別冊・・・少女は幼馴染の男の子に恋をする。それでも素直になれなくて・・・
あらすじ
本編、売れっ子官能小説家は超絶美少女JK(Job Known)だった?で主人公:香波 愛華が初めて小説を書いて投稿した短編作品を今回は番外編としてお届け致します。
愛華が本編でどの様に政樹と繋がり、離れそうになったり、再び心が通じ合ったのか、愛華がこのストーリーを書いた時に政樹と本当は、どうなりたかったのかを記した物語。
本編の途中迄はシビアな内容で進んでいた内容も政樹との再開を果たし愛華にとってはこの小説の結末である理想を手に入れました。
ひょっとするとこの小説を書いたから2人は生きて再開を果たす事が出来たのかもしれません・・・
各話をご覧頂いている読者様は、再度シリアスな展開が間に出て来るかもしれませんが、今回は愛華の身に起きた一連の状況に基づいた内容となっています。後半の展開は愛華が当時理想としていた状況であり、現在の状況にも繋がるシーンがあります。
愛瀬 瑠奈として初めて投稿した作品、お楽しみ下さい。
「少女は幼馴染の男の子に恋をする。それでも素直になれなくて」
作:愛瀬(あいせ) 瑠奈(るな)
私は、中学2年生。
真名瀬(まなせ) 愛衣(あい)
どこにでもいる普通の中学生。
私には幼馴染の男の子がいる。
彼の名前は刈谷(かりや) 政(まさし)、誰に対しても優しく明るくユーモアがある彼は皆の人気者だった・・・
彼と出会ったのは幼稚園の時。
カバンを無くして幼稚園内を探している時に彼が来てこの様に言った。
「愛衣ちゃん、どうしたの?何か探し物?」
「うん!カバンが無くなっちゃったの。ママに怒られちゃう・・・」
今思えば幼稚園の皆のカバンは部屋の後ろのロッカーにそれぞれ入れられているはずなのに、その時はカバンが無い事に必死になって探し回っていた。
そう、いじめの始まりだとも知らずに・・・
幼稚園に入って数か月程が経った頃からこの様ないじめが時々起きていた。
最初はもうして来ないだろうなと思っていたら日に日にエスカレートして行き、階段を降りようとしていた私を後ろから突き落とす様な行動もされる様になり、政君はある日、いじめて来た子を突き留めてくれて、先生とママたち親に話をしてくれた・・・
私は政君をいつの間にか好きになっていた。
小学校へ通い出した頃、お互いの両親も仲良くなっていたので、ある日デパートへ一緒にお出掛けする事になった。
デパートの屋上ではヒーローショーや子供向けのお花の催し等がやっていた。
お互いの両親が休日もあってかデパート内でショッピング等を楽しんでいる間、私と政君は屋上でそれぞれの催し物に参加し、楽しんでいた。
休日もあってか人が多くて、お昼ご飯を食べようと皆で集まって近くにある食事街へ行こうとしていた時だった。
私は皆とはぐれてしまい、デパートを出た直後に1人ぼっちになってしまった。
私は泣きながら周りに政君やお互いの両親たちがいないか探し回っていた。
見付からない。
探しながら何処なのか分からない所迄歩いて来てしまった。
お腹も空いて、誰も見つからない寂しさから私は見付けた公園のベンチで座ってぐったりとしていた。
「もう・・・会えないのかな?・・・私、どうなっちゃうのかな?」
時間にして夕日が差していたので5時前後だったと思う。
夕方に流れる曲が街中に流れ、もう帰る時間だと私は更に心細くなり、公園のブランコに移りぼーっとしながらブランコをこいでいた。すると・・・
「愛衣ちゃ~ん!!愛衣ちゃ~ん!!」
政君の声だ!?探しに来てくれたのかな?直ぐに私は大きな声で
「政く~ん!・・・政く~ん!!!」
ようやく会えた!!良かった・・・もう二度と会えないかと思った。本当に良かった。
彼は私を見付ける迄ずっとひたすら外を探してくれていたと知る。
政君の両親や私の両親も勿論必死に見付け出そうと探してくれていた。
私は政君と一緒に親たちがいる所へ連れて行ってくれた。
皆と再会出来た時、私は思いきり泣いた。両親に抱きついて、思いきり・・・
そんな感じで政君とはずっと一緒にいた。
ずっと・・・
私はこれからもずっと一緒にいたい、いられるとそう思い込んでいた。
でも、中学校へ入り、相変わらず政君は私に対して態度も変えず、優しく接してくれていた。
私は・・・・・どうしてだろう?ある日突然政君と今迄の様に接する事が出来なくなってしまっていた。
一般的に言う「思春期」だからだろうか?
