第173話 魔力0の大賢者、後半の試験に挑む

 実技試験は前半と後半にわかれていた。そして後半の実技試験では学園側の用意したゴーレムと戦わなければいけないらしい。


「ルールは一つ。ゴーレムと15分間闘うそれだけだ。ただしゴーレムは何種類か用意してありランダムで出現するようになっている。強さもバラバラだ。中にはかなりの強さのゴーレムも存在する」

「え? そ、そのゴーレムに勝たないといけないのですか?」


 ゲズルの説明に被せる形で受験生の一人が質問した。ゴーレムの強さがランダムというのが引っかかったのだろう。


 このやり方だと他の受験生の戦い方を参考に出来ない。もっともゴーレムが一体だけだと最初に挑む受験生より後に挑む受験生の方が有利になってしまうね。


 だからこそ、ランダムという手を取ったのかもしれない。


「安心しろ。そもそもこの試験は勝つことを目的とはしていない。勿論ただ何もせず逃げるだけでは話にならないが、相手の強さを見極めること、強さに応じて自分に何が出来るか考えこと、そういった状況判断力も問うことになる。これはそいういう試験だ」


 それがゲズルの解答だった。勝つことが全てではなくて、戦い方などを見て総合的に判断するということか。


「ちなみにここでは得点は100点満点方式ではない。総合的かつ客観的に判断する。逆に言えばこの試験はそれだけ重視されているということだ。判定も私ではなく別室から見ている審査員がそれぞれ判断する」

「……それぞれということは複数いる?」


 大人しく話を聞いていたアイラがここにきて質問した。今の言い方は確かに一人という感じではなかった。


「そう思ってくれて構わない。詳しくは明かさないが複数人いる。故にここであまりに不甲斐ないと先の試験の結果がどれだけ良くても一気に評価を下げる可能性もあれば、どれだけこれまでが悪かったとしてもここで一気に挽回出来る可能性が無いとは言えない。そういうことだ」

「よっしゃぁあああ! 遂に俺が活躍できる舞台がやってきたぜ!」

  

 バッカーが喜んでいた。これまでの内容を見ていると成績は良いとは言えなさそうだけど、ここで頑張れば合格できる可能性はあるということになる。


「もっとも今のは極端な例だ。別にこれまでの試験が無駄だというわけではないのだから勘違いしないようにな。そこまで大きな差がなければこれまでの試験も含めた総合点で評価されるのだから」


 ゲズルにはあまりいい印象がないけど、ただこれについては最後だから気を抜いてはいけないと注意喚起してくれているようでもある。


 寧ろここはこれまで以上に気を引き締める必要があるだろうね。油断は大敵だよ。


「それでは準備が出来たら始めて行くぞ。番号を呼ばれたものから中央のフロアへ向かうといい」

 

 そしていよいよ後半の試験が開始される。番号が呼ばれ次々と受験生が試験に挑んでいった。


「ゴオォオオオオォオオオオ!」

「うわ、うわぁああぁあああ!」


 ゴーレムは確かに強さがまちまちだ。


 サイズも人型サイズのもあれば、見上げるほど大きいのもいる。そして見る限り今のところ勝利しているのはいない。バッカーはふっ飛ばされてもう負けた。


「次――」


 あ。モブマンの出番が来た。今のところ勝ちき決めたのはいないわけだが――


「お、おいあいつ、鋼のゴーレム相手にいい闘いしてるぞ」

「もしかして勝てるのか?」


 筋肉を増強させて、鋼のゴーレムと殴りあうモブマン。凄く肉弾戦っぽく見えてしまう。


 汗が迸り、お互いに一歩も引かず、そして時間切れとなった。勝てはしなかったけどいい勝負だったと思う。モブマンはゴーレムを抱きしめて互いの健闘を称え合ってるぐらいだ。


「次は僕だね」


 眼鏡をクイッと上げてネガメが望む。ネガメの相手するゴーレムは3メートル級のゴーレムだった。


「――眼鏡魔法・メガネオブサン!」


 ネガメの十八番の魔法が放たれた。眼鏡のレンズで増幅された太陽光線がゴーレムを打つ。だけど、一撃では倒れない。


「そこを一点集中すれば!」


 だけどネガメは眼鏡越しに鑑定で相手の痛いところをつける。光線を右足一点に集中させて何度も撃ち、そしてついにゴーレムの右足が解けてバランスを崩す。


 このままいけば勝利は目前かと思ったのだけど、残念ながらそこで時間切れとなった。だけどモブマンもネガメも倒しきれなかったとは言えいい勝負だったよ。


「次はビロスだよ!」


 そして――ビロスの出番となった。


「マゼル~ビロス頑張るね!」

「うん。応援してるよ!」

「ビロス、マゼル大好き! 頑張る!」


 手を上げて笑顔で言い残して戦いの場に向かった。ま、まいったなぁ。


「くそ、何であんな可愛い子があんな魔力無しに……」

「リア充許すまじ!」


 そして、な、何か周囲からの視線が痛い……とにかく、頑張ってねビロス!

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