第280話 魔力0の大賢者、生徒会副会長と話し合う

「マゼルの妹君も含めて幼年学科に入学する生徒たちには怖い思いをさせてしまったね。生徒会副会長として心苦しく思うよ」


 ヘンリー王子が申し訳無さそうに言った。ヘンリー王子は何も悪くないのだけど副会長という立場から心を痛めているのかもしれない。


「大丈夫ですよ。それにラーサも無事でしたから」

「はは。確かにマゼルの妹を拐おうなんて無謀な事をしたものだなと思うけどね」


 そう言ってヘンリー王子が笑った。僕も大事な妹が拐われたとあっては黙っていられなかったからね。


「しかし今回もまた魔狩教団絡みとなった。しかも話によると教団側は襲った馬車にマゼルの妹が乗っていた事を把握していたという。そこが疑問でね」


 真剣な顔でヘンリー王子が言った。確かに僕も聞いた限りでは教団側はラーサが馬車に乗っていた事を知っていたと思う。


「幼年学科が出来る事自体は知ることは可能だろう。しかしどの馬車にどの生徒が乗るかは余計なトラブルを避けるために秘匿されていたのだよ」

「う~ん確かにそう考えたらおかしいね。でも魔狩教団にはギフトという奇妙な力の使い手がいたからそれで調べたのかも」


 僕が私見を述べるとヘンリー王子は確かにと一度は頷いた。


「しかし大賢者マゼルほどの存在ならともかく幾らギフトがあると言ってもピンポイントでラーサ君の乗ってる馬車がわかるのかというのがある」


 そう語るヘンリー王子の表情から何か別な考えがあるんじゃないかと感じた。


「もしかしてヘンリー王子にはその理由に心当たりが?」

「ははは……そこまで大したことではないよ。ただ僕もこの学園に入学してからただ手をこまねいていたわけじゃない。その上で言わせてもらえば……もしかしたらラーサ君の情報は学園内部から漏れたものかもしれない、そう考えている」


 この学園内部から――ヘンリー王子は確かにそういった。それはつまり学園内に――


「学園の中で魔狩教団と繋がっている、内通者がいるということですか?」


 ヘンリー王子に改めて聞いた。もしそうだとしたらとんでもないことだよ。


「まだ可能性がある程度のことだけどね。だからマゼルに聞きたい。最近Zクラスで変わった様子の者はいなかったかい?」

「え? そのヘンリー王子はZクラスの皆を疑ってるんですか?」


 質問に質問で返す形になってはしまったけど僕としてはちょっと驚きだったからね。


「疑っていない、といえば嘘になる。今回はラーサ君の事を知っていた人物の可能性が高いしそうなると君のクラスからという考えも出来る」


 ヘンリー王子がそう答えてくれた。僕の身内のことを知るには僕から直接聞くのが早いわけでそこから漏れたのかもしれないと考えているようだね。


「勿論こんな役回りは嫌だけど僕は生徒会副会長だからね。こんな僕を嫌いになるかい?」


 ヘンリー王子が複雑な表情で言った。僕は別に責めるつもりはない。確かに立場で考えれば疑うことも仕事だと思うしね。


「そんなことはありませんよ。ヘンリー先輩の立場もわかりますから僕でわかることならお答えします。ただ、そうなると僕も疑われる覚悟をしておかないといけないね」

「いやマゼルについては最初から信用してる。でなきゃ君に聞いたりしない」


 断言されたよ。それは喜んでいいのだろうけど何だかこそばゆい。


「それでどうかな?」

「う~ん。僕からみたら少なくとも教団と繋がってるようなクラスメートはいなかったと思うんだけど」


 それが僕の率直な感想だった。特に怪しいと思った動きもなかったしね。


「ふむ。例えば――メイリアなどはどうかな?」


 メイリア――まさか名指しで彼女のことに触れられるなんてね。


「そうですね。隠すことでもないですが確かに僕がラーサを助けに行くときに後ろから尾けてきたりはしました」

 

 僕の話を聞いてヘンリー王子の目つきが変わった。だけど――


「でもメイリアはその事を隠すこともなく学園側に伝えてくれました。彼女の証言のおかげで僕も退学を免れましたから教団と繋がっていたとは考えられないかと」

「そうだったのか……ふむ――」


 ヘンリー王子が考え込む。まだ気になることがあるのかな?


「ヘンリー先輩は生徒の中に内通者がいると?」

「生徒も視野には入れている。ただ勿論それだけじゃない。そうだね例えばイロリ先生についてはマゼルはどう思っている?」


 イロリ先生――


あとがき

『四天王最弱と馬鹿にされ続けて来た俺、現代日本に移住し最強のダンジョンスレイヤーとなる~日本での平和な暮らしを維持する為に、人知れずダンジョンを駆逐して見せる!~』という新作を公開しました。現代ファンタジーとなります。少しでも興味をもって頂けたならチラッとでも覗いて頂けると嬉しく思いますのでどうぞ宜しくお願い致します。

https://kakuyomu.jp/my/works/16817330653913460254

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