好きな子に対して反対である態度を取ってしまったり、私もその類になるのだろうか?
痛感したのは、私の家へ政君が遊びに来てくれた日の事・・・
「愛衣ちゃん?今日、俺面白いゲーム持って来たんだけどさ?一緒にやろうよ?」
「悪いけど、私忙しいから!男子っていつ迄経っても子供だよね?私もうゲームなんて興味無いの!」
「えっ!?・・・ついこの間迄一緒にやってたじゃん?何かあったの?」
「何も無いわよ!・・・それより帰ってくれない?」
「そうか・・・悪かったよ・・・じゃぁ、又・・・」
政君はそう言って少し残念そうに帰って行った・・・
どうしてあんな冷たく当たる様な事をしたのだろう?自分自身に強い苛立ちを覚えながらももどかしさと複雑な気持ちが絡み合ってどうしても政君に対して今迄みたいな態度を取る事が出来ずにいた。
中学に入り2年になった頃には、ほとんど遊んだりする事が無くなってしまっていた。
私は、本当は政君と一緒にいたいのに、どうしても素直になれなくて、彼に対していつも冷たく当たっていた。
「あっ!?・・・愛衣ちゃん?今日、久しぶりに一緒に帰らない?」
「ごめん、学校で私に話掛けないでくれない?」
「どうして?・・・俺の事嫌いなのか?・・・昔はあんなに仲良く遊んでたじゃないか!?」
「昔の話と今の話を一緒にされたくないんだけど?」
「分かったよ・・・じゃぁ・・・又な?・・・」
ごめんなさい・・・政君、本当にごめんなさい・・・どうして?・・・私は最低だ!!
あれだけ冷たく当たっても政君は翌日にはいつもの様な笑顔で私に声を掛けてくれた。
そう、毎日、雨の日も風の日も、私に1日1度は必ず声を掛けてくれていた。
そんな日が続いたある雨の日の事、私はまたしても彼に辛く当たってしまった・・・
「愛衣ちゃん?今日、傘持って来てないんじゃないの?良かったらこれ使ってよ?」
「別にいいわよ!あなたが濡れるでしょ?」
「俺はもう1本予備で持ってるから大丈夫!」
「いらないって言ってるでしょ!?大体どうして毎日毎日私に話掛けて来るのよ!?私はあなたと話したくないって言ってるでしょ!?雨なんだからさっさと帰ったら!?」
「そう・・・・・か・・・ごめん!迷惑掛けてしまったみたいだな・・・俺、帰るよ・・・」
「愛衣!!ちょっと来なさい!!」
「えっ!?何?」
私はクラスメイトの女の子に呼び出されて屋上の雨が当たらない場所へ連れて行かれた。
「あなた、どうしてあんなに政君に冷たく当たるの?いい加減皆もあなたの事最低だって目で見ているわよ?」
「それは・・・話掛けないでって言ってるのに毎日話掛けて来るから・・・」
パァァァァァン!!!!!
「いった・・・何するの!?」
「本当最低だね?・・・愛衣って・・・彼がどんな気持ちで、どんな理由で毎日あんたに声を掛けているのか分かっていないでしょ?」
「えぇ!分からないわ!人の気持ちなんて他の人間が分かる訳ないでしょ!?」
「それがバカだって言ってんのよ!彼ね?転校するんだよ!?」
「えっ!?・・・それは・・・本当なの!?・・・」
政君は私に転校する事を告げられなかった。今の私にならどうして彼は私に転校する事を告げずに・・・いいえ、告げられずにいたのか手に取る様に分かる。でもその時は私の大好きな政君がどうして私にちゃんと転校の事を言ってくれなかったのか・・・私があんな態度を取っていたからきっと嫌われちゃったんだと思い込んでいた。
「一応転校自体は来月だからまだ時間はあるわ!愛衣?本当に彼の事を大事に想っているんだったら、きちんと自分の気持ち、想いを告げるのよ!?そうしないと絶対に後悔する事になるわよ!・・・後は2人の問題だから私は口出ししないけど、1つだけ・・・あんた勘違いしている様だから言っておくわ!・・・政君はあんたの事を大切に想っているからこそ転校の事を告げられずにいた・・・彼はその事でここ数週間悩んでいた・・・私はその話を聞いただけ!」
「そん・・・な・・・私・・・私!?・・・」
急がなきゃ!!政君に謝らないと・・・そして、私の本当の気持ちを告げなきゃ!!
