少女はいつか教科書にのる

@mega-nu4649

第1話ー1厘の女

楽しい修学旅行の筈だった。

仲の良い友達、少し気になるあの人。


事が起こったのは最初の日。全体行動でのお寺で座禅とか言う誰が考えたのかわからないイベント。

馬鹿な男子が数名脱走して境内でスマホをいじってたらしいの。

そこでゲームに負けて石灯籠っていうのかな?

名前は良くわからないけど、ともかく蹴り倒したんだって。


勿論直ぐに皆気がついた。

顔を真っ赤にしたお坊さん。反対に真っ青な顔で慌てて飛び出す先生。


そして、楽しげに嗤うナニカ。


『くくく、よもやこんなことが起こるとはのう。あやつもよもや思うまいて。愉快じゃのう。ほんまに愉快じゃ』


そのナニカは男でもない女でもない。

若くもなく老いてもない。

人ではなく、そもそも自然界にこんな音が存在するなんて知らなかった。

まさにナニカとしかいいようが無い声で嗤っていた。


『ふむ、そこなおのこ共。我を解放した褒美をくれてやろうではないか。何でもいってみるがよいよ』


何でだろう。ここからは原因になった男子達は見えないはずなのに。

何故か彼らの行動がわかる。

彼らは皆この状況に困惑してるのか声を出せないでいる。

でも、一人だけ嫌な顔を浮かべて笑っている。


「へっ、やっと俺のストーリーが動き出しやがったか。なら俺に力をくれよ。誰にもばかにされない力をよ」


「ぼ、僕は女を自由にする力が欲しい。僕を馬鹿にしてきた女たちを今度は僕がもてあそんでやるんだ」


「へえ、なら俺は金だな。いくら遊んでも尽きないだけの金をくれ」


最初の一人が声を上げると我も我もと続いていく。

それにしても、彼らは何で自分達がばかにされているのかが何でわからないんだろう。

決して見た目が悪い訳じゃないんだから。


『いつの時代も人の子は変わらんな。力金女。ほう、権力を望む者を居るな。これはその方らの学友か。今我は気分がよい学友らにも力をくれてやろう』


「何だと、俺らは苦労してお前を解き放ったんだぞ。何で何もしてないやつらの望みまで叶えてやるんだよ。その分も俺たちに払えよ」


『くくくそう吠えるな。勿論その方ら三人は別格よ。その方らにはそのまま力をくれてやるともよ。だが、その他は富籤と言ったか? 誰かが望んだ力を無作為にくれてやる。ああ、貴様ら三人も籤を引いてよいぞ。良かったのう貴様ら三人は二重に能力を得るわけだ』


「へえ、それなら構わねえよ。良かったなあお前ら。俺たちに感謝しろよ、俺達がおこぼれをくれてやるからよ」


あの子はあんな子だったんだ。

クラスの隅でアニメとかの話をしてる目立たない子だったのに。

正直そこまで悪い感情はなかった。

勿論好意を抱く理由はないけど。正直どうでも良い存在だった今までは。


『そら、籤を引くと良い。学友の誰かが望んだ力をな』


私が引いた力は……


女殺しーその声を聞いたおなこは誰もがその声の持ち主に夢中になる。

種別ー催眠系

強度ー甲

(具体的には声を聞くと好感度が1上昇する。

最大は100その好感度はけして下がらない。なお、男性との縁はなくなる。俺ホモじゃねえから。クラスにホモの能力を取るやついても困るしな)


あ、これ私死んだわ。


『能力を引いたようじゃな。最初の三人の能力は全て強度は甲になるようになっておる。順番に甲乙丙丁の順で弱くなっていくからの。それ以外で甲の能力を引いたものは……ほう、2名も居るのか。余程その能力と相性が良かったのじゃな。出ても乙が1~2人じゃと思うとったぞ。なんせ恣意的に渡さぬ限り甲など一厘(0.1%)もでないのじゃからな。恐らく日の本の歴史上でも100人とおらんのではないか。良かったのう教科書にのるかもしれんぞ。乙とて1分(1%)程度。これで10年に一人位の力じゃ』


一厘って何? 確か野球用語よね?

野球用語なんてわかるわけ無いじゃない。

どんだけ野球好きなのよ。

ともかく、私は女殺しの才能に溢れていると言うわけですか?


それも教科書にのるレベルで……


『きましたわー』


来てないわよっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る