第79話 魔力0の大賢者、単騎でゴブリン軍団に突撃する!

sideゴブリン軍団


 俺様はゴブリンいち漢の中の漢! 帝王直属三王が一人にして一体! 怪力のゴブザレスだ! 


 ふっふっふ、どうやら人間どもが無駄な抵抗を繰り広げているらしいな。第一、第一つ? とにかくそのえ~と数がひとつ、ふたつ、みっつ……みっつの次なんだっけ?


 え~いとにかくだ! たくさんの兵が殲滅されたらしい。ところで殲滅ってなんだ?


 まぁいいや。なんにしてもその最初の沢山の兵を人間どもが必死こいて倒し、ふたつめのもっとたくさんの兵が向かったらしい。


 正直、だったら俺に行かせろ! とも思ったが、まぁ俺様は王だからな! だから途中の道でどっしり構えて様子を見ていればいいのだ!


 勿論必要なら次は俺様が出るがな。だが、たかだか人間がもっと沢山のゴブリンを倒せるとも思えんしな。


 しかし暇だな。そうだ、ちょっとその辺から人間の牝でも掻っ攫ってこさせるか。俺様もそろそろやりたくなってきたしな。

 

 ふふ、この俺様の自慢の一物があればどんな牝だってイチコロよ。たっぷりヒーヒーと……。


「ご、ゴブザレス王! 大変です、て、こんな時に何股間をキングダムにしてるんですかぁああ!」

「な、お前こそ妄想している時に突然飛び込んでくるな!」

「一体何の妄想してたんですか……て、それどころじゃない! 何かとんでもないのが近づいてきてるんです! 多分人間側の兵です!」

「何来たか! 牝か?」

「いや、どうなんだろ? とにかく前衛で守ってたゴブリンを薙ぎ倒しながら近づいてきてるんです! 雄でも牝でもヤバい奴ですって!」

「ふん、面白い。丁度俺のキングダムも熱り立っていたところだ」

「キングダム気に入ったのかよ」

「よし! 出るぞ、怪力のゴブザレスのキングダムを人間に見せつけてくれよう!」

「何を見せつける気ですか!」


 ふん、ほんのゴブリンジョークだ。大体俺様のキングダムは牝の為にこそ開門されるのだ!


 とにかく俺様は陣地の中心にどっしりと立ちその人間を待った。すると程なくして、バチバチと迸る光が視界に入った。


「なんだあれは?」

「あれですよ! あれが仲間を弾き飛ばしながら突っ込んで来てるんです!」

「面白い! ならばこの怪力のゴブザレスがどんなものか試して……」

「ゴブザレス王! もう目の前に!」

「何?」


 俺様が視線を下に向けると、雷を全身に纏ったような人間が腰のあたりにいた。帝王やゴブリンジャイアント程ではないが、俺様もかなりの巨体だ。


 そんな俺様からすれば、多少動きが速かろうとこの程度の人間、小鼠みたいなものだ。さっさと捻り潰してくれよう!

 

『邪魔だよ! 通雷拳!』


 へ? 何かが俺様の、お、おお、俺様のキングダムにぃいいぃいいぃいい!


「あぴょぴゃgi#$!?」

「あぁ! 王の!」

「王の!」

「「「「「「「「王のキングダムが崩壊したぁああぁああああ!?」」」」」」」」






◇◆◇

sideマゼル


 急いでいるところにまた大量のゴブリンが行く手を遮ってきた。だからそれも突撃して数を減らして突き進むけど、そしたら一際大きなゴブリンが正面に見えてきた。これはゴブリンキングだ。


 うん、随分とタフそうだね。懐にはなんかあっさり潜り込めたけど、中途半端な攻撃じゃ通じない可能性もあるかもしれない。


 だから僕はここでふと思いついたこと。通破拳と纏ってる電撃の合わせ技を試してみることにした。


「邪魔だよ! 通雷拳!」

 

 このとき僕は急いでて身長差を考えてなかったんだよね。何せ僕はまだまだ体格は子ども。だけど相手は巨大なゴブリンキング。


 この身長差だと、僕の電撃を混じった拳は、うん、つまりその股間的なとこにあたっちゃった。


 何か鈍い音がして、そしたらこれがまた凄まじい悲鳴があがったんだよね。自分でやっておいて何だけどちょっと可愛そうだったかな。でも仕方ないよねやるかやられるかの戦いだもの。


 周囲のゴブリンも随分と騒がしくなってたけど、とりあえず纏っていた雷を放電して大体倒しておいたよ。

 

 それでも少しは残ったかもだけど、後は父様を信じて突き進むよ!