私は気持ちが焦ってしまっていた。
次の日、政君はいつも通り学校へ来て、私に声を掛けてくれた・・・
「愛衣ちゃん?・・・昨日はごめん・・・でも俺、どうしても愛衣ちゃんに毎日声を掛けないと気が済まないんだ・・・これも日課なのかな?」
彼は本当に申し訳無さそうな面持ちで私にこの様に言った。私も少しだけ優しくなれたかな?
「私の方こそ・・・その・・・昨日は、ごめん・・・」
政君は少し嬉しそうにはにかんだ笑顔を見せた。でも私はそれ以上は何も言えず、又時間が経ってしまっていた。
あの日屋上で教えてくれた日から丁度1月程が経ってしまった。
もう時間が無い・・・私は謝るのと同時に私の想いも告げる決心をした。
これを・・・このチャンスを逃したらもう・・・二度と・・・
私は今迄抱えていた無駄なプライドを全て捨て去り、政君に誠心誠意お詫びをして、そして告白しようと思い、政君を放課後屋上へ来て欲しいと伝えた。
「愛衣ちゃん?どうしたの?・・・何かあったの!?」
「ねぇ、政?あなた、私に隠している事無い?」
ダメ!こんな喧嘩腰で言っちゃ・・・言い直そうとした時政君がこの様に言って来た。
「ごめん・・・俺、ずっと愛衣ちゃんに伝えないといけない事があったんだ・・・でもどうしても言えなくて・・・それに、もう、俺は愛衣ちゃんに嫌われちゃっているから・・・」
そうじゃないの!?・・・嫌いなんて・・・むしろ真逆だよ!!私は・・・私は・・・
「それで・・・何を隠してたの?」
「俺・・・来週、転校する事になったんだ!」
「そっ!?・・・そうなの!?・・・それで、そんな大切な事を幼馴染の私には隠していたんだ?・・・」
胸が張り裂けそうな気持ちだった・・・痛いよ・・・辛いよ・・・
「あぁ・・・今迄色々とごめん・・・毎日日課の様になっていた君に声を掛ける事も来週で終わるから・・・だから、安心・・・」
「ダメよ!!」
「えっ!?・・・ダメってどう言う?・・・」
「ごめんなさい・・・全部・・・全部私が悪いの・・・いつも私に声を掛けてくれていた政君・・・いつも辛く当たっていたのにも関わらずそれでも諦めずに毎日優しく私をねぎらってくれていた政君・・・本当に・・・本当にごめんなさい!!!」
私は泣きながら彼にお詫びした。すると彼は・・・
「愛衣ちゃんは悪くないよ・・・愛衣ちゃんにだって嫌な事ややって欲しく無い事がある・・・でも俺は、愛衣ちゃんと話をしたかったんだ・・・だから・・・」
「政君?・・・今日は私、政君に謝りたかったのともう一つ大切なお話があるの・・・」
「えっ!?・・・愛衣ちゃんが?・・・もう、謝ってくれたからそれはお互い様と言う事で良いかな?」
「えぇ!・・・それで・・・その・・・」
「どうかしたの?・・・何かあったら今でも・・・何でも言ってくれれば良いよ!俺に出来る事なら何でもする!だって君は家族みたいなものだから!!」
「えっ!?・・・」
「家族みたいなもの」・・・一大決心をした私が耳にしたのはその想いすら狂わせてしまう様な彼のこの一言だった・・・
「どうかしたの?愛衣ちゃん?遠慮無く言って!?協力するからさ?」
「うっ!?・・・ううん!何でも無いよ・・・あなたの気持ち、凄く伝わったから・・・うん!転校の日迄後1週間だね?・・・私、あなたに謝れて本当に良かったよ♪」
私は涙を浮かべながら無理矢理笑顔を作り彼に見せた。
そして、私は帰宅した・・・
勿論ベッドに横になり何もする気力すら沸かず私はただひたすら泣き続けていた。
これは罰だろうと自分にさえ言い聞かせた。
彼があんなにも優しくて私の理想なのに私は素直にそれを受け入れる事が出来ず、ずっと彼に冷たく当たってしまった。それを自分でも分かっていたのに・・・分かっていたはずなのに・・・
最低だ・・・もう、彼の様な男性に出逢える事なんて無いだろう・・・彼はもう・・・きっと私の手の届かない所へ旅立とうとしているんだ!
