これから機材の説明を簡単にするね。まずこれが……」
その後、先生は機材の説明や放送内容を教えてくれて、少しだけ練習もした。そして気が付くころには、外は暗くなり始めていた。
「よし、一応ここまで説明したけど、詳しいことや分からなかったことは来週から実際に放送しながら先輩たちから聞いてね。じゃぁ、今日は最後に放送を担当する曜日のグループで集まって顔合わせだけして解散してね。」
えっと、僕は水曜だから……。あれ、どこのグループだっけ?
「ねぇねぇ、君、水曜の担当?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、は、はい。そうです。水曜ですか?」
「あはは、緊張しなくて大丈夫だよ。そう、私も水曜。あと副委員長もね。」
この人は、入学式で見た人。名前はたしか……
「有希亜。あんたさっき理科室に筆箱忘れてたでしょ、ほら。」
「あー、ありがとう、蓮花!」
「まったく、この前みたいに筆箱なくしたって騒がれるこっちのみにもなってよね。」
「あははは、ごめんごめん」
仲よさそうだな。でもいきなり女子の先輩か……。最初は男の先輩の方が気軽に委員の仕事出来ると思ってたのに。
「あ、そうだ、君……。えっと、海斗君だっけ。自己紹介でも言ったけど二年の有希亜ね。よろしくー」
「副委員長の伊藤ね。よろしく」
「は、はい。よろしくおねがいしますっ」
いきなり二人の先輩と話したってのもあるけど、思春期入りたての男子中学生なら年上の女性を目の前に当然の反応だ。声が裏返りそうになるのを何とか抑える。
「きゃー、緊張しててかわいい!蓮花、この子持ち帰ってもいい?」
有希亜先輩は興奮気味に副委員長に話しかけた。
「いいわけないでしょ。海斗君、このおねーさんには絶対ついてっちゃダメだからね。おそわれるよ」
「えー、何その言い草、ひどくない?大丈夫、海斗君。私は普通だからね、この副委員長が盛ってるだけだから」
まだ周りがよく見えていなかったこの時の僕はただ、はい、としか返せなかった。
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