「小便してください」の看板

鐘辺完

「小便してください」の看板

 空き地にそこそこでかい看板が立っていた。

 三畳くらい。いや大きさは大した問題ではない。

 そこに書かれていたのが「小便してください」である。


 最近、「小便するな」と書かれたところもすっかりなくなった気がする。ただしそれは人間に対してだ。

 今はだいたい散歩中の犬などに「小便させるな」というものがほとんどである。


 しかしここのそこそこでかい看板に書かれているのは「小便してください」だ。

 実際、そこには小便するための場所らしきところがある。


 道端で立ち小便している人を見かけなくなった。

 昭和の昔はカジュアルに立ち小便している人を見かけた。

 ふと思ったがカジュアルに小便するのは男だけの権利みたいなので、男女差別はこの点にもあったんだろうと思う。女は体の構造的にカジュアルに道端で小便しにくいのもあるが、「男だから性器を放りだして放尿してても構わない」という構造は男女差別である。

 元々は立ち小便は女のものだったという話も──。


 本題に戻ろう。


 尿を集めて何かするつもりなのか? だとしても別に尿を受け止める容器もない。ただの雑草が生えた土である。

 雑草に尿をかけたら枯れてしまうこともあるだろう。別にこの空き地に生えてるのは雑草だけのようだから生えなくなって困ることもないだろう。


 結局、その空き地の主にたまたま出会ったのできいてみた。

「あー。わざわざ書いたら小便しにくくなるかなと思って」


 あまり面白くないオチだった。「するな」と言われるとしたがる輩がいるから、わざわざ「してください」と書いたんだそうだ。


 それがわかって看板の場所をながめる。看板のせいで、通りすがりの人が立ち小便をあえてする人が来ないか意識をしているのがわかるのだ。

 「書かれたことをするバカ現れないかな」と興味を持ってしまうのだ。


 ちなみに犬の糞便を防ぐ薬品が撒かれているのか、犬はそこに小便をしないそうだ。

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「小便してください」の看板 鐘辺完 @belphe506

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