水神様は、やっぱり今日も冷たいようです

芦速公太郎

3月xx日 出会い

第1話 水神様は今日も冷たい

おはようございます、みなさん!

今日も綺麗な晴れ空の下を、鳥達が気持ちよく羽ばたいております。


あ、自己紹介遅れましたね

私は " コトハ " と申します。


おっと、もたもたしている時間はありません!

私の朝はみなさんが思ってる以上に忙しいのです。



急いで寝間着から狩衣(※お古です)に着替えて台所へと向かいます。


手慣れたようにかまどで火をおこし薪を焚べると、準備しておいた羽釜をのせます。

あとはいつも通り吹き出ないように見つつ、隣で手際よくお味噌汁を作ります。お出汁は近くの小川を泳ぐ小魚で、釣りたてをお塩濃いめで茹で上げて干したものです。具は、裏庭によもぎが沢山生えているので、今日はこれをしようと思います。


お味噌汁が出来上がりましたら、次は台所の下にある壺を取り出します。

さて、今日は何にしようかと三つの壺から毎日ランダムです。


え?置いたときに中身を覚えるって?


大丈夫です!置くときにまた並び替えるので(単純)。



おっと、話が脱線してしまいましたね


さて、この壺の中身は何かと言いますと、ずばり…


" お漬け物 " なんですよ


時々、近くの村に住む人間が玄関先に置いていくんです。


まぁ、丸い銅でキラキラしたやつ…


あ!" 御賽銭 "です!


正直、これを置かれるよりは助かります。


だから朝起きて村の人が野菜を持って来てくれると、本当に嬉しくって、嬉しくって!

一生懸命お礼を言うんですが、御婆さんはいつも私には気付いてくれなくて…


だからこうやってお漬け物にして大事に美味しく頂いてるんですよ。

もしかしたらまた、前のおじいさんみたいに、もう

" お裾分け "

してくれなくなるかもしれないし。



あれ、暗い感じになっちゃいました?


あちゃ…でも、そんなつもりなかったんです、お爺さんはちゃーんと

" 成仏生涯を全う "されてますから

安心してください!



お!ようやくご飯も炊き上がるみたいですよ!

台所中にお焦げの香ばしい匂いがぶわぁって広がってます。


あ、決して " 飯テロ "じゃないですよ

なーんか巷で流行ってるそーじゃないですか。



これ以上、誤解されるのも、

話が脱線するのもダメですし…




じゃあみなさん、私の主を紹介します!


ダダダダッ


と、廊下を走ると奥の襖へと手をかけて


勢いよく開いた。



「おはようございます!水神様!


朝ごはんできましたよ!!」



陽を防ぐように布団に包まった水神様から、

容赦なく布団を奪う。

すると、ダンゴムシのように丸めた体から、

徐々にゆっくりと俯せに伸びていった。


そして、


「…るせぇ 殺されてぇのか 」



やっぱり今日も


水神様は冷たいようです。

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