第246話 魔力0の大賢者、狙いに気がつく
残った魔狩教団の面々を拘束してこれからについて考えることにした。
「位置的には魔法学園都市の管轄になるだろう。都市側に引き渡して後を任せるのが筋だと思うのだよ」
グリンが捕まえた教団員について考えを示した。なるほどここまで学園都市の管轄になるんだ。そう考えると結構広い。
「つまりこの連中、魔法学園の管轄内でこんな真似してたですの?」
「面の皮が熱い連中だな」
フレデリカが言いながら目を丸くさせシルバは呆れたように眉を寄せていた。
「――この連中は魔法を憎んでる。だからこそあえて魔法学園都市のエリア内で僕たちを攫い教団の力を示そうとしたのかもしれないのだよ」
「魔法を重視する学園の領内で事件を起こしたとなれば教団としてはアピールに繋がるし学園都市からすれば面目丸つぶれですものね」
グリンとラーサが交互に語る。確かにそんな雰囲気も感じる。だとしたら魔狩教団は随分と自己顕示欲の強い連中だなと思う。
「どちらにしても学園都市まで連れて行く必要があるんだ……あ! そういえば御者の人は!」
「それなら大丈夫。怪我は治療したし今は安全な場所で待機してもらってるから」
「流石はお兄様です!」
「ちゅ~!」
アンの疑問に答えた。彼女が旨をなでおろし安堵の表情を浮かべる。ラーサとファンファンも嬉しそうだよ。
相手のことを思いやれるいい子なんだなと思う。ラーサとは今後も仲良くして欲しいね。
「ところでどうやって運べばいいのかな?」
「それなら僕が――」
そこまで話した瞬間、移動し飛んできた無数の物体を受け止めていった。
「え? お兄様一体?」
「これだよ」
手を広げると弾丸が地面に落ちた。
「い、一体何が起きたんだい?」
「何者かが――恐らく火銃で狙い撃ちしてきたんだと思う」
「え? 私たち狙われますの!?」
シルバに答えるとフレデリカが怯えた声で聞いてきた。だけど狙撃してる奴らの狙いは僕たちではない。
「狙いは残った教団員のようだね」
「え? 仲間を狙ってますの?」
「――以前も奴らは仲間の口封じを図ってる。不思議ではないよ」
連中にとっての仲間というのは所詮その程度ということなんだろう。
それにしても今回は随分と直接的な手で来たな。
「これなら銃弾の軌道から位置が掴める。ちょっと行ってくるよ」
「それはやめた方がいいとお答えします」
一緒に捕まえてやろうと思って狙いを済ませているとメイリアの声が聞こえてきた。
彼女が僕を尾けていたのは知っていた。途中から僕のほうが大分先行しちゃったけど追いついてきたんだね。
「やめた方がいいというとどうして?」
とりあえずメイリアに理由を聞いてみた。彼女がなんの理由もなくこんなことを言うと思えない。
「……私も観測してみましたが位置的に狙撃手はサーペント王国側から狙ってきているとお答えします」
「――驚いたのだよ。まさか僕たちの国からとは……色々思うところがあるが、それであれば確かに彼女の言う通り下手に手は出さないほうがいいのだよ」
メイリアの話を聞いてグリンも察したように話に加わった。
「相手がサーペント王国から、か……つまり国境を越えるのがまずいってことか……」
二人の話を聞いて僕もなんとなく理解した。ここまでは魔法学園の管理するエリアだし先生との約束通り僕は山から出ていない。だけど国境を跨ぐとなると話は別だ。
「ですが今回は私たちも狙われています。国が違うなどと言っている場合ではないのでは?」
「だからこそなのだよ。しかも僕たちはサーペント王国側の人間。マゼル……先輩はマナール王国出身。それがますます話をややこしくするのだよ」
「全く人間連中はそういうところが面倒さね」
アネが呆れたように言った。
「……どっちにしろもう離れていったね」
しかもサーペント王国側の方にだ。こうなると確かに深追いはしないほうがいいかもしれない――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます