平凡女子大生は異世界で覚醒する

竜胆 アサ

第1話 突然の死!?

 私は思いもしなかった。この平凡な日常があの事故で一変してしまうなんて。


ガヤガヤ……。


「……でさーー……。」


「え、それはやばいってーー!」


授業が終わり、キャンパス内にみんなの声が響き渡る。自転車置き場では、他の自転車を倒さないよう、慎重に自分の自転車を取り出している人がたくさんいた。夕方の5時。帰る時間だ。


「えーりかっ!」


突然、友人が私の上に覆いかぶさった。


「みーつけた!」


「びっくりしたーー!」


「ほんとに?」


「うん、心臓飛び出るかと思った。」


「大袈裟だなぁ、もう。」


彼女は快活な笑顔を向けてきた。


「ほんとだってーー!」


ビュン!


強風が吹いた。友人のスカートがめくれそうになり、彼女は必死に抑えた。


「あっぶな!」


真後ろには男子がいた。危ない危ない。


「えりかは明日どこか行くの?」


明日は土曜なのだ。


「うん、おばあちゃんのとこにいってくる。ひいおばあちゃんのお参りしてくるの。」


「そっかーー。日曜は空いてる?」


「うん、どこかいく?」


「昨日ね、すっごい美味しそうなスイーツのお店見つけたの! フルーツたっぷりのケーキとかパフェがあったの!」


「え! 行きたい行きたい! 朝10時集合でどう?」


「オッケーー!」


彼女は右手の親指と人差し指で丸を作った。


「じゃあ、日曜ね!」


私はサドルにまたがりながら言った。


「うん、えりかー、またねー」


  「うん、ばいばーい」


  私は友人に手を振った。自転車のペダルをめいいっぱい踏む。


  ザーッ。


  風が私の髪を揺らす。


  あつい……。

 

  春の暖かさはどこへやら。鼻のうえにできた汗を拭う。


  あ、私が誰だって?

  私は、笹島 瑛里華。大学2年生。自然が大好きなんだぁ。いろんな生き物の観察をするのって結構楽しいんだよね。最近は、花言葉を覚えているの。いつか、大好きな人に花を贈る時、役に立つと思うんだよね。そんな日が来るといいけど……。


  ビューン。


  思いっきり坂を下る。ただ前を見て下る。服がぴったりと身体に張り付く。おろした髪は後方へなびく。眼球に風が当たり目を細める。誰もいない時は、こうやって全身に風を浴びるのだ。


  きっもちぃー ……。


両足をYの字に少し開き、重量に任せて下る。


  ブゥン、ブゥンブゥン!


  え!


目を大きく開く。猛スピードでバイクが向かってきた。


ぶつかる!


避けようと思い、慌ててハンドルを右に切った。


  げっ! うわぁー!!


  自転車のタイヤがスリップした。私はバランスを崩し、土手の上から転げ落ちる。そのまま川へ、


  バッシャーン……。


  うわっ、最悪。


  水流のスピードはいつもより速かった。昨日は雨だったのだ。


  早く、出ないと。


  水面を目指そうとするが、身体中が痛くてうまく手足を動かすことができない。


  ゴボゴボゴボ……。


  くっくるしいっ。 え、私死ぬの? ヤダヤダ! 明日、友達と遊ぶ約束したし、スイーツもっと食べたいし、スマホゲームも途中やし、彼氏もこれからつくろうと思ってたのにー。

 

  思いも虚しく、どんどん流されていく。


  もう……、むり。

 

  意識が遠のく。その瞬間だった。私が光に吸い込まれていく感じがしたのは……。

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