私みたいな女の子よりもっと優しくて素直で明るい魅力溢れる女の子と一緒になるべきだと言い聞かせた。
翌日、私は学校を休んでしまった。
もう、生きる気力すら無くなってしまっていた。
自分勝手だよね?自分が悪いのに・・・
夕方、政君がお見舞いに来てくれた。
「こんばんは!愛衣ちゃん?大丈夫?今日休んだし・・・心配で・・・あっ!?迷惑なら直ぐ帰るよ・・・」
「待って?・・・政君は私の事どう思ってるのかな?やっぱりツンケンしていて、折角人が話掛けているのに偉そうにしやがって・・・最低だ・・・とか思ってた?」
「無いよ・・・」
「えっ!?・・・」
「そんな事万が一だってある訳ない!・・・昨日も言ったけど、俺、愛衣ちゃんの事は家族の様に大切な人だと思っている。だからあれだけ愛衣ちゃんに言われてもめげる事が無かった!大切な家族に嫌われてしまったら俺もいたたまれなくなるから・・・愛衣ちゃんには絶対に嫌われたく無かった・・・」
「そう・・・か・・・・・ごめんね?・・・私があんな態度取っちゃったのは、自分でもよく分からなくて・・・でもこれだけははっきり言えるよ?・・・政君を嫌いなんかじゃないって!!」
「愛衣ちゃん!?・・・」
「多分・・・思春期で私は特に情緒不安定なんだろうなって今回の一件で感じたの・・・だから言うね?・・・政君?私は・・・あなたの事が・・・好き!・・・家族としてじゃなくて、1人の女の子として、政君の事が大好きです・・・私と付き合ってくれませんか?・・・転校しちゃっても、将来一緒になりたいです・・・」
「・・・・・・・・ごめん・・・・」
「・・・・・そう・・・だよね?・・・だって家族みたいだって言っていたのに私・・・私・・・本当にごめんなさい・・・」
バッ!!!
「愛衣ちゃん!?・・・何処へ行くんだ!?・・・愛衣ちゃん!?・・・」
ごめんなさい・・・いつも私は自分勝手で、相手が言っている事をちゃんと聞かずに・・・私はそのままいたたまれなくなり家を飛び出してしまっていた・・・
秋の空で清々しい空気・・・でも夜になるに連れてひんやりと冷たい空気に変わりを遂げて、夕日が沈もうとしていた頃、私は無我夢中で走り抜け、気が付いたらとあるビルの屋上に立っていた・・・
「ここ?・・・あぁ・・・ここは、昔、政君と親たちで時々来ていたデパートか・・・私、無意識にここへ?・・・やっぱり彼への想いが強かったんだね・・・あの日、私は迷子になって丁度秋のこんな夕焼けが沈みかけた頃だったかな?・・・公園のブランコで泣きながら1人でぼーっとしていたよね・・・あの時政君が見付けてくれたから今日迄ずっと生きて来られたのかもしれない・・・私の生活は彼が常に存在していた・・・いつも声を必ず掛けてくれて、それが最初は嬉しくて、いじめを受けていた私を助けてくれたり、迷子の私を見つけ出してくれたり、それなのに、そんな王子様みたいな彼に対して私の彼に対してして来た行動は・・・嫌われて当然だよね・・・でも彼は嫌いとは言ってくれなかった・・・嫌いだって言ってくれていたら私もスッキリしていたのかな?・・・違う!!そうじゃない・・・やっぱり私、彼にだけは嫌われたくない・・・だから・・・だからこそ私は彼に嫌われる様なそぶりをして確かめてしまっていた・・・いつになったら嫌いになるのだろう?どれ程自分の事を嫌わずにいてくれるのだろう?と・・・やっと分かった!私がどうして彼に対してあの様な行動を取ってしまっていたのかを!?・・・ごめんね・・・私は、やっぱり弱い女の子だよ・・・大好きな人に嫌われたく無いからと言ってこちらからそれを確かめる行為をするなんて・・・でも、今のではっきりと分かった!私、やっぱり政君の事を愛しているんだ!?・・・でも・・・彼は私を家族の様にしか思えないのだろうな?・・・だってそうだよね?