第281話 魔力0の大賢者、に知らされしイロリ先生の過去?

「イロリ先生は良い先生だよ。小テストの時もイロリ先生のおかげで乗り切れたようなものだし」


 ヘンリー王子に問われ僕は感じたままを答えた。教科書の謎をとくのは少し苦労したけどそれも含めて授業の一環だったのかなって今は思う。


「そうなのかい? う~ん。ところでイロリ先生がどんな授業をしたか聞いてもいいかい?」


 ヘンリー王子はどうやら先生の授業方法に興味があるようだね。


 隠すようなことでもないし僕は教科書のことも含めてヘンリー王子の質問に答えた。


「それは――また随分とまどろっこしい手段にしたものだね」

「きっとイロリ先生は僕たちに考えることの大切さを教えてくれたんだと思うよ」

「いや、それはどうかなぁ……」


 僕の考えを聞いてヘンリー王子が苦笑いして見せたよ。


「う~ん話を聞くにやはり以前のイロリ先生とはかなり違うようだね」

「以前のですか?」


 ヘンリー王子の答えに僕はちょっと首をかしげるようなポーズで問いかけた。


 当然だけど僕は以前のイロリ先生のことを知らないからね。


「そうさ。といってもZクラスの前にイロリ先生が担任を受け持っていたのは僕が入学するより前のことだったみたいだからね。僕も人伝に聞いたに過ぎないのだけど」

 

 そう前置きした後ヘンリー王子が過去のイロリ先生について口にする。


「以前イロリ先生はFクラスの担任をしていたらしくてね。マゼルも知ってると思うけどZクラスは今年から新設されたクラスでありそれ以前は一番下のランクはFクラスだったんだ」


 ヘンリー王子が説明してくれた。その話は入学式でも触れられていたね。


「そのせいかイロリ先生が受け持っていた頃のFクラスは落ちこぼれの集まるクラスとされていて随分と蔑まされていたらしいんだ。だけどイロリ先生はFクラスだからと見捨てるような真似をせず体当たりで一人一人の生徒にぶつかっていくような熱血教師だったようなんだ」


 熱血か――イロリ先生が面倒見がいいというのは納得できるけど、熱血となると印象はちょっと違ってくるかもしれない。


「イロリ先生は生徒思いの良い先生だったんだね」


 とは言えそこは思った通りだなというのが僕の感想だ。だけどヘンリー王子の顔はどこか浮かない。


「確かに以前は・・・そうだったんだと思う。だけど――ある問題が起きてからはそうではなくなったらしいんだ」

「ある問題?」


 その話が何だか気になり問い返してしまったよ。


「当時のイロリ先生は熱血漢だった。そしてそんなイロリ先生の指導で大きく変わった生徒がいてね。彼は落ちこぼれと言われたFクラスでイロリ先生の指導を受け二年に上がると同時にAクラスまで上がる事ができたようなんだ」


 FクラスからAクラス――話に聞いていたとおりなら随分と成績を上げたことになるよね。大きなステップアップだと思う。


「その話はいいことだよね」

「確かにそこだけ聞けばそうなんだ。イロリ先生も当時は随分と評価されたらしくてより上のクラスを任せるという話もあったらしい。だけど――二年のAクラスに進級後間もなくしてイロリ先生の教え子は同じクラスの生徒との間で問題を起こし退学になってしまったようなんだ」


 ヘンリー王子が僕の問いかけに答えた。つまりイロリ先生の教え子が問題を起こしてしまったということなのか……。


「それはその生徒だけが悪かったの?」

「それについては詳しくは……何故か学園でもタブー視されてるようでね。ただイロリ先生は教え子の事を信じそんな問題を起こすような子じゃない退学を取り消してくれと理事長に直接訴えたらしくてね」


 理事長……リカルドのことか。


「その訴えは認められたの?」

「――いや問題はそこからでね。そのイロリ先生の教え子はその後別な罪で捕らえられ監獄送りになったらしいんだ」


 え? そんなことが――でもどうして……。

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