◇◆◇

sideゴブリン軍②


 私はゴブッチ。帝王ゴブラル直属の三王が一人。その中でゴブリン一の切れ者、知略王ゴブッチとは私のことだ。


 皇帝の側に仕える側近のゴーブラはゴブリン一の魔法使いとあってゴブリンの賢者を名乗っているが本来あんなやつより私の方が賢いのだ。


 さて、知らせによると第一陣の5000の兵は人間にやられたようだな。ふ、だが所詮は脆弱な人間。たとえ5000の兵を倒したところで、第二陣の10000の兵には勝てない、と凡ゴブリンならきっとそう思うことだろう。


 だが私はそうは考えない。そもそもゴブリン兵が、我らが城でもある魔窟から出兵してから第一陣が全滅したという報告がくるまで早すぎる。


 つまり相手はそれだけの手練ということだ。私には判る、それだけの力があれば次に控えている第二陣も楽には行かない、いや、それどころか敗北する確率が高い。


 だが、たとえそれで第二陣を制し、勢いづいて反撃に転じてきたとしても先ず怪力王ゴブザレスの陣地が立ちふさがる。ゴブザレスは我ら三王一の怪力を誇る王だ。しかもタフと来ている。


 いくら第二陣まで倒したとしてもゴブザレスにはとても敵わない、と考えるのは愚かなゴブリンだ。


 私はそうは考えない。何よりあのゴブザレスは馬鹿だアホだノータリンだ。そして戦争の歴史において馬鹿が勝った試しなどない!


 つまり奴も100%負ける。そして5000の兵がやられた速度を考えれば判る! 敵はもうすぐそこまで迫っている。


 だが、ここにいるのはこの私、知略王ゴブッチ! 私に掛かればこの戦の先の先を読むなど赤子の手を捻るより簡単よ。

 

 そうだからこそ判る! この勝負、私たちは負ける!


――バリバリバリバリバリバリバリバリバリィイイイイ!

「ゴブウゥウウゥウウウゥウウウウ!」


 その答えを導き出した直後、痛烈な電撃と衝撃を受けた私の体は宙を待っていた。フッ、やはりな。私はゴブリン一の切れ者にして知略の王。私の予想が外れたことなど、な、い、グフッ!






◇◆◇

sideマゼル


 あのゴブリンキングなんだったのかな? 何か一人でブツブツ言っていたけど……。





◇◆◇

sideゴブリン軍③


 ガッハッハ! 我こそはゴブリン軍最強の盾と名高い鉄壁王ゴ、ゴブウゥウウゥウウウゥウウウ!?


「「「「「「「「あぁあ! 鉄壁王がやられた、もう駄目だぁああぁあああぁあ!?」」」」」」」」





◇◆◇

sideゴブラル


「しかしゴーブラよ。万が一その第二陣もやられたらどうするのだ?」

「ふむ、陛下、流石にそれは気にし過ぎでございましょうが、しかしたとえそこで第二陣を倒したとしても、我らには三王が控えております」

「おう、三王か。そうであったな。あやつらであれば、万が一にもやられることはないであろう」

「はい、最初に控えているのは怪力王ゴブザレス。こやつは頭が弱いのが欠点ではありますが、巨大な岩を片手で砕くほどのパワーを秘めており、人間などいくらいようとゴブザレスの前ではひとたまりもないでしょう」

「ふむ、たしかにな。我には負けるがあれのパワーは相当なものだ」

「その上、第二に控えるは知略王ゴブッチ。この王は私ほどではないがかなりの切れ者。先見の眼に定評があり、あらゆる事態を先読みして行動できる優れた王です」

「うむ、我もあの王には一度もゴブリンポーカーで勝てた試しがないからな。確かにあいつがいれば問題ないだろう」

「失礼ですがゴブリンポーカーに関しては帝王、ゴブリン兵も含めて500戦500敗……いや失礼致しました」


 我が睨むと、それ以上語られることはなかった。ふん、あれは我が弱いのではない! 皆が空気読めなさすぎなのだ!


「え~とにかくこれは、まぁ、間違ってもありえないでしょうが、その二王が例えやられたとしても、最後に控えるはゴブリン一のタフさを誇る鉄壁王。やつには要所となるゴブ砦も任せており、万が一にもそれが突破される心配はございません」

「そんなことを言いながら、名を名乗る暇も与えられずやられたりしてな」

「はっはっは、まさかそんな馬鹿なことがあるわけないでしょう」

「勿論冗談だ。ハッハッハ!」


 ふふ、しかしゴーブラの話を聞けば聞くほど我らゴブリン軍に敗北などありえん! と確信出来るな。


 さぁ人間ども! どうだ我らゴブリン軍団は! ふふ、帝王たる我は魔窟を守る使命があるので直接は出れぬが、一体どこまで出来るか見せてみ――


「た、大変です帝王! に、人間が、人間が一人、要所のゴブ砦を破壊し、我が城まで、近づいてきております!」

「「は? はぁああぁああぁああぁあああッ!?」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る