ずっと一緒にいて、毎日の様に顔を見せ合って・・・当たり前だと・・・その様な生活が当たり前の様だと思い込んでしまっている・・・彼を・・・いいえ、私が!?・・・私はずっと政君が毎日この先もずっと話掛けてくれる・・・だから安心していたんだ・・・でも・・・彼は、もう、転校してしまう・・・さっき告白したけれど、家族みたいだって言う理由だった・・・もう、私はいらないよね?・・・政君もきっとあんなに優しくて素敵な男の子だもん!きっと素敵な女の子が見付かると思う!・・・うん・・・私、ここに来たのは、きっと想い出を感じながら死ぬ事を告げられたのだろうな・・・うん、神様、待っててね?これから私あなたの所へ行って・・・ううん!そんなおこがましい事なんてある訳無いよ!私は地獄へ落ちるんだ・・・あんなに素敵で優しい人を苦しめたのだから・・・はい・・・私は閻魔大王様の所でお仕置きを受けます。政君に対してこれ迄して来た酷い仕打ち、私は死んでも忘れません。ずっと、永遠に反省致します。だからもう、良いよね?・・・最後に、今迄私に関わって来た全ての人にお詫びします。真名瀬 愛衣は、今から地獄へ落ちます。どうか皆、私の事を忘れないで下さい。色々と迷惑を掛けたり、喧嘩もしたり、酷い事もしました。本当に・・・本当に・・・ごめんなさい。どうか、こんな悪い子の私だけど・・・忘れないで下さい・・・うっ・・・ぐっ・・・そして・・・私と関わった全ての人たちがこれから先・・・幸せで・・・楽しい暮らしが出来ます様に・・・さようなら・・・」
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「えっ!?・・・誰っ!?・・・その格好は、ヒーロー?・・・」
「紅い体は正義の証!誰かの苦しみ救い出す!今日はRED1人だが想いは5人全員だ!!正義のヒーローファイアーレッド!真名瀬 愛衣の心の叫びを受け只今ここに見参!!!」
「その声は・・・政・・・君?・・」
「あぁ!俺だ!・・・オレオレ!!」
「ぷっ・・・何!?・・・詐欺?」
「いやいや、愛衣ちゃんならきっとここだろうと俺の勘が悟ったんだ!俺の勘正しかっただろ?」
「うん・・・そうだね・・・それに、その格好って・・・」
「あぁ!初めて愛華ちゃんや俺の家族皆でここへ来た時にやっていたヒーローショーのコスチュームだ!あの日も何故かヒーローはレッドだけだったんだよな?丁度こんな秋空で涼しくて風邪が流行ってた気がしたから、きっとヒーローほとんど風邪にやられたんだろうな?って・・・」
「ぷっ・・・ぷぷぷ・・・そうかもしれないね?・・・ヒーローも風邪を引いちゃうもんね!」
「あぁ・・・愛衣ちゃん?・・・いや、愛衣?・・・俺、君に謝らないといけない事があるんだ!」
「えっ!?・・・どうして?・・・」
「ずっと幼稚園の頃から一緒だったよな?・・・俺も愛衣の事、家族同然の様に思っていた。でも・・・さっき家を飛び出していなくなってから俺、ずっと違和感を感じていたんだ・・・以前、同じ様に、家族が突然家を飛び出して行った時、俺は、凄くショックで直ぐに追いつこうとした・・・そして見付けて謝ったんだ。でも、今日は違った・・・何て言えば良いのかよく分かっていないんだけど・・・息が出来ない程苦しくなって、あの日と全く違う気持ちになった・・・これはきっと家族だからじゃない・・・別の何かだろうと・・・直ぐに探しに行くつもりで偶然押入れにあったこのコスプレに目が止まり、きっとここへ来ているはずだと思った・・・」
「政・・・君・・・」
「愛衣・・・俺が振っておいて悪いけど、俺、君がいないと生きて行けない気がする。」
「・・・・・・・・!?」
「だから、さっき自分から振っておいてこんな身勝手なお願いを言うのは甚だしいけど、どうか聞いて欲しい・・・真名瀬 愛衣さん、どうか・・・俺と付き合って下さい。」
