第338話 魔力0の大賢者、親睦会の内容を知る

「先ずはこの日の為に必至に練習を積み素晴らしい演舞を披露してくれた特別学区の生徒たちを称賛したい。本当に素晴らしかった」

 

 用意された壇上に立ったリカルドはそう言って拍手した。倣うように僕を含めた全校生徒から拍手喝采が起こった。僕も何だかラーサが誇らしく思う。


「さて、今日の演舞を見てもわかったと思うが特別学区の生徒は本校の生徒よりも年こそ下だが、その潜在能力の高さは目に見張るものがある。上級生となる君たちもボヤボヤしているとあっさりと追い抜かれることになるだろう。故に、君たちも上級生として先輩として手本となる存在になれるよう一層の精進を積み重ねて欲しい」


 そこまで語りリカルドが全校生徒をざっと見渡した。そして更に言葉を続ける。


「今後についてだが特別学区の生徒との合同授業も積極的に取りいれていく次第だがその前に一つ、これは毎年行われる恒例行事の一つでもあるが来月末に親睦会を執り行う」

 

 親睦会――毎年の恒例行事らしいけど当然僕たちは知らないイベントだね。


「本来であれば親睦会では一年生から選出された一クラスの代表五人と生徒会執行部の五人による魔法戦を行うのだが、今年は特別学区が増えたことで生徒会執行部は特別学区から選ばれた五人との魔法戦を行うこととなる」


 生徒会執行部――食堂で挨拶を交わしたロベール生徒会長やヘンリーとの魔法戦ってことだね。もし特別学区からラーサが選ばれたら魔法戦で戦う可能性もあるということか。


 だとしたらちょっと心配だけど流石に怪我人が出るような試合形式ではないよね。


「その代わりと言ってはなんだが、一年生については上級生から選出されたクラスの代表五人と魔法戦を行ってもらうこととなった。しかし生徒会執行部ではないにしても上級生は高い能力を持った生徒が多い。そのことを踏まえて取り組んでもらいたい」


 そうリカルドが言うと一年生たちからざわめきが起きた。特別学区と生徒会執行部だけではなく一年の代表者五人と上級生五人での魔法戦か――


「なお選出方法に関してはこれからの成績次第で決めることとなる。座学は勿論だが、クラス対抗戦なども踏まえての判断となる為、各クラス切磋琢磨して望んで欲しい」

 

 親睦会の説明が終わった。今後の成績次第で一年のクラスから一クラス選ばれるわけか。


「へ、おもしれぇ。だったら俺らでその親睦会に挑もうぜ!」

「えぇ、本気なの? 別に無理して狙わなくてもいいじゃん」


 アズールが鼻息荒く宣言したけど、メドーサはあまり乗り気ではないみたいだね。


「しかし上級生との魔法戦は興味あるな」

「お腹が減りそうよね」

「僕はあまり戦い向きじゃないんだけど……」

 

 ガロンはアズールと同じで親睦会に興味があるようだ。リミットとドクトルはそうでもなさそうかな。


「マゼルは当然親睦会に出るよな! やる気満々だろう!」

「え? えっと……」


 アズールが僕に同意を求めてきたけど、なんて答えたらいいのか……そもそも僕は魔法が使えないからね。

 

 ただ魔法戦は過去にも経験がある。あのラクナとも試合したしヘンリーとも戦ったからね。


 ただどれも個人戦で団体戦ではなかったんだけどね。


「――さて最後になるが、既に知っている生徒も多いと思うがつい最近魔導遊園地及び動物園にて魔獣が暴走する騒ぎが起きた。危うく一大事になるところだったが我が校の生徒がその場に居合わせ魔獣の捕獲に貢献した。それ自体は素晴らしいことだ。だが、危険な行為だったことは否めない。場合によっては命を失ってもおかしくなかった事だ。本来であれば強く叱責したいところでもあるが、遊園地側からも感謝されたこともあり此度は不問とする」


 リカルドが全校生徒に向けてそう発言した。これにはアズールが不満そうだけどね。


「不問って俺らだけ反省文書かせたじゃねぇか」

「まぁまぁ」

 

 確かにその通りなんだけど、イロリ先生が言っていたようにその程度で済んで良かったんだと考えるほうがいいんだろうね。


「しかし一年の生徒の中には折角魔法を習っているのだからその力を存分に発揮してみたいと思う者もいることだろう。よってこれは親睦会が行われた後の話となるが、一年生にも冒険者ギルドに所属する権利を与えたいと思う。勿論学園の生徒といういことを考慮し扱いはあくまで冒険者見習いといったところだが、貴重な経験となることは間違いがないだろう」


 この内容には一年の生徒たちからどよめきが起きた。冒険者として活動出来ることを喜んでいる子もいるね。


 ちなみに上級生は平然としているから既に冒険者見習いとして活動しているんだろうね。


「よっしゃ! 早速明日からやってやろうぜ!」

「いや、話聞いてた? 親睦会の後だって言ってたじゃない」


 張り切るアズールにメドーサが突っ込んでた。確かにちょっと気が早いかもだけどそういえば僕は既に冒険者ギルドに所属していたんだよね、はは……

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