「政君・・・・・・・はい!喜んでお付き合いさせてもらいます。私の方こそ、宜しくお願い致します。」
こうして、この日彼と私は結ばれた・・・
そして残りの6日を素直に、楽しく過ごそうと心に誓い、翌日学校にて・・・
「あの・・・政君・・・今日、帰り一緒に帰ろうか?・・・」
「あぁ!・・・良いよ!」
お互いに少し照れながら今迄離れていた距離を一気に縮ませるかの様に私たちは歩み寄った。そして・・・政君が転校する日・・・
「皆さん、今日で刈谷君が転校してしまう事となりました。最後の授業となるこの時間はレクレーションをしたいと思います。皆、刈谷君に対しての応援のメッセージを先ずは伝えて行きましょう。その前に本人から少し挨拶を!・・・刈谷君?大丈夫?」
「はい、ありがとう御座います。先生!・・・えっと、一部の人たちには先に伝えていたのですが、出来る限りギリギリ迄伝えたくありませんでした・・・それは、ギクシャクするのがあまり好きでは無いので・・・ごめんなさい。でも今日迄こうして元気で楽しくやって来られたのは皆と同じクラスになれたおかげだと思っています。なので俺がいなくなっても今迄通り皆で仲の良いクラスであって欲しいと思います。」
「出発は直ぐに?」
「はい・・・明日の飛行機で出ます。恐らくもうここへは戻って来ないだろうと・・・」
「嘘っ!!!!!?」
「愛衣・・・・・ごめん・・・両親共にもう、戻る予定が無いらしいんだ・・・だから、もし俺が独り立ちした時はこっちへ戻って来ようと思う!!」
「待ってる・・・私・・・いつまでも待ってるから!!」
♪パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
「えっ!?・・・皆!?・・・」
「応援してるぞ!?2人共本当は仲が良かったんだよな?何となく気付いていたけどさ・・・」
「佐山・・・おう!愛衣は幼馴染だからな!当然だよ!」
「私も応援してるよ?愛衣ちゃん?辛いかもしれないけれど、こうして戻って来てくれるって男気を見せてくれているんだし頑張って待っていようよ!」
「美菜ちゃん・・・うん♪私、待ってる・・・ずっと・・・ずっと!!」
こうして、クラスの皆からも応援してくれた・・・
政君が旅立つ直前、私も彼と一時的にお別れする為に空港へ足を運んだ!
「愛衣ちゃん?本当にごめんなさいね・・・親の都合でこの子も一緒に旅立たせる事になっちゃって・・・」
「いいえ・・・政君が大人になって戻って来てくれるからって言ってくれたのでその日を待っています・・・」
「愛衣ちゃん・・・僕たちも本当は戻る予定が見出せなかったんだけど、何とかなるかもしれない・・・出来る限り戻れる際には早く戻る様に努めるよ!だから、しばらくの間は不憫を掛けてしまうけど、息子の事、これからも宜しくお願いするよ!」
「はい・・・おじさんもおばさんもお元気で・・・それから、政君も・・・メールとか電話もするから離れ離れと言う感じはしないと思うな・・・ははは・・・・・」
「愛衣・・・あぁ!俺も毎日電話掛けるよ!」
「そろそろ時間だな!・・・皆、気を付けて・・・こっちは大丈夫だから又遊びに来てくれ!」
「あぁ!ありがとう、息子には勿体無い子だけどこれからも宜しく頼むよ!」
こうして政君の家族は旅立ったのだった・・・
その日、帰宅した私たち家族は、ふとテレビを点けた時にやっていたニュースを観て一気に絶望のどん底へ落されたのであった・・・
「今日、16時過ぎ、北海道へ向かったCL606便の旅客機が山の中へ墜落し炎上した模様・・・」
「あなた!!・・・この飛行機って・・・」
「あぁ・・・間違い無い・・・彼たちの乗った飛行機だ!!!」
「嘘・・・政君たちの?・・・」
ふらっ・・・バタンッ!!!
「愛衣?・・・しっかりするんだ!愛衣!?・・・愛衣!!!!!」
私はショックのあまり気を失ってしまった・・・
気が付くと、部屋のベッドに寝ていた・・・そこにはお姉ちゃんが寄り添ってくれていた・・・
お姉ちゃん・・・凄く優しくて昔から大好きだった。政君の優しさもいつも嬉しくて、温かくて・・・お姉ちゃんの優しさ、温かさも嬉しくて・・・
お姉ちゃんはきっと私が何かアクションを起こしてしまうのでは無いかと思ってずっと側にいてくれていた・・・
でも私・・・もう・・・
「愛衣?お姉ちゃんね、まだ愛衣がよちよち歩きをしていた頃、男の人に振られて、自殺しようと思った事があるんだ・・・」
「えっ!?・・・お姉ちゃんが?・・・あんなにモテるし優しいのに?・・・」
「私はそれ程モテる訳では無いの・・・いつも私は諦めずに告白し続けていた。そうして実ってお付き合いしてくれる男の人が出来たり、向こうから告白された事ってほとんど無いんだよ?」
「そう・・・なんだ・・・意外だね?・・・」
「でも・・・ね・・・好きな人とようやく結ばれたのにその大切な相手が死んだとなれば、私は・・・私は・・・」
お姉ちゃんは自分の事の様に泣きじゃくりながら私に抱きついて来た・・・きっとお姉ちゃんも私の事を想ってくれていたんだ・・・それが嬉しかった・・・
「お姉ちゃん?私、大丈夫だから・・・ありがとう♪」
「愛衣?・・・」
「私はお姉ちゃんみたいに強くなれない・・・でも、お姉ちゃんの優しさや想いは凄く伝わって来たよ?・・・本当にありがとう♪」
私は何故か泣いていなかった・・・先にお姉ちゃんが私の分迄泣いてくれていたからかもしれない・・・私は疲れたであろうお姉ちゃんに休む様にお願いした。そうしてお姉ちゃんは私のベッドに入れ替わって眠りに就いた・・・そして・・・
「お姉ちゃん・・・今迄ありがとう。私、この家の子に生まれて来て本当に幸せだったよ?・・・どうか、これからも家族仲良く明るく、楽しくやって行ってね?・・・さようなら・・・」
私は眠っていたお姉ちゃんに囁く様にしてお別れの言葉を告げた。
パパとママも私が落ち着いたのを知ると夜だったので眠りに就いた・・・
私は足音を立てずにこの間自殺しようと向かったビルへと歩いて行った。
家から徒歩だと1時間程だけど、もう何も目的が無いので私はただひたすら目的地迄歩いて行った。夜で誰もいない暗い道をただひたすら・・・
1時間くらい経っただろうか?・・・あのビルへ辿り着いた・・・
実は昔来たこのデパートは数年程前に経営を終えて廃墟ビルとなっていた。
私は又屋上へ階段で昇った・・・
こんな夜遅くにこんな誰もいない廃墟のビルなんて死ぬつもりで無ければ女の子だったら怖くて足も動かなくなっているだろうな・・・
でも今日の私は怖く無かった・・・うん、死ぬつもりでここへやって来たのだから!
「この間は、政君が止めてくれたから私は今日迄生きて来られたけど、もう・・・政君は・・・この世にいないんだよね?でも、この間と全く違う点と言えば・・・この間は私一人で地獄へ落ちるつもりでいたけど、今日は政君の後を追い掛ける為だから大分勇気が沸いて来たよ!待っててね?今から政君の所へ向かうからね?・・・あぁ・・・政君は止めちゃうんだろうな?・・・でもね?私は政君がいなくちゃ何も意味が無いの・・・それだけ政君に依存していたんだよ?・・・だから私、政君がいる所へ行く為ならどんな手段を使っても怖くもないし、痛くもないよ!?あの世はどんな感じなのかな?政君と結婚出来るかな?年齢とかあの世なら関係無いだろうし、私が着いたら直ぐにでも結婚しようね?・・・そして、おじさんとおばさんに祝ってもらって・・・神様にも祝福してもらうの!!ねぇ、政君覚えてる?初めて政君に助けてもらった日の事・・・幼稚園で私のカバンが盗まれちゃって、あれがいじめだとは思わなくて、ずっと探していた時に声を掛けてくれて一緒に探してくれて・・・しばらくしていじめがエスカレートしてから政君はいじめだって思って犯人を突き止めてくれて先生や両親に教えて助けてくれた・・・あの日から私、ずっと政君の事を好きだったんだよ?・・・格好良い私の白馬の王子様・・・ううん!政君ならきっとここでやっていたヒーローショーの様なヒーローが似合ってるかもしれないね・・・私にとってのヒーローは、もうこの世にはいない・・・うぅっ・・・えぐっ・・・んぐっ・・・でもね・・・私はあなたが側にいてくれたから生きて来られたの・・・あなたがいなければこの世にいる意味すら無いの・・・だから、もう、覚悟を決めました!私はこれからあなたの元へ参ります・・・どうか、こんな身勝手な娘を、妹を許して?・・・パパ・・・ママ・・・お姉ちゃん・・・」
「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
「えっ!!!!!!!!!!!!!」
「蒼い体は冷静沈着!誰かが放っている熱さを冷ます!本日俺以外全員風邪の為お休みだ!!だから俺が全員分の力を振り絞ってヒロインを助けて見せる!!正義のヒーローブルーボンバー!真名瀬 愛衣の熱い執念見事に冷まして見せる!!」
「そん・・・・・な・・・・・嘘でしょ?・・・夢・・・なの?・・・」
「いや、紛れも無く現実世界だ!!だから死ぬのはまだ早い!!」
「政・・・・・くん?・・・」
「今度ばかりは間に合わないかと思ったぞ!?・・・愛衣?・・・只今!」
「政君!?・・・・・政君!!政君!!!!!」
私の白馬の王子様はこの日もやはり私を助けに来てくれた・・・
やはりじゃない・・・今度ばかりは奇跡だとさえ思った・・・何故なら、彼は飛行機事故で死んでしまったはずだからだ・・・
「説明は帰ってからゆっくりするから、ここは寒いし、帰ろうか、愛衣?」
「うん!!」
政君は私にとやかく言わずただ一緒に歩いて1時間程掛けて自宅へ送り届けてくれた・・・
そして、自宅に到着して・・・
「愛衣!!!!!・・・良かった・・・・無事だったんだな!?・・・政君、本当に・・・本当にありがとう・・・とりあえず連絡が着いて良かった・・・ダメ元で奇跡が起きないかと連絡を入れておいて正解だったよ!」
「いえ、俺も連絡くれたのが早くて助かりました。今度もきっとあそこにいるだろうと踏んでいたので!」
「色々とお話を聴かせてもらっても良いかしら?・・・疲れたでしょうし、とりあえず今日は家に泊まって行って?」
「えっ!?・・・あっ!?・・・でも両親が・・・」
「大丈夫!さっき連絡しておいて許可は取ってあるから!今夜は愛衣の側にいてやって欲しいんだ・・・勝ってばかり言って悪いのだが・・・」
「いいえ!それなら遠慮無く!」
政君はその後私の家で事情を説明した。
どうやら、私たちは政君が飛行機に本来搭乗する直前に帰ってしまい、その丁度乗り込む直前にご両親の転勤が中止されたとの連絡が入ったそうで、急遽自宅へ戻って行ったそうだ・・・
良かった・・・本当に良かった・・・これで政君とこれからもずっと一緒にいられる・・・
「と言う訳で、本来転校するはずだった刈谷君だったんだけれど、ご両親のお仕事の転勤が急遽中止になり、戻って来たの!・・・でも、本当に良かった・・・実は刈谷君たちご家族が乗り込む予定だった飛行機が出発してしばらく経った時に墜落してしまったの。本当に危機一髪と言った状況だった様です。とにかく、こうして又刈谷君とも一緒に勉強して行ける事に皆も喜びましょう!!」
「凄いよな!一歩間違えていたら死んでしまっていたかもしれないもんな!!」
「まぁ・・・そう言う事になるな・・・でもこうして又皆と一緒にいられるから俺は良かったと思う・・・」
「政君・・・ううん!政?・・・本当に良かった・・・私・・・もう・・・」
「泣くなよ・・・こうして又一緒にいられるんだからさ?・・・今度はもう君を悲しませる様な事はしない!だから安心してくれて良いよ!」
「うん♪・・・ありがとう・・・これからもずっと一緒だよ?・・・」
こうして、波乱万丈が過ぎ去り、私も政君も高校を出て、大学を出た・・・
「愛衣?そろそろ式が始まるぞ?準備は・・・って愛衣・・・お前・・・」
「ん?・・・どうしたの?政?何か変かな?」
「いや・・・あまりにも美し過ぎてその・・・例えようが無いが、とにかく・・・俺のフィアンセだと言う事に夢でも見ているのかと思う様な・・・何と言うか、上手く例えられないけど、綺麗過ぎて可愛過ぎて・・・」
「あの・・・他の人もいるんだし、あまり恥ずかしい事言わないで欲しいな?・・・後で2人切りになれる時間はた~っぷりあるんだから!その時に思いきり可愛がってね?」
「おまっ!?・・・そのセリフの方が断然恥ずいだろ!?・・・」
♪ははははははははは
そう、私たちは大学を卒業してからしばらくして結婚する事になった・・・
私が求めていた理想の将来・・・少し間で色々と辛い事があったけど、こうして今日迄何とか生きて来て、強く思った事がある・・・
諦めずに生きて行く事で得る幸せの方が諦めた時に失ってしまう想いよりもはるかに強い事、幸せな事を・・・
別冊・・・少女は幼馴染の男の子に恋をする。それでも素直になれなくて・・